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デンマークの赤十字に学ぶターゲットへのリーチ方法

2015年06月23日 11時00分更新

記事提供:WPJ

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ターゲットへ、いかにしてメッセージを届けるか

この課題に、世界中のマーケッターたちは日々頭を悩ませ続けています。今日は、この難しい課題を、スマートな方法で解決した事例についてご紹介しましょう。ターゲットへのリーチ方法を模索する、すべてのマーケッターの参考になりそうな事例です。

ターゲットはメディアを見ない

もし、あなたが「新しく開設された診療所を告知する」というミッションを与えられたらどうしますか?

中には「そんなの簡単、メディアを使って知らせればいい」と考える人もいるかもしれません。確かに、私たちのまわりにはインターネットやチラシ、新聞、雑誌、電車の中刷りなど、様々なメディアがあふれています。これらを組み合わせれば、ターゲットへリーチすることはそれほど難しくはないのかもしれません。

しかし、そのターゲットがメディアに触れることがなく、さらに言葉すら通じない相手だったら、いったいどうすればいいのでしょうか?

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※以下、全ての画像出典元:https://vimeo.com/117367576

移民専用の診療所、どうやって存在を伝える?

デンマークの赤十字が直面したのも、このような難しい課題でした。

ヨーロッパのほかの国々と同じように、デンマークには正規の滞在許可証を持っていない、不法滞在の移民が数多くいます。しかし、彼らのほとんどは強制送還を恐れて、病気になっても一般の医療機関を受診することがありません

デンマークの赤十字はこうした人々に向けて、無料で、しかも匿名で受診できる診療所を開設しましたが、いかにしてその存在を知らせるかという課題がありました。

知らせると一言に言っても、そこには大きな問題があります。ターゲットはデンマーク以外の国から来た移住者。ほとんどはデンマーク語が堪能ではなく、話す言葉はそれぞれ異なります。英語を話す人もいれば、ルーマニア語やアラビア語が母国語の人もいます。さらに言えば、彼らのほとんどは新聞やインターネットといった一般的なメディアを見ることがないのです。

言葉が通じない、さらに伝える方法もない。普通ならさじを投げてしまいそうな状況ですが、デンマークの赤十字はスマートな方法でこの問題に立ち向かいました

共通するメディアは、なんと空き缶!

この難しい課題に対して、デンマークの赤十字が出した答えは「CANpaign」というキャンペーンでした。その名の通り、空き缶を利用したキャンペーンです。

さまざまな国から来た移住者は、言葉も文化も習慣も異なっていますが、唯一共通していることがありました。それは、ゴミ箱や路上から空き缶を集め、それを換金することで生活している人が多いということ。デンマークの赤十字は、ここに目を付けました。

キャンペーンの方法はいたってシンプルなもの。「診療所が開設された」ことをルーマニア語、ポーランド語、アラビア語、英語の4つの言語で知らせるステッカーを作成し、それを空き缶にはりつけます

あとはそれをコペンハーゲン市内のゴミ箱に入れたり、路上に置いたりしておくだけ。ステッカーには「詳しくは1919番までメッセージを送信してください」と書いてあり、ここにSMSを送信すると、自分の携帯電話に診療所の場所やサービスの詳細が書かれたメールが届くという仕組みです。

方法は単純ですが、この「CANpaign」は大きな成果を上げました。

通常、空き缶を拾い上げた移住者は、リサイクルマークがついているか(=換金できるか)を確認しますが、ステッカーはそのマークの周囲を取り囲むようにデザインされていました。

そのため、拾った缶をそのまま袋に入れてしまうことなく、ステッカーに目を止めさせることに成功したのです。

また、このキャンペーンはすべての移住者を対象としているわけではありません。無料かつ匿名で受診できる、という診療所の成り立ちを考えると、ターゲットは移住者の中でも貧困層をメインにするべきです。その点、このリーチ方法であれば、空き缶を拾って生計を立てなければならないほど生活に苦しむ移住者に、ピンポイントでメッセージが届けられると言えるでしょう。

効果的にリーチするためには、顧客のインサイトを探る

言葉も通じなければ、メディアを見ることもない。例えばそんなターゲットを相手にすることになっても、伝える手段は必ず存在します。それを探り当てるためには、ターゲット(顧客)がどのようなインサイトを持っているかを分析し、適切な方法でリーチすることが大切です。

ターゲットにどのようにリーチすべきか日々悩むマーケッターの皆さんにとって、今回ご紹介した事例が参考になれば幸いです。

◆キャンペーンの様子は動画でも紹介されているので、ぜひご覧ください。

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