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業界人の《ことば》から 第292回

残業削減だけではない 女性の活躍にはテレワークが必要と野田大臣語る

2018年05月01日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「就業する女性一人ひとりが働きがいを持ち、自信を持って働いていく環境を作るためには、テレワークが必要である。テレワークは働き方改革の切り札であると確信している」(総務大臣、女性活躍担当大臣、内閣府特命担当大臣の野田聖子氏)

 女性の就労支援などをテーマにした「Empowered Woman JAPAN 2018」が、2018年4月17日、東京・霞ヶ関の霞山会館で開催された。

 同イベントは日本マイクロソフトが運営事務局を務め、同社が取り組む「ウーマンテレワーク体験プログラム」についても報告があった。

 ウーマンテレワーク体験プログラムは2018年3月から千葉県流山市などでスタートしているもので、地域の支援団体や自治体と連携して、テレワークスキルを身につけ、就労の選択肢を広げたい女性に対して教育プログラムを提供する。さらに、テレワーカーという新たな雇用形態を検証したい企業を対象に、体験の場を用意。女性の就労における選択肢拡大を支援し、企業の新たな人材獲得の機会創出を支援している。

 このイベントで最後に登壇したのが、総務大臣であり、女性活躍担当大臣、内閣府特命担当大臣を務める野田聖子氏だ。

女性活用に取り組むラストチャンス

 野田大臣は「女性のパワーを最大限に生かすという今回のイベントの目的は、私の政治信条に重なるテーマである」と切り出し、「高齢化や人口減少に直面する日本が、成熟国家として持続的成長を実現し、社会の活力を維持していくためには、女性の活力が不可欠である」と発言。さらに「日本の企業が生き残るには、ダイバーシティによる多様性の確保が必要だと考えている。とりわけ、女性活用の推進こそが、企業の取るべき道であると考えている。現在、検討されているコーポレートガバナンス改革において、取締役会の機能発揮の観点から、ジェンダー(性別)の多様性確保の重要性が指摘されていることもその証左である」と指摘しながら、「いまこそが、女性活用に取り組むラストチャンスである。成長戦略の一丁目一番地は、女性の活躍である。大きな潜在力を持つ私たち女性が、その能力を最大限に発揮して、日本、ひいては世界全体の経済成長、世界の平和においての役割を果たしていこう」と呼びかけた。

 野田大臣によると、安倍内閣の発足後、過去5年間で増加した就業者数250万人のうち、約8割にあたる200万人を女性が占めたという。また、上場企業における女性役員数は2.4倍に、女性管理職の比率は過去最高になっているという。

 「女性活躍は確実に進展している。だが、世の中で女性活躍が叫ばれるようになっても、多くの女性は『一部の特別な女性の話だ』と捉えて、『自分には関係ない』と考えているのでないか。また、第一子出産後の就業継続率は53.1%まで向上してはいるが、言い換えれば、約半数の女性が職を辞めてしまうのが現実であり、男女間における賃金格差など解決すべき課題も多い。女性をエンパワーするのであれば、こうした現状を変え、就業する女性一人ひとりが働きがいを持ち、自信を持って働いていく環境を作ることが必要だ」と訴える。

 それを実現するのが「テレワーク」だと、野田大臣は断言する。

大臣になってからも積極的にモバイルアプリを利用

 「テレワークは、ICTを利用して、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方である。子育て世代やシニア世代、障害のある方も含め、国民一人ひとりのライフステージや生活スタイルにあった働き方を実現するものであり、まさに働き方改革の切り札であると確信している」とする野田大臣は、自らも積極的にテレワークを活用してきたことを示す。

 「2017年8月に総務大臣になる前の一議員の時代から、テレワークを最大限活用して、仕事と子育て、家事を両立してきた。子育てが最も忙しかった時期に、議員立法を何度も手がけることができたが、これはテレワークなしでは実現できなかった。総務大臣になってからも、積極的にモバイルアプリを利用している。大臣決裁や、大臣と副大臣、大臣政務官、総務省幹部との会議も、モバイル端末で行なっている。また私は出産のときに、国会を休まなくてはならなかったが、誰も出産に備えて入院したことを知らなかったし、出産後もほとんどの人に気がつかれずそのまま仕事をしていた。これはモバイルを通じたテレワークのおかげである」とした。

2020年まで毎年実施するテレワーク・デイ

 テレワークの推進において、最も必要なのは「経営者の意識改革」と野田大臣は指摘する。

 「2017年11月から、経団連や商工会議所などの経済界に対して、女性の採用および雇用拡大、配偶者手当の見直しなどとともに、テレワークを活用しながら、目に見える形で働き方改革を推進してもらうように、しつこくしつこくお願いしている」とし、「総務省では意識改革を促す取り組みとして、2017年から2020年までの毎年、東京オリンピックの開会式が行なわれる7月24日を『テレワーク・デイ』として、企業などにおいて、全国一斉にテレワークを行なっている。第1回目となる昨年のテレワーク・デイには、約950団体、6万人以上が参加し、国民運動としての大きな一歩を踏み出したところである」とした。

 そして「テレワークの一斉実施が、交通混雑の緩和などに一定の効果があったことから、今年は日数、規模を拡大して、7月24日に複数日を加えた、『テレワーク・デイズ』として強化する。できれば来年は『テレワーク・マンス』にし、1ヵ月単位で実施したい」と規模の拡大に期待を寄せる。

 2018年7月23日から開始する「テレワーク・デイズ」には、昨年の2倍となる2000団体、10万人の参加を目標としているという。参加企業の登録受付は、4月下旬から開始することになる。

 女性活躍の拡大に向けて、テレワークの広がりは不可避というのが政府の基本姿勢。残業の削減などに注目が集まりがちなテレワークだが、女性の活躍や、日本の社会を活性化するためにテレワークの浸透が重要だという認識がもっと広がっていくべきだろう。

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