共同CEO体制へ移行
「私はもう67歳。目標の東証一部復帰という目標を達成したので辞めたいという気持ちがあった。それはいまも変わっていない」とする。
実際、退任に向けた動きもみせている。
「取締役会に社長交代を諮ったが、取締役会からは業績が成長していることや、年度途中で社長交代をすることは異例であると言われた。また、社長は株主総会で選出された取締役のなかから選ぶことが通例であると言われ、社長交代の話は保留になった」という事実を明かす。
戴社長は「個人のわがままでは決められない」としたものの、「本当は辞めたい」と笑いながら語ってみせた。
そのなかで戴社長は、バトンタッチに向けての体制づくりを開始することも示した。
同社では2018年1月以降、次期社長育成のため今後、共同CEO体制へと移行し、決裁権限の委譲を検討することを新たに発表した。これまでは取締役会の議長、経営戦略会議の議長、そしてオペレーション決裁は、戴社長に集中していたが、新体制ではオペレーション決裁を、共同でCEOを務める新たな社長に委譲する。
「共同CEOは社内社外を問わず、いい人材であることが条件である。早急に検討したい」と戴社長は語る。
戴社長が持つ経営ノウハウを、共同CEO体制によって伝承することになるというわけだ。
次は経営理念を実現する飛躍の1年に
「次の私の使命は中期経営計画の達成。この責任を背負い、中期経営計画の最終年度となる2019年度まで全力をあげて取り組む覚悟である」と戴社長は語り、シャープは共同CEO体制によって、中期経営計画の達成に挑むことになる。
戴社長は2017年は「シャープ復活の年」になったとする一方、2018年を「シャープ飛躍の年」にしたいと語る。
「飛躍と言っても、単に売上げや収益を拡大するということではなく、経営理念に示された『広く世界の文化と福祉の向上に貢献する』、『会社の発展と一人一人の幸せとの一致をはかる』、『全ての協力者との相互繁栄を期す』ことができてこそ、本当の飛躍だと考えている。全社一丸となってシャープを日本を代表する企業へと成長させていきたい」とする。
これまでにも、創業者である早川徳次氏の言葉を引用したり、シャープの経営理念に則る経営を重視してきた戴社長は、今後もその姿勢を崩すことがなさそうだ。
業績を回復に転じさせ、東証一部復帰を実現したのは、鴻海流の経営手法によるのは確かだ。だが、鴻海流といわれる郭台銘氏の経営手法に、シャープの創業精神や経営理念を盛り込んだ「戴流」ともいえる経営手法が、シャープの復活につながったともいえるだろう。その手法が、次の経営者に継承されることを期待したい。

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