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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第323回

マスク氏、米政府機関の廃止進める 在日米軍もターゲットに?

2025年02月18日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 イーロン・マスク氏が、米国の政府機関の廃止を進めている。

 最初に閉鎖が進められているのは、米国際開発局(USAID)だ。USAIDは、途上国や紛争地を対象に開発援助や人道支援を実施する機関だ。2025年2月6日の米ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、USAIDには1万人以上の職員が在籍しているが、直接雇用の職員のほとんどが7日から休職となり、290人ほどの小規模の組織に再編されるという。

 政府機関の閉鎖はUSAIDにとどまらない。13日のロイターは、トランプ政権で政府の「効率化」を担当するマスク氏が、「一部を残すのではなく、政府機関全体を廃止する必要がある」と述べたと報じている。マスク氏が率いる政府効率化省のチームは15日には、国防総省の無駄の削減を目指し、同省の職員からのヒアリングを始めたとされる。連邦政府の多くの雇用を削減しようとするマスク氏に対して、すでに複数の訴訟が提起され、政府資金の拠出凍結を差し止めるよう命じた連邦地裁レベルの判決も出ている。

 米国や日本に限らず、政府機関には多くの非効率や無駄が存在する。このことを否定する人はほとんどいないだろう。しかし、USAIDだけでなく「全体」を削減するとなると、多くの混乱と強い反発を招くはずだ。米政府の「効率化」でマスク氏は何を目指すのだろうか。

政府職員の自然減

 マスク氏は政府効率化省(DOGE)を率いて、政府職員の削減を進めている。ただ、現時点では正式に新しい政府機関が組織されたわけではなく、マスク氏を中心とした小規模なチームをDOGEと呼んでいるようだ。マスク氏が唱える効率化を理解するうえで、2月11日付の大統領令「大統領の『政府効率化省』による職員最適化イニシアティブの実施」にヒントがありそうだ。この大統領令の第1条「目的」は、次のように定められている。

 「米国民に対する説明責任を回復するために、本命令により連邦政府の官僚機構の重要な変革を開始する。無駄、肥大化、孤立主義を排除することで、この政権は米国の家族、労働者、納税者および政府制度そのものを強化する」

 「目的」を噛み砕くと、「肥大化した政府のムダを排除する」ということになるだろうか。まず、この大統領令は、政府機関の職員の自然減を進めることとしている。大統領令は、「退職する職員4人につき、1人以下の職員を雇用することとする」としている。ある省で2025年度に400人が定年退職する場合、100人を新規に採用できるということになる。これが、マスク氏の言う「政府全体」を意味するのだと考えられる。ただ、米軍の軍人、警察や移民・関税執行局などの政府機関については当面、職員を削減しないとしている。

ITによる効率化

 DOGEは、連邦政府職員の削減だけではなく、ITをフル活用した政府機関の業務の効率化も進めている。この職務については、2度目のトランプ政権がはじまった1月20日に出された大統領令に次のように規定されている。

 「連邦政府の技術およびソフトウェアを近代化し、政府の効率性および生産性を最大限に高める」

 DOGEは臨時の組織で、2026年7月4日にその役割を終えることが、大統領令に明記されている。2月14日のBBCによれば、DOGEには、ITを専門とする若いスタッフが配置されている。こうしたスタッフを率いるマスク氏は、年間130日以内、無給の政府職員として勤務するという。

在日米軍もターゲットに?

1. 古くさい政府機関のシステムを最新のシステムに入れ替え、AIによる自動化を駆使して、行政の効率化を図る。

2. 同時に、大幅な人員の削減を進めて最小限の人員で政府機関を運営させる。

3. 結果として政府の支出と債務を削減する。

 現時点で、マスク氏が進めているのは、この3点に集約できるだろう。

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