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業界人の《ことば》から 第300回

企業の生死を分けるのはAIとデータを組み合わせられるかどうか

2018年06月29日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

「ムーアの法則、メトカーフの法則に続く、3つ目となる技術の転換点が訪れている。その中心にあるのはデータ。データは、12ヵ月ごとに2倍になっており、さらに、データは多様化し、データの価値が増加している」(日本IBMのエリー・キーナン社長)

 日本アイ・ビー・エムが開催した同社のプライベートイベント「Think Japan」の基調講演で、日本アイ・ビー・エムのエリー・キーナン社長は、約30分間に渡って最新技術を取り巻く状況と、同社の取り組みについて説明した。

 昨年4月の年次イベントでは、日本IBMの社長に就任してから間もないということもあり、それほど多くは語らなかったが、今年は幅広い内容について言及してみせた。

 冒頭にキーナン社長は、「我々は今重要な時期にあり、大きな転換点を迎えている」と切り出した。

 これは、2018年3月に米ラスベガスで、米IBMが開催したTHINKの基調講演において、米IBMのジニー・ロメッティ会長兼社長兼CEOが語った「Watsonの法則」のことを指す。

 キーナン社長は「過去60年の間に、2回にわたるテクノロジーの劇的な変化によって、ビジネス環境が大きく変化した。最初の変化は、ムーアの法則であり、これによって、半導体の集積率は18ヵ月で2倍になった。2つ目の変化は、メカトーフの法則であり、ネットワーク通信の価値は、接続されているシステムのユーザー数の二乗になった。これらの劇的な技術進化が、ビジネスを変え、社会を変えてきた」とし、「今訪れている変化は、これに続く、3つ目の変化である。そして、その中心にあるのがデータになる。データ量は、12ヵ月ごとに2倍になるとともに、データが多様化し、データの価値が増加する。さらに、データとAIとの組み合わせによって、膨大な学習が可能になり、指数関数的な変化をもたらすことになる。これが、企業の変化や競争力強化につながる」とする。

 この変化を捉えることができるかどうかが、企業の生き残りにつながるというわけだ。

業界の既存企業が今のビジネスを破壊する

 基調講演のなかで、キーナン社長はひとつのデータを示してみせた。それは、「破壊者(ディスラプション)」に対して、経営層の認識が大きく変化してきていることだ。

 これまでの破壊者は、業界外から参入してくる企業であると認識されてきた。最たる例がUberである。デジタルを活用することで、自動車を所有しないタクシー会社が、タクシー業界を大きく変えた。

 IBMが、日本の企業の経営層を含む全世界1万3000人を対象に実施した調査では、2015年時点ではその認識が強かった。「既存企業からディスラプションが起こる」としていた企業は29%に留まっていたからだ。

 だが、最新となる2017年の調査では、72%の企業が「既存企業からディスラプションが起こる」と回答。認識が大きく変化しているのだ。つまり、破壊者は、業界外から生まれるのではなく、業界内から生まれるというわけだ。

 実は、ここにもデータを中心とした時代が訪れていることが示されているという。

 キーナン社長は「世界のデータの80%が、一般的には検索ができない企業内のデータであり、これが企業の競争力につながっている」と前置きし、「業界の既存企業がこのデータを活用し、AIを用い、さらにほかの最新技術を組み合わせることでイノベーションを起こしはじめている。それによって、いまのビジネスを破壊していくことになる」という。

データの扱い方を重視するIBM

 もうひとつ、キーナン社長が示したのが「IBMは、誰がデータのオーナーであるのかということを、明確に示している点である」とした点だ。ここでは、データを所有している企業や人がオーナーであることを明確にしてみせた。

 続けて「データそのものだけでなく、データから得られる知見やアルゴリズムも、データを持っている人の財産である。誰がAIを教育し、誰がそこから知見を得るのかということも明確に定義している」と語る。

 データや、データをもとにした生まれたアルゴリズムなどのすべては、所有者に無断で使用することはないというのがIBMの基本スタンスだ。

 「だが、すべてのテクノロジープロバイダーが、これと同じ考え方を持っているわけではない。これは、しっかりと理解しておくべきだ」と述べた。

 データを活用して別のビジネスに利用したり、データを提供するビジネスを展開したりする企業があるのも確かだ。「データは資源」と呼ばれる時代において、データの取り扱いに関するスタンスはこれから重視されてくるだろう。

 だからこそ、IBMは、データが中心となる時代において、データやデータをもとに生まれたアルゴリズムの帰属を明確にすることの重要性を訴えてみせた。

 一方で、キーナン社長は、日本における動きをいくつか示した。

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