
今回のことば
「ローソンはゲームチェンジャーになりたい。コンビニは成長の踊り場にある。だがローソンがいる踊り場は、いい踊り場だ」(ローソンの竹増貞信代表取締役社長)
CEATEC JAPAN 2018で、最も注目を集めた企業がローソンだ。
CEATEC JAPANが「脱家電見本市」を宣言し、「CPS/IoTの総合展」に舵を切って3年目の今年、初出展となったローソンは展示会場に近未来のコンビニを誕生させた。
スマホを使って、レーンを通過するだけで実際に商品購入を体験できる無人決済や、新鮮な総菜をいつでも提供できる仕組み、人それぞれにあわせた薬を提供する仕組みなどを展示。未来のコンビニの姿を示してみせた。
これが多くの来場者の関心を集め、あまりに人気ぶりに「列をなくすはずの無人決済に、長蛇の列ができてしまった」という、意外な事態が発生したほどだ。
ローソンの竹増貞信社長は「かつてのローソンはいつでも店が開いていて、便利であるというところに価値があった。その後、電気、ガス、水道の収納代行サービスやローソンチケットの販売、ATM端末の導入、郵便ポスト設置などにより、街のインフラを担うようになった。だが、これからのローソンは『マチの生活プラットフォーム』を担うようになる。30坪という店舗の大きさは変えずに、中身の商品やサービスを次々と変化させることで、リアルの店舗の価値を高めることができる。そうした進化のためには、デジタルと共存したり、ときにはデジタルを味方につけたりしながら、社会課題解決に適した店づくりをしていかなくてはならない」と語る。
その姿勢を見せたのが、CEATEC JAPAN 2018のローソンブースだったというわけだ。
地方の病院や銀行の役割を担う
竹増社長は、街を支えてきた「生活プラットフォーム」そのものが減りつつあることを懸念している。
たとえば学習塾は人口5500~7500人の規模があれば、1店舗の事業が成り立つという。同様に、銀行は6500~9500人、一般病院では7500~2万7500人、そして喫茶店では2500~7500人という規模が必要だとする。
だが、人口減少や都市化の促進により、とくに地方都市で街の規模が縮小することが指摘されている。それにともない、学習塾や病院、銀行といった社会プラットフォームのビジネスが成り立ちにくい街が増えていくことになる。当然、撤退を余儀なくされるだろう。
「そこに役割を果たすことができないか」というのが、竹増社長が描く未来のローソンの姿だ。
「コンビニエンスストアは2000人の商圏で、1店舗の事業が成り立つ。2000人に1店舗を開けられるローソンのビジネスモデルは、さまざまな生活プラットフォームを支えていける。ローソンに生活プラットフォームを乗せることで、街の機能を維持できるようになる。そこにローソンの価値が生まれる」とする。
CEATEC JAPAN 2018のローソンブースで、無人決済や新鮮な総菜を提供する仕組みは、これまでのコンビニの延長線上での提案といえる。だが、個人にあわせて薬を提供する仕組みや、ビデオ端末を利用して遠隔地と結んだ医療相談、教育や趣味などに利用できる提案は、これまでの延長線上とは異なる、まさに、次世代のコンビニの役割を示したものになる。

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