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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第235回

半導体プロセスまるわかり インテルの14nmが遅れる理由

2014年01月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 今回から半導体プロセスの話をしていこう。まずこれに先立って、2013年11月にインテルが開催した投資家向け説明会の資料をもとに、インテルの14nm以降のプロセスと、これにまつわるビジネスの話を解説していこう。

Atomのロードマップ。次期プロセッサーは14nmプロセスで製造される

量産が約3ヵ月遅れる
14nmプロセスの動向

 元々昨年10月に行なわれた2013年第3四半期の決算報告の中で、同社CEOであるBrian Krzanich氏が14nmプロセスの量産開始を1四半期遅らせることを発表している。

 本来だと2013年末にはこの14nmプロセスを使っての製造が開始されるはずだったため、これが2014年3月あたりまで伸びる計算だ。ということは、14nmプロセスを利用して製造した製品がファウンダリーから出てくるのは早くて5月末、実際には6月に入ってからになると思われる。

 この14nmの遅れに関しての詳細が、同社のWilliam Holt氏(Exective Vice President&General Manager, Technology and Manufactureing Group)から説明があった。

14nmと22nmの比較。右上はトランジスターの性能に触れた部分で、こちらは順調に改善できていることを示している

 14nmの状況を22nmの場合と比較したものが上の写真である。画像は縮小してあり見づらいので、右上を除く3つについてそれぞれ大きく示していこう。

 下の画像は、歩留まり(Yield)の比較である。22nmについては、現在ではなく2年前の状態を基にした結果であるが、これと比較すると14nmはやや立ち上がりがもたついていることがわかる。

歩留まり(Yield)の比較。縦軸が歩留まり、横軸が期間であるが、縦軸の方に波線が入っている事からもわかる通り、具体的な値は公開されていない

 インテルの推定によれば2014年1月には22nmと同等の歩留まりが達成できるという見込みであるが、実際には2013年の6~8月はずいぶん苦しんだ様子が伺えるし、10月も色々大変だったようで、このまま推定どおり2014年1月中に22nmと同等の歩留まりが達成できるのか、もう少し情報がほしいところだ。

 下の画像は22nmプロセスと14nmプロセスの両方を使って製造したウェハーの物理的な特徴を比較したものである。例えばある電圧・温度である電圧をかけたときに電流はどうなるか、その際の遅れはどの程度かなどの目標パラメーターが、どんなプロセスでも設計段階で決められており、その数は数百から数千ある。

物理的な特徴を比較したもの。縦軸は目標を満たしたパラメーターの数、横軸が週単位の期間となっている。通常ウェハーの製造では「2013年25週に製造」というように週単位になるので、横軸がWeeksとなる

 プロセスの開発段階では試しに流したウェハーについて、こうしたパラメーターを全部測定し、目標にあった結果が出ているかどうかを確認するわけだが、上の画像はこの合い方を示したものである。14nmプロセスのパラメーター改善は、22nmの時とほぼ同じ具合に進んでいるとしている。

 最後が信頼性に関するもので、22nmはやはり2年前の状況を示したものである。以下のように、ほぼ22nmと同等レベルが達成できている、としている。

Test Vehicleというのは、そのウェハーを検証するために用意する、プラットフォームとでも言えばいいだろうか。要するにテスト用の環境である

  • トランジスターおよび内部配線の信頼性:22nmはほとんど問題なかったが、14nmではまだいくつか改善の必要あり
  • 熱・機械的信頼性及び湿度対策:22nmでは深刻な問題であったが、14nmではほぼ問題なし
  • テスト用ビークルの信頼性:22nmではやや改善の必要がある程度だったが、14nmでは大分改善の必要あり
  • 静電気放電/ラッチアップに関する信頼性:22nm/14nmともにほぼ問題なし

 インテルはこれまで、未発表のプロセスの詳細をここまで公開することはなかった。もちろんIEDM(IEEE International Electron Devices Meeting:半導体素子に関する国際学会)に、研究レベルでの発表を行なうことは煩雑にあったが、量産プロセスに関しては完成後に報告というのがほとんどだった。

 それが今回前倒しで14nmプロセスの動向を説明したのは、後述するファウンダリーサービスへの配慮であろうと考えられる。そのファウンダリーサービスの話は後回しにして、まずは性能の話をしよう。

消費電力が下がり性能が向上する
プロセスの微細化はいいことづくめ

 下の画像が全体をまとめたものだが、トランジスターコストは着実に下がり、機能あたりの消費電力も下がり、かつ性能は向上することが示されている。左上はトランジスター1個あたりのコストを、65nm世代を1とした場合に換算したもの。

14nmと22nmの性能比較。依然としてムーアの法則が生きているとインテルは主張している

 縦軸は対数なので、14nm世代で0.2位になる。右上は機能(例えば1個のゲート)あたりの消費電力で、これは45nm世代を1とすると、14nm世代では0.1近くまで落ちる。

 下の2つのグラフは、22nm世代と14nm世代を比較した場合、動作周波数が同じなら動的消費電力が67%減少(左下)、動的消費電力が同じなら速度が40%向上(右下)としている。

 またダイ面積を比較した場合、TSMCなどの競合は20nm世代と16nm/14nm世代で密度を上げられないのに対し、インテルは継続して密度を上げられる、と主張している。

縦軸は相対的なトランジスター1個当たりの面積を対数表示していると思われる。ただ絶対的なトランジスターのサイズはこのグラフからは読み取れないので、技術的にはあまり意味がないプレゼンテーションである

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