
今回のことば
「ぜひ、日本のメーカーとして、富士通コネクテッドテクノロジーズを可愛がってもらいたい。そして、これまでarrowsを使ったことがない人は1度でいいので、arrowsを使ってもらいたい」(富士通コネクテッドテクノロジーズの高田克美社長)
新生・富士通コネクテッドテクノロジーズの事業方針が発表された。
富士通コネクテッドテクノロジーズの高田克美社長は、「新たな体制になっても、経営方針や基本姿勢は変わらない。また、商品ポートフォリオも、ブランドも変わらない。事業の成長に向けて、新たな価値が追加できる」と語る。

富士通コネクテッドテクノロジーズは、2018年4月1日付けで、ファンドのポラリス・キャピタル・グループが70%を出資。富士通が30%を出資する体制となった。
また、富士通の製造子会社である富士通周辺機から、携帯端末を生産している兵庫県加東市の社工場を切り離し、ポラリス・キャピタル・グループが新たに設立するジャパン・イーエム・ソリューションズに譲渡。ジャパン・イーエム・ソリューションズには、ポラリス・キャピタル・グループが81%を出資し、富士通が19%を出資した。
高田社長は「当社がこれまで培ってきた強みを生かすとともに、ポラリスが持つ経験値、実績を生かし、事業基盤を強化し、成長を遂げていきたい」と意気込む。

富士通コネクテッドテクノロジーズの強みは、見やすさ、聞きやすさ、使いやすさによる「ユニバーサルデザイン技術」、生体認証の採用などで、安心、安全と使いやすさを両立した「セキュリティー技術」、割れにくさと防塵防水仕様の採用、MIL基準に対応した「堅牢・耐久技術」、シニア向けでは最大規模のSNSとなる「らくらくコミュニティ」や、ヘルスケアサービスの「ララしあ」などのサービス提供を通じた「サービスビジネス」、NSPセミコンダクターズをはじめとするアライアンスパートナーとの事業拡大による「ソリューションビジネス」だとする。
初年度から黒字化が目標
その一方で、今後、経営に生かすことができるポラリスが持つ経験値とはなにか。
高田社長は「さまざまな企業とのアライアンスなどにおいて、ポラリスの投資実績や経験が生かせると考えている」と前置きし、「日本のキャリアも、MVNOも、ビジネスの軸足を、端末を起点としたサービス、あるいはネットワークを起点としたサービスへと移行させている。その領域に我々が入っていくうえでは、パートナーとのアライアンスが必要になる。そこにポラリスのノウハウを生かせる。アライアンスの強化、経営のスピードアップ、先行投資の強化により、持続的イノベーションを図ることができ、それが成長へとつながる」と語る。
実は、富士通コネクテッドテクノロジーズは、ここ数年、ソリューション領域に積極的に乗り出している。
IoTを活用することで、運輸・運送業界向けに、業務車両の稼働率把握ソリューションを提供したり、タクシー会社向けに運行状況の把握と効率運用に関するソリューションを提案したりする取り組みを実施。
医療市場向けには、医療施設における高度な健康管理、小売市場ではバイタルデータを活用した新たな接客提案などソリューションを提供。「開発支援、技術サポート、コンサルティングを通じて、ソリューションビジネスを加速したい」とする。
また、富士通から独立し、モバイル事業の専業企業になったことで、富士通の完全子会社時代に比べても、モバイルに向けた先行投資が積極化できるとみている。
「5Gネットワークに向けた先行投資や、現行の4Gネットワークの進化への対応のほか、自動車分野をはじめとして、新たなコネクテッドビジネスに向けた投資も実施していく。こうした先行投資をしながらも、初年度から黒字化を目標にしている」と意気込む。

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