ご存じの方もいらっしゃると思いますが、中国では今年、14年間続いた家庭用ゲーム機の生産・販売禁止令が解除されました。家庭用ゲーム機がなかったため、以前は中国ゲーム市場といえばPCゲームがメインでしたが、その影響もあってか、プロモーションの手法は派手なイベントやPC媒体への出稿がほとんどでした。
近年、スマートフォンの普及と共にモバイルゲーム時代が幕を開け、これまでPCゲームを制作・運営していた会社が、モバイル領域に参入する例が少なくありません。その結果モバイルゲーム数は激増し、プロモーション手法としてもプラットフォームへの広告出稿が主流になりました。
このように日本と大きく異なる背景をもつ中国モバイルゲーム市場には、当然のことながら、随所に大きな違いがあります。例えばアンドロイド端末向けプラットフォームを見ると、中国国内ではグーグル一社の天下ではなく、数多くのローカルプラットフォーム(ゲームマーケット)が存在しています。各ゲーム会社はその有名どころのプラットフォームに集中して出稿する為、一部のプラットフォームではプロモーション枠が不足し、単価も徐々に上昇する傾向にあります。
グラフは2014年1月〜3月、中国遊戯工委(GPC)が発表した調査結果「CHINA GAMING INDUSTRY REPORT」に掲載されたアンドロイドゲーム・プラットフォーム市場の会員数シェアです。図にある通り、わずか6つのプラットフォームで市場シェアの8割近くを占めています(「其他(その他)」にはグーグルを含め、何十社もが含まれます)。市場から注目されているのは「360手机助手」「百度手机助手」「应用宝」「小米应用商店」「豌豆荚」で、中国国内の最近のヒットゲームは、ほぼこの5社から出されているようです。簡単に、この5社について紹介しておきましょう。
【1】360手机助手
中国ブラウザー市場の64%を占め、月間アクティブユーザー数3.3億人超(2013年7月時点)を誇るインターネット企業Qihoo 360 Technology(チーフーサンロクマル)グループが提供。モバイルゲーム、音楽、小説などのアプリをダウンロードできる大型プラットフォームで、中国アンドロイドゲーム・プラットフォーム市場でシェアNo.1を維持しています。
【2】百度手机助手
グーグル社の中国撤退以降、急成長したアジア最大検索エンジンサービスの百度(バイドゥ)グループによるプラットフォーム。「91助手」と「HiMarket」のふたつのプラットフォームを買収し、現在、好調な成績をあげています(余談ですが「360」社が2012年に検索エンジン市場に名乗りを上げて以来、百度と「360」はインターネット関連の様々な業界で敵対しあっているようです)。
【3】应用宝
大手インターネットサービス企業・テンセントグループのプラットフォーム。ユーザー数が2億人(2014年4月時点)を超えたチャットツール「QQ」の関連媒体と連携するだけでなく、今年4月に4億元(約65億円)を使った「赤くなるQRコードからアプリをダウンロードすれば、5〜200元の電子マネーが当たる」キャンペーンによってプラットフォームユーザー数を一気に増加させることにも成功しました。他社プラットフォームにとっては、資金力的にも厄介な相手となっています。
【4】小米应用商店
2010年に設立された携帯電話メーカー・小米(シャオミ)社のプラットフォームで、サービス開始から161日間でアプリ総ダウンロード数が1億を突破。ユーザーに面白みをより感じてもらえるアプリの提供が理念であり、業界の新勢力と言える存在です。
【5】豌豆荚
2010年4月に設立された豌豆荚は、2013年12月までにユーザー数が3億人を超えるほどの急成長をみせ、ソフトバンク社から1.2億米ドルの出資を受けました。
モバイルゲーム市場の急成長は日本と何一つ変わらない中国ですが、無数のローカルプラットフォームが存在するなど、中国ならではの特徴も多くあります。このような違いを把握・分析して上手く利用すれば、この市場とも上手く付き合えるのではないかと思います。これからも市場の動向に注目し、随時皆さんに情報を共有させていただきます!