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中韓ともに日本文化に興味なし、インバウンド国別対策

2016年04月12日 11時00分更新

記事提供:WPJ

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インバウンドが注目され、その著しい経済効果に注目が集まった2015年を経た今。その効果が継続的に地方や企業に恩恵をもたらすように成長するか、はたまた一過的なものになってしまうか、この1〜2年が勝負の年になるでしょう。

現在、無差別にターゲティングしているインバウンド需要も、そろそろカスタマイズに向けて仕様替えの時期が来ているのではないかと個人的には思います。日本旅行に関するニーズに幅広く応え、ツアー向け個人向けインバウンドアウトバウンドの四つの軸でマトリックスを描き、違う戦略を綿密に構築してビジネスが展開されることによって日本企業及び地方を成功に導くことが、真のグローバルインバウンドでしょう。

訪日観光客倍増計画

日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2015年1年間に日本を訪れた外国人客は過去最高の1973万人になったことが分かりました。

政府が2020年までの年間2000万人の目標がほぼ達成できたことから、先月30日、官邸で開いた「観光ビジョン構想会議」において、訪日観光客数を2020年に4000万人、訪日客の消費額を8兆円まで引き上げる新たな目標が発表されました。

訪日外国人増加の原動力 中国と新興アジア諸国

近年、訪日外国人数の伸びは著しく、その原動力になったのが中国からの観光客の激増です。

2015年の中国からの訪日客は499万人と前の年の240万人から倍増し、2014年のトップだった台湾の367万人を大きく抜いて初めてトップに躍り出ました。

日本から見たらすごい数に思えるますが、これはほんの氷山の一角に過ぎません。

中国の観光局に当たる「中国国家旅游局」が今年1月に発表したデータによると、2015年海外に旅行した中国人の数は1.2億人に上り、日本の総人口に相当する人数です(参考までに、2015年中国の推測総人口はおおよそ13.7億人ほど)。海外旅行者の4%ほどしか日本を選び、旅行に来ていない計算になります。

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World Population Prospects, the 2015 Revision(世界人口の見通し、2015年改訂版)

引き続き「中国国家旅游局」の統計によると、昨年、中国人に一番選ばれた旅行先は韓国でしたが、日本のトイレの便座が社会的話題になったほど、2015年は日本旅行が爆発的な人気を博し、初めての海外旅行先トップ3に東京が選ばれるほどになりました。

その中で、旅行社が主催するツアー参加による海外旅行者数は35%ほど増加しましたが、海外旅行者トータル比で見ると2.5%しか増加していません。ここから見て分かるように1.2億人の3分の2の8000万人は、ツアーではなく個人旅行で海外旅行を楽しんでいることが分かります。銀座や京都の観光名所に横付けされているバスの数をみるとそう思えませんが、これが数字から分かる直近1年の中国の現状です。

2007年以降、年によって1、2、3位が入れ替わることはありますが、中国、韓国、台湾がずっと訪日外国人数の1位~3位を占めていて、日本のインバウンド産業にとって最も重要な相手国となっていることが分かります。その他アメリカからの観光客が初めて年間100万人を超えたほか、東南アジア6カ国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)からの旅行者が合計で200万人を超えたこともインバウンド施策を考える上で重要なポイントとなってきます。

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日本政府観光局(JNTO)「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2016年)」より

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日本政府観光局(JNTO)「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2016年)」より

2015年の年間流行語大賞「爆買い」 円安で観光客が激増

中国人観光客による大量消費、いわゆる「爆買い」は日本経済を下支えするまでに急拡大しています。その中国の先行モデルとされるのは主に香港と台湾です。

中国人の生活レベルが上昇するにつれ、香港人や台湾人が好むものを好きになる傾向があります。特にライフスタイルは香港人、日本に関しては台湾人が中国人の先行モデルになっていると言えます。

これは、新興アジア国にも同じことです。タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピンには、多くの華僑が旅行業を牛耳っていて、華僑の旅行社が旅行プランを立てる時、意外と参考としているのが台湾の旅行業者や旅行客の口コミや旅行サイト、コミュニティー内の説明です。なぜなら、同じ言語(中国語)で分かりやすく、また、先駆者として多くの参考資料やノウハウが詰まっているからです。

近年、海外からの観光客が激増したのは言うまでもなく、円安による恩恵は大です。ドルに連動する通貨によって日本への旅行代金が3分の2ぐらいに下がり、さらに格安航空会社(LCC)の急速な普及によってアジア地域などからの旅行費用がさらに安くなりました。中国人による「爆買い」も円安によって、関税がかかっている中国国内での商品購入よりも、日本に行って買った方が安いという価格差が大きな動機になっています。

「中国国家旅游局」によると、中国海外旅行者の海外における消費市場規模は6841億元(おおよそ1.37兆円)に上り、その内、個人旅行による消費は80%を超えています。

地域分布で見ると、日本、韓国及び欧米諸国における1人あたりの支出が7000元(おおよそ14万円)を超え、同昨年と比較すると16%ほど増加したことが分かります。報告書の中では、旅行者の53.6%がお買い物を主な目的に据えていて、海外における消費金額の55.8%をお買い物に費やしていることも明らかになりました。

冗談のように聞こえますが、昨年1年間でロンドン、ヒースロー空港を訪れた中国人観光客は全旅行客の1%ほどであったにも関わらず、免税品売上額全体の25%に貢献したとのデータがあります。それほどお買い物が好きなのです。

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引用元:http://www.moodiereport.com/

