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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第235回

半導体プロセスまるわかり インテルの14nmが遅れる理由

2014年01月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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14nmは製造コストの
上昇が避けられない

 14nmプロセスに突き進むインテルであるが、コストの負担は少なくない。ここからは同社のCFOであるStacy Smith氏のプレゼンテーションである。

 まず下の画像はウェハー1枚を製造するために必要なコストを示したものだ。65nm→45nmはほぼ同等、32nmはそのままだと多少コストが上がったが、うまく再利用をしたことでコストを削減できている。

ウェハー1枚を製造するために必要なコスト。縦軸がコストだが、これは対数ではない普通の軸と思われる

 ところが22nmでは1.5倍近くに跳ね上がり、14nm世代では65nm世代と比較してほぼ倍近くになると予想されている。その一方で、平均のダイサイズは緩やかにではあるが削減方向にある。

これはCPUとチップセットを対象に加重平均を取ったもので、特定の製品群を指しての結果ではない

 特に一部の製品群、この場合はノートPC向けのCore i系の場合、2013~2015年を比較するとダイサイズは29%削減されるという。

ノートPC向けプロセッサーのダイサイズの推移。WADSはWeighted Average Die Size(ダイサイズの加重平均)という意味だ

 端的にまとめると、ダイサイズが29%減ればその分多数のコアを1枚のウェハーから取れるため、原価を落とせるというわけだ。14nm世代でさらにダイサイズを減らせれば、ウェハー製造コストによる原価上昇分をある程度相殺できることになる。

 では、なぜコストが上がるのか、その理由を探ってみよう。下の画像が2013年における投資額である。

2013年におけるインテルの投資額。まだ2013年通期の結果は示されていないが、10月に発表された予測によれば108±3億ドルになるとされており、この大半が製造装置向けということになる

 およそ70億ドルが製造装置への設備投資である。すでに22nmへの設備投資はかなり絞られているため、このほとんどは14nmプロセスへのものになるだろう。

 14nmへの投資は2012年頃から行なわれており、合計で100億ドルを超えるのは間違いないところで、これを何年で償却するかがという話はあるにしても、けっこうな負担になるわけだ。

 下の画像は、先ほどのグラフにウェハーの製造枚数を重ねたものであるが、ウェハーの製造枚数そのものは32nm世代とたいして変わらないことが見て取れる。またファウンダリーの稼働率もここ数年は80%程度を維持しており、たくさん作って、相対的に原価を下げることも難しい。

折れ線が週当たりのウェハー製造枚数となる

 要するにインテルの14nm世代の製品は、従来に比べるとどうしてもコストが上がることは避けられない、というのがここでの結論になる。

工場の稼働率。100%近いとさすがになにかあったときの対応ができなくなる。また少品種大量生産だと稼働率は上げやすいが、多品種少量生産だと稼働率はどうしても下がる。平均80%前後というのは悪い数字ではない

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