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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第5回

世界貿易戦争で高まる関税リスク:

アップル新iPhone発売が危ぶまれる国際事情

2018年07月24日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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関税の応酬の影響は?

 世界中からパーツを集め、組み立てて、ふたたび世界中で販売する。アップルの緻密なサプライチェーンによる製造体制は関税合戦の中で常にリスクとなります。これはアップルのブランド力ではどうしようもないことです。

 たとえば中国が電子部品やガラスなどに関税をかけた場合、パーツの価格が10%以上上がることを意味します。また中国は国内の企業に対して、製品の製造・輸出差し止め措置をとった過去もありました。日本にとってはレアアースが記憶に新しいですね。

 一方、米国も中国からの輸入品全般に対して関税をかければ、前述のようにアップルが関税分を飲むか、消費者に転嫁する形になります。後者の場合もiPhoneの売れ行きに影響しますから、いずれにしてもアップルにとっては不利益です。

 そうならないため、アップルのティム・クックCEOは、トランプ大統領や通商政策のトップと会談をして、現状消費者への影響が大きい品目への関税を後退させることに成功しています。トランプ大統領が示唆する中国からの全輸入品への関税には、当然iPhoneも含まれることになります。

 貿易戦争の本丸は航空機産業とも言われていますが、世界の誰もが知っていて、インパクトの大きいブランドであるアップルのiPhoneが、貿易戦争の中で双方のアピール材料として活用される可能性は、新モデル発売の9月が近づくにつれて高まると考えています。

 中国からすれば、iPhoneの価格が上がったり、米国に円滑に届かない状況を作り出されれば、トランプ政権の政策がいかに市民の生活に悪影響かをアピールできます。

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