また先日、取引先の中国クライアントが来日した際、昼食時に出た話題も始終お買い物でした。

一番面白かった相手からの質問が、日本人は中国人がこんなに押し寄せて商品を買っていくことに対して怖くはないのか、警戒しないのかと聞かれたことでした。彼らの目からすると、中国人がお買物や食事をした後の店内はイナゴが通りすぎた畑のように思えるから、日本に住んでいる人たちが困る、悪い印象を持っているのではないかと危惧しているのです。

2015年、訪日観光客による1年間の消費総額は3兆4700億円、同昨年と比較すると47.1%ほど成長しました。旅行者1人あたりの消費支出も16.5%増加し17万6168円になったことから、消費意欲が増大していることが分かります。

これは、中国に限らず、ベトナムなど新興アジア国からの貢献も大きいのです。

観光庁の「訪日外国人消費動向調査」報告書によると、アジアの中で第1位の中国、第2位のシンガポールに続き、ベトナムは第3位で「約17万5千円」を訪日中に消費。また、「買い物代」にかける金額も、アジア第1位中国、第2位香港に続き、ベトナムは第3位で「7万4554円」と無視できない存在になりつつあります。

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国土交通省観光庁【訪日外国人消費動向調査】平成27年(2015年)年間値(速報)

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国土交通省観光庁【訪日外国人消費動向調査】平成27年(2015年)年間値(速報)

国、地域によって異なる旅行目的 カスタマイズ対応の必要性

観光庁が1月にリリースしたデータを見ると、国や地域によって来日目的や来日中にしたいことが異なることが分かります。

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国土交通省観光庁【訪日外国人消費動向調査】平成27年(2015年)年間値を集計

観光客全体の平均で見ると、「日本食を食べる」と回答した旅行者が68.7%と最も高く、2番目の「ショッピング」が49.7%と続きます。また、「自然・景勝地観光」38.9%「繁華街の街歩き」34.7%に続き、「温泉入浴」「旅館宿泊」「日本の歴史、伝統文化体験」が多い結果となっています。その中で、「映画・アニメ縁の地を訪問」などいわゆる聖地訪問や「舞台、スポーツ鑑賞」などもあり、実に需要が多岐に渡っていることがうかがえます。

来日観光客のトップ3カ国、中国、韓国、台湾を国別に比較してみると、同じアジア圏でも、興味があるものが異なります。

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国土交通省観光庁【訪日外国人消費動向調査】平成27年(2015年)年間値を集計

来日観光客平均と比較すると、中国の特徴はやはり「ショッピング」が大きなウェイトを占め、加えて「温泉」「旅館」「自然・景勝地」にも興味があり、ショッピング以外にも観光を一通り楽しみたい旅行客が多いことが分かります。一方で「日本の歴史・伝統文化体験」「日本の現代文化体験」「美術館・博物館」は、平均と比べても特に低い傾向が見られ、日本文化に対する興味の低さがうかがえます。

次に韓国を見ると、韓国からの旅行客は2~3泊程度の短期訪問が多く、観光というよりは「日本食・お酒」への興味が比較的高い割合を占めています。中国同様、日本文化関係に対する興味の低さも特徴的である(「日本食・お酒」以外の全項目において、来日観光客の平均以下であることも興味深い発見です)。

台湾からの観光客の特徴は、「テーマパーク」「旅館に宿泊」に高い興味を示す傾向にあることです。これは、台湾に大きなテーマパークがないという点から由来しているのかもしれません。そして「ショッピング」、「自然・景勝地」、「温泉」、「自然体験」、「四季の体験」などにも興味を示す一方、トップ3カ国のなかで、唯一「日本の歴史・伝統文化体験」にも一定の興味を示している点は、中韓と異なります。

日本への観光客が多いタイを始めとした東南アジアからの訪日客も増加しています。他の地域と比べて特徴的なのは、「四季の体感(花見・紅葉・雪)」の人気が高いことです。熱帯地域にはない四季のうつろいを感じ、体感できることが日本の魅力なのです。「日本食」「ショッピング」などのほか、「日本の歴史・伝統文化体験」などにも高い興味を示しています。

では、アメリカやヨーロッパなど欧米諸国はどうでしょうか。中韓とは逆に、「日本の歴史・伝統文化体験」「日本の現代文化体験」「舞台鑑賞(歌舞伎・演劇・音楽など)」「美術館・博物館」など日本文化へ高い興味を示す一方、「ショッピング」への意欲は低めです。「食」は人気だが、あくまでも日本文化に触れることの延長線上で、旅の目的の1つとして選ばれる傾向にあるようです。

ここまでの国別・地域別の特徴をまとめてみると、以下のように言えるでしょう。

  • 国を選ばず最も人気の旅行目的は「日本食」
  • 「ショッピング」はアジア全域に特出した人気がある一方、欧米諸国の「ショッピング」への意欲は低め
  • 「日本の歴史・伝統文化体験」への人気が高いのは欧米・東南アジアで、中国、韓国、香港には不人気
  • タイを始めとする熱帯地域の東南アジアからは、「四季の体感(花見・紅葉・雪)」も人気が高い
  • アニメや漫画など「日本のポップカルチャー」への人気は、欧米諸国と東南アジアの比重が高い

旅の目的や楽しみは、アジア圏だけでも国によって異なります。
さらに、欧米諸国に地域が広がればより多様化します。

それらをを理解した上で、企業や地域、自治体が、それぞれ自社の商品、サービスに合った正しいターゲット設定をして初めて、プロモーション費用に見合った高いROI効果が得られる真のグローバルインバウンドと言えるのではないでしょうか。

今回はインバウンドマーケットにおけるターゲット設定の重要性について述べてきましたが、次の機会には海外における有効なプロモーション設計についてご紹介しようと思います。

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