今回のことば
「日本はサイバー攻撃に対する免疫に欠けている。それが、日本の企業の経営に影響を与えている」(米Palo Alto Networksのニケシュ・アローラ会長兼CEO)
パロアルトネットワークスが都内で開催した年次イベント「Palo Alto Networks Day 2018」の基調講演に、米Palo Alto Networksのニケシュ・アローラ会長兼CEOが登壇した。
4回目を迎える今回のPalo Alto Networks Day 2018は、1500人以上が参加。「アローラ会長兼CEOに、ぜひ日本で開催するPalo Alto Networks Day 2018に参加してほしいとリクエストしたところ、快諾してもらった」と、パロアルトネットワークスのアリイ・ヒロシ代表取締役会長兼社長は語る。
アローラ会長兼CEOは米Googleに在籍し、10年に渡り上級副社長や最高ビジネス責任者などを務めたほか、2014年に代表取締役副社長としてソフトバンク入りし、孫正義社長の片腕として買収戦略などに手腕を発揮した。孫社長はアローラ氏を次期社長候補の筆頭と公言してはばからなかったが、60歳を前にした孫社長が「事業家としての欲が出てきた。ソフトバンク社長として、熱心に経営をしたい」と、引退時期としていた60歳を超えても、経営の陣頭指揮を執ることを表明。これによって、アローラ氏はソフトバンクの役員を退任。その後アローラ氏は2018年6月に、米Palo Alto Networksの会長兼CEOに就任していた。ソフトバンク退社時に68億円の退職金が支払われたことで話題となったのは記憶に新しい。
世界の企業を見て感じた3つの課題
今回のイベントはアローラ氏が米Palo Alto Networks入りしてから、初めての来日となった。
アローラ会長兼CEOは「ソフトバンクに在籍していたときには2年間、日本に住んだことがあった。そうした経験から、次の会社は大好きな日本と関わりが強いところを選ぼうと考えた。そして、しっかりとしたミッションがある企業に入りたいと考えた。Palo Alto Networksはサイバー攻撃者を排除することを目的に、強力なカルチャーを作っている会社であり、強いプロダクトを作ることにフォーカスしている会社である」と、米Palo Alto Networks入りの理由を語った。
多くの外国人VIPが壇上を動き回って講演をすることが多いのに対して、アローラ会長兼CEOは、用意された演台の前に立ったまま、一歩も移動せずに講演するスタイルだったのが逆に印象深かった。
パロアルトネットワークスのアリイ・ヒロシ代表取締役会長兼社長が「フォーチュン100社のうち85社が、パロアルトネットワークスの製品を活用しており、過去5年間にわたる年平均成長率は48%増となっている。現在、全世界150の国と地域で、5万4000社以上の企業が利用しており、世界中のトップ企業のセキュリティーを守っている」と語るように、パロアルトネットワークスの製品は、多くの主要企業に採用されている。
アローラ会長兼CEOは「デジタルトランスフォーメーションの実現には、データセキュリティーが不可欠。それを支援するのがパロアルトネットワークスの役割」と位置づける。
また「会長兼CEOに就任してから最初の100日間で、全世界の企業を訪問した。話をすると、3つの課題があることがわかった」とし、次のように述べた。
「ひとつは、ポイントセキュリティーソリューションが多すぎるという点。小さい部分は解決できるが、トータルセキュリティーの確立ができていない。また、新たなインフラとレガシーインフラが林立するなかで、高いレベルのセキュリティーを継続的に維持できないという課題が生まれている。2つめは、たくさんのベンダーがあり、多くのセキュリティーがあり、アラートがたくさんあがっているが、それが脅威なのか、ボリシーの問題なのかがわからないという点。完全な可視化ができていないということである。そして3つめは、既知の脅威を予防し、未知の脅威も検知して予防するためには、一貫性のあるセキュリティー構築をすることが必要であるが、そこに踏み出せていない点。業界としてさらに統合化し、連携することが必要である」とした。
また「ここには深層学習や機械学習を活用する必要がある攻撃者もAIを活用している。我々もどうやってAIを活用するか考えなくてはならない。そして、攻撃者の環境は自動化が進んでいるのに対して、我々はまだ自動化されていない。エンドポイント、ファイヤーウォール、クラウドセキュリティー、アプリケーションセキュリティーといったところから集まる世界中のデータを一元的に収集し、AIのアルゴリズムを走らせることで、大きな効果を生むことができる」とする。
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