
今回のことば
「これだけ世の中が変わっているのに、NECの社員は頭だけで考えようとしている。実行力がまったく追いついていない。その姿勢を根本的に変えないと、いつまでたっても変わらない」(NECの新野隆社長兼CEO)
減益減収でボロボロのスタート
NECは2018年1月から、2020年度を最終年度とした新中期経営計画に挑んでいる。
これは、2016年4月からスタートした3ヵ年の中期経営計画をわずか1年で撤回。新たに策定しなおしたものだ。
2020年度の目標は、売上高3兆円、営業利益1500億円、営業利益率5.0%。撤回した中期経営計画と同じ数値目標であり、表面上は数値を2年先送りしたように見える。だが、この見方に対してNECの新野隆社長兼CEOは「中身はまったく異なる。最も重要なのは実行力の改革。これまでの『当たり前』を捨て、本当に必要なものをいかに強くしていくかに取り組む」と、「別物」であることを強調する。
従来の中期経営計画の初年度となる2016年度通期連結業績は、売上高が前年比5.7%減の2兆6650億円、営業利益は54.2%減の418億円、税引前利益は21.4%減の680億円、当期純利益は57.7%減の352億円と、減収減益のスタートとなった。中期経営計画のスタートとしては、「ボロボロの状態」(新野社長兼CEO)となった。
いままでのやり方が通用しない
新野社長兼CEOは中期経営計画を撤回した理由を「外部環境の変化などの影響があった。市場環境や顧客動向の変化に対応したマネジメントの実行力不足」としながらも、「これだけ世の中が変わっているのに、NECの社員は頭だけで考えようとしている。実行力がまったく追いついていない。その姿勢を根本的に変えないと、いつまでたっても変わらないことを実感した」とする。
NECの社員はいままでやってきたことを学習しながら発展させていく能力には長けていると、新野社長兼CEOは語る。背景には、NECの長年のビジネススタイルが影響しているとも指摘する。
「エンジニアもSEも営業も、すべての社員がお客様からの要望を実現する姿勢で仕事をするのがNEC。お客様に言われたことを、最高の技術を使って、最後までやり遂げるというのが、NECのビジネスのベースであり、NECの成長を支えてきたやり方である」とする。
だが新野社長兼CEOは、そのやり方が通用しなくなってきたとも語るのだ。
「いまは仕事のやり方が大きく変わり、ビジネスが大きく変わらなくては、企業は生き残れない。自らが変化をして、自らが市場を作っていかなくてはならない。しかし、頭ではわかっていても足腰が変わっていないことを示したのが、これまでの結果。全員がギアチェンジをし、自ら実行していかなくてはならない」と厳しい口調で語る。

この連載の記事
- 第486回 国内製造業としては過去最大となる7873億円の赤字からの復活の先は? 日立
- 第485回 パナソニックは世間を知らないという樋口氏、独自色見せる経営を、初任給も世界最高水準に?
- 第484回 リコーがPFUを子会社化、サイボウズとも提携、一気通貫のデジタル化へ
- 第483回 Red HatはLinuxの会社だと思っていたが、こんなことも……
- 第482回 シャープの新CEOは44歳の若さ、健康、世界戦略、そしてHITO
- 第481回 20年以上前からAIを使った創薬に取り組むNEC、ベータコロナウイルス属に有効な次世代ワクチン開発へ
- 第480回 カンパニー制廃止のパナソニックが持株会社制ではなく事業会社制であるとする意味
- 第479回 データを使えていないからDXができない、Celonis
- 第478回 レジだけでなく、スーパーマーケットのビジネスモデルを持ってきた企業
- 第477回 ホンダとソニーの提携、馬車が自動車に変わった、それと同じぐらい大きな変化が今後来る
- 第476回 東芝、デジタル分野での経験が長い新社長
- この連載の一覧へ