
今回のことば
「ライフデザイン企業にシフトすると言ったら、金融や電気、教育の企業になるのかという誤解が生まれた。シフトという言葉に×をつけて、通信とライフデザインの融合を目指すことにした」(KDDIの高橋誠社長)
KDDIの社長に就任した高橋誠氏が4月5日、社長就任会見を実施した。会場に選んだのは、六本木のグランドハイアット東京。「この場所はフィーチャーフォンの時代に、EZweb向けにGoogleの検索エンジンを世界で初めて提供することを発表した場所であり、じぶん銀行の設立を発表した場所でもある。広報にお願いして、この場所で会見を設定してもらった」と、高橋社長にとって重要な案件を発表した、思い入れのある場所であることを強調してみせた。
その高橋社長が冒頭に示したのが、これまで同社が示してきた「ライフデザイン企業への変革(シフト)」という方向性を見直すことだった。
「ライフデザイン企業といった途端に、通信事業から、eコマースや金融、電気、教育事業の会社になるのではないかという誤解が生まれた。我々が目指すのは、ど真ん中に通信につながるお客様を置いてビジネスするということ。そこで、シフトという言葉に×(バツ)をつけてみることにした」と切り出す。
高橋社長が新たに打ち出したのは、「通信とライフデザインの融合」である。
5G、IoT、AIをいかに体験価値に変えられるか
「通信につながる人たちに対して、体験価値を演出することが大切である。モノ消費から、コト消費へと移行するなかで、生活を楽しくすることが、ライフデザインという言葉が意味するものになる。お客様と通信でつながり、お客様の体験価値を高めていく」とする。
ここでいう「通信につながるお客様」というのは、スマートフォンのユーザーだけでなく、IoTと呼ばれるインターネットにつながるすべてデバイスや、近く訪れる5G時代においてつながる環境までを含む。
「新たな通信環境の同心円上にライフデザインが生まれることになり、これによってエンゲージメントを広げ、利益を拡大することになる」と語る。
そして、「約款でサービスを提供する会社は、プロダクトアウトの姿勢が強くなりがちだが、通信とライフデザインの融合を実現する上では、お客様と一緒に、お客様視点で提案することが大切。そして、パートナーと一緒に新しい価値を創造していきたい」と語る。
高橋社長は具体的な例として、同じ会場で発表したかつてのフィーチャーフォン環境でのGoogle検索サービスについて触れる。
「PCを所有していないユーザーが、この検索サービスを使用して初めて、自分の子供が通う学校のPTAのホームページの内容を見ることができたという感動の声をいただいた。これは、パートナーとの連携によって新たな価値を創造した例のひとつ。5G時代の到来を前に、3Gの時代と同じことが求められようとしている」とする。
「5G、IoT、AIなど、大変革時代が訪れるなかで、競争こそが新しい創造を生むことになる。ただ、5G、IoT、AIというとプロダクトアウトの印象が強い。これらの最新技術を、いかに体験価値に変えることができるか。ここが我々の勝負どころである」と述べた。
もうひとつ、高橋社長が掲げたのが「ワクワクを提案し続ける会社」である。

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