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業界人の《ことば》から第299回

シャープ戴正呉社長「東芝PC事業を1~2年で黒字化させる」

2018年06月19日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「シャープの管理力とダイナブックの技術力を融合することで、1、2年で黒字化を果たし、投資回収を進めていく」(シャープ・戴正呉社長)

 シャープは、東芝のPC事業を買収することを正式に発表した。

 東芝グループでPC事業を担う東芝クライアントソリューションの株式の80.1%を、シャープが40億500万円で取得して、子会社化する。東芝のPC事業、モバイルエッジコンピューティング事業、ドライブレコーダー事業に関する商品、ブランド、人材、技術、販売チャネルなどを承継する。

8ビットパソコン「パソピア」

 東芝のPC事業は、1981年に発売した8ビットパソコン「パソピア」シリーズが発端だが、大きな成長を遂げたのは、1985年に発売したポータブルPC「T1100」以降である。T1100は、欧米市場で先行して発売。その後、世界のノートPC市場をリードしつづけ、13年連続での世界ノートPCトップシェアを維持する実績も持っていた。

ポータブルPC「T1100」

 日本では、1986年に「J-3100」を発売し、それまでNECの「PC-9800」シリーズが独壇場だった国内PC市場の勢力図に、IBM・PC互換機によって、風穴をあけるきっかけをつくった。1989年には「J-3100SS」を発売し、ここからダイナブックのブランドを使用。1996年には小型ノートPC「Libretto」を発売し、人気を博した。近年では、ダイナブックブランドを維持しながら、TECRAやSatelliteのほか、Qosmio、KIRAといった製品群を投入。さらには、ダイナブックタブやダイナパッドといったタブレットにもラインアップを広げていた。

ダイナブックのブランドを初めて使用した「J-3100SS」
小型ノートPC「Libretto」

 ちなみに、ダイナブックのブランドは、かつてはアスキーが所有していたブランドでもあった。パーソナルコンピュータの父と呼ばれるアラン・ケイ氏が提唱した「ダイナブック」にちなんで、東芝はアスキーから商標を譲り受け、これをブランド名にしたのだった。

アラン・ケイのサイン入りの「ダイナブック」

 だが、東芝のPC事業は近年低迷していた。

 2010年度には、年間約2500万台の出荷計画を打ち出していたこともあったが、2017年度実績では、200万台を切る規模にまで大幅に縮小。さらに2016年度には約5億円の赤字、2017年度には96億円の赤字を計上。自立再生は、険しい道のなかにあった。

名機を投入も撤退したシャープ

 一方、シャープは、PC黎明期から名機を投入し続けてきたメーカーでもある。

 マイコンと呼ばれた当時に、「MZ」シリーズを投入。まさに草分け的存在でもあった。1978年に発売された「MZ-80K」や、ビジネス利用を想定して1981年に発売された「MZ-80B」は、マイコン少年たちの憧れの製品であったり、先行的に仕事に利用したいとするユーザーの注目を集めたり、シャープのPCは多くのファンを掴んでいた。

「MZ-80K」

 また、MZシリーズは電卓事業の流れを汲む情報システム部門が開発したPCであった。もう1つの流れとして、テレビ事業部門が開発した「X1」シリーズや「X68000」シリーズも製品化しており、熱狂的なファンを獲得した名機として国内PC市場の歴史に名を刻んでいる。

 さらに、MebiusやMURAMASAなどの軽量、薄型技術を活用したノートPCも高い人気を誇っていた。常に存在感を発揮してきたPCメーカーであったといえよう。

 だが、シャープは、2009年に発売した「Mebius PC-NJ70A」を最後にPC市場から撤退。その後、経営不振に陥り、鴻海グループ傘下で経営再建に取り組んできた。

「Mebius PC-NJ70A」

 シャープは新たな体制での再建の道筋のなかで、ビジネスソリューション事業の強化において、BtoB商材を拡充。その際に、鴻海が生産したPCを国内市場に投入することも検討材料の1つに入れていた。

 今回の買収で、シャープグループとして国内市場にもPCを投入でき、同社のBtoB事業にも弾みがつく。

 だが、投入される製品は、ダイナブックが得意とする法人向けや教育向けが中心になりそうだ。

 同社によると、シャープブランドのダイナブックとしての投入を予定。東芝が持つノートPCの技術力を生かし、ダイナブックブランドの製品を継続的に投入しそうだ。

 長年、PCを利用してきたユーザーのなかには、シャープが投入していたMebiusシリーズの復活を期待する声もある。残念ながら、この点については、現時点では復活の可能性は低いようだ。だが、シャープが取り組んでいるAIoTと、ダイナブックの技術を融合した製品開発を進める姿勢をみせている。

「1、2年で黒字化を果たし、投資回収を進めていく」

 シャープの戴正呉社長は「シャープの管理力とダイナブックの技術力を融合することで、1、2年で黒字化を果たし、投資回収を進めていく」とする。

 シャープの管理力とは、2500億円規模の赤字から、わずか2年で黒字化した鴻海流の手法のことを指す。シャープは300万円以上の決済は、すべて戴社長が実施するやり方が話題を集めた。こうしたトップダウンで厳しく管理する手法を用いることで、東芝のPC事業も再生を図ることになりそうだ。

 戴社長は、まずは国内での事業拡大を優先させ、その後、グローバル展開を検討していくことを示している。

 鴻海傘下で再建を図ったシャープの液晶テレビ「AQUOS」は、2016年度には500万台弱の出荷実績に留まっていた。しかし、鴻海が持つ中国やアジアでの販売ルートを生かして、2017年度には1000万台を超える出荷を達成している。一気に倍増させた実績は、ダイナブックでも生かされることになりそうだ。

 再び、ダイナブックが世界に通用するノートPCブランドに復活することができるか。シャープによる買収で、その道筋が作られたといえる。

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