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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第44回

アップル「iOS 13」戦略解説:

アップル「iOS 13」日本で重要なワケ

2019年06月25日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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●「長持ち」を性能化するアップル

 2018年9月のiPhone発表イベントでは、環境・政策・社会イニシアティブ担当副社長のリサ・ジャクソン氏が登壇し、iPhoneの環境性能やリサイクル資源の活用、そしてiOS 12が当時5年前のデバイスであるiPhone 5sでも動作することをアピールし、iPhoneに「長持ち」するという性能があることを明らかにしました。

 これはアップルにとっても明らかな方針転換です。アップルはiPhone発売当初から、携帯電話キャリアの2年契約を前提に米国では450ドルを端末代金から割り引く料金施策を提案してきました。結果、2年という買い換えサイクルを作り出すことに成功しました。

 しかしスマートフォンの性能向上が鈍化するにつれて、スマートフォン市場全体で買い換え周期は長期化し、2.5~3年へと伸びてきました。同時にスマホ市場は世界的に飽和しているため、買い替え需要のサイクル長期化は、スマートフォンの販売台数低下に直結します。それが、昨今のiPhoneをはじめとするスマホ販売不振の構造です。

 しかしアップルは買い換え周期の長期化を助長するような「長持ち」を性能に加えました。その長持ち性能の裏付けをiOSによって実現しているわけです。

 先日来日したリサ・ジャクソン氏にインタビューするチャンスがあり、iPhoneの長持ち性能について聞きました。すると、今に始まったことではない、という考えが返ってきました。

 「長持ちする高品質の製品を作るというアイデアは、アップルの最初期から存在していました。スティーブ・ジョブズが、どれだけ1つの製品の内側は外側と同様に美しくすることにこだわったという逸話がありますよね。これは極めて重要なことだと思います。すなわちアップルは1年使える製品を作っているのではなく、長い長い年月使い続けることができる製品をデザインしているのです」(ジャクソン氏)

 ハードウェアとソフトウェアの開発を通じて、アップルはこれまでもiPhoneの大きなアドバンテージを作ってきました。スマホ活況期に有効だったiPhoneの戦略は、スマホ不況期に入っても、少なくとも他社よりは上手くやるだけのポテンシャルを持っている、と考えられます。

 あとは、iPhoneの製造を依存している中国と、アップルの本国である米国との貿易戦争の行方が、最大のリスク要因になりますが、この話はまた別の機会に。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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