今回は、ターゲットインサイトを刺激するアイデアを、より多くのターゲットに届けるためのコミュニケーションポイント設計についてです。
コミュニケーションポイントって何?
ここでいう、コミュニケーションポイントとは、生活者とアイデアの接点(生活者がアイデアに触れるポイント)を指します。
コミュニケーションポイントを設計するということは、生活者が起床してから就寝するまでの間(活動しているすべての時間)、どこで、どのタイミングで、どういったコミュニケーションをとれば、生活者にベストなカタチでアイデアを届けることができるかを考えることです。
生活者がコミュニケーションポイントでアイデアに触れたとき、生活者の「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激することができれば、彼らをハブとして、さらに多くのフォロワーに対してアイデアを届けることができます。
つまり、コミュニケーションポイント設計は、アイデアを考えることと同じくらい重要なフェーズであると言えます。
「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激するコミュニケーションポイントはある?
「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激することができるオールマイティなコミュニケーションポイントは存在するかと問われれば、その答えはノーです。ゼロとは言いませんが限りなくゼロに近いです。
しかし、本記事で解説する「IFC→S」構造を知ることで、生活者の「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激するためには、どのようなポイントをおさえておくべきかが分かるようになります。
では、「IFC→S」構造とは何か?
「IFC→S」構造とは、生活者の「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激するためにおさえておくべき3要素とシェアの関係を体系化したものです。
「IFC→S」構造というのは、勝手に名づけました。
「 IFC→S 」構造って何?
今回、生活者の「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを「IFC→S」構造を使って説明します。
「IFC→S」構造とは、IFCを構成する「1. I(Idea)と2. F(Freshness)と3. C(Curator/Craftsman)の3要素が掛け合わせるとS(Share)が発生する」ことを体系化したものです。1~3をおさえたコミュニケーションポイント設計でアイデアの拡散に期待できます。
また、「I」と「F」と「C」の3要素は、足し算ではなく掛け算の関係にあり、1~3のいずれかの要素が「0」になっている(なってしまった)場合、生活者の「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトは途端に刺激できなくなってしまいます。
IFCの「I」はIdeaの「I」です。ここでいうアイデアは、クライアント及びターゲットが抱える課題へのブリッジ(課題解決策)が存在しないアイデアではなく、クライアントが抱える課題の優先順位整理から、ターゲットイメージ設定、メインターゲット決定、ターゲットインサイト抽出をそれぞれクリアし、導き出されたものです。
つまり、クライアントが抱える最優先課題を解決するためにアプローチすべきメインターゲットのインサイトを刺激する(であろう)アイデア(ネタ・素材)を指します。
ターゲットイメージの設定方法やメインターゲットの決定、ターゲットインサイトの刺激方法について、過去に解説した記事があります。読んだことがない人は下記を参照してください。
IFCの「F」はFreshnessの「F」です。Freshnessは、言葉の意味通り、アイデアの情報鮮度を指します。
「情報は鮮度が命」といわれますが、アイデアにも同じことがいえます。どんなに1のアイデアがターゲットインサイトを刺激できていたとしても、リリースしてから時間が経てば経つほど、シェアに対するモチベーションは薄れていきます。
アイデアの鮮度レベルでいうと、アイデアリリースタイミングがアイデアに最も脂がのってるプリプリの状態で、「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激することができます。また、時間が経てば経つほど、今度は脂がほとんど落ちているカスカスの状態となり、今度は逆に「シェアしたくない!」インサイトを刺激してしまいます。
アイデアがリリースされてから、その情報を新鮮と感じることができるのはせいぜい1週間、早くて1日といったところではないでしょうか。
IFCの「C」はCuratorの「C」であり、Craftsmanの「C」です。
Curator/Craftsmanは、アイデア(ネタ・素材)を独自の視点でレビューし、アイデアに付加価値を見出すキュレーター、そしてアイデアを「思わず誰かにシェアしたくなる」カタチに仕立ててくれる職人を指します。では、職人とは具体的にどういった人か?
アルファブロガーやユーチューバーは? もちろん彼らは職人です。
アルファブロガーやユーチューバーのようにイノベーター(一部アーリーアダプター)に該当する「人」はもちろんのこと、思わず誰かにシェアしたくなる面白記事を仕立ててくれる「インターネットニュースメディア」も言うならば職人です。
アイデアをシェアするというアクションハードルの存在
なぜ職人をおさえておく必要があるのか? それは、
- 日常からあふれかえる、ありとあらゆる情報にアンテナを張り巡らしている人
- 情報の取捨選択が習慣化している人
- 日常的にシェアする行為にアクティブな人
- 興味関心を持ったモノ・コトは何でもシェアする人
といった人たち以外に該当するすべての人の心理背景に、アイデアをシェアするというアクションハードルがすごく高く位置づけられているからです。
シェアする理由(なぜこのネタをシェアする必要があるのか?)を考えてしまったり、シェアしたネタに対する周りの反応が気にしてしまったりなど、シェアを躊躇してしまう要因は人それぞれです。これらの課題をクリアにしない限り、届けたいアイデアがシェアされて広がっていくことはありません。
そんなとき力強いのが、職人の存在です。
アルファブロガーやユーチューバ―、インターネットニュースメディアは、シェアすることをハードルに感じてしまったり、その場その時の感情や偶然でシェアをするかどうかを決めている生活者(ターゲット)の、「シェアの反応も気にならない」、「思わず誰かにシェアしたい」というインサイトを刺激できるのです(※その理由は別の機会に説明します)。
また、職人がアイデアに付加価値を見出すことで、今までシェアすることに躊躇していた生活者のシェアしたくなるインサイトを刺激することができるだけでなく、アイデアリリース以降鮮度が落ちていたアイデアに付加価値分の鮮度がもたらされるのです。
つまり、IFCの「C」をおさえることで、IFCの「F」もあわせておさえることができるというわけです(「C」すげぇな)。
職人をコミュニケーションポイント設計でおさえておくべきメリット
職人をおさえるコミュニケーションポイント設計のメリットとして、「I」と「F」だけではアプローチできなかったアイデア未到達層(職人のフォロワー及びフォロワー周辺)へのアプローチに期待できます。
「C」をおさえたコミュニケーションポイント設計について考える場合、各職人による付加価値の見出し方の特徴を把握し、アイデアリリース以降、彼らを正しく配置していくことで、アイデアの鮮度は格段にキープされるでしょう。
また、職人によってアイデアに対する付加価値の見出し方が異なるということは、彼らを支持するフォロワー数、フォロワー属性、デモグラフィックデータも職人ごとに異なるということです。
職人が付加価値を見出した時、誰にアイデアが届けられるのか、職人のフォロワーは本来アプローチしたいターゲット(アクティブなリアクションをしてくれるタイプか?)と一致しているかをおさえたコミュニケーションポイント設計をしてください。
「IFC→S」構造をおさえたコミュニケーションポイント設計は生活者の「思わず誰かにシェアしたくなる」インサイトを刺激するための必勝法ではないですが、世の中で成功しているプロモーションは、コミュニケーションポイント設計において確実に「IFC→S」構造をおさえているように感じます。
今後、コミュニケーションポイント設計についてトライする機会があれば、是非この記事の「IFC→S」構造を参考にしてください。