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デジタル広告の未来はデータの可視化と世界基準にあり

2015年08月04日 14時04分更新

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7月16日、デジタルを活用したマーケティングやプロモーション施策を表彰する「コードアワード2015」贈賞式が開催されました。今回は、グランプリに輝いた施策の制作チーム、そして各部門受賞者とアワード審査員による、2つのパネルディスカッションをレポートします。

グランプリ作品は「ヤフー トレンドコースター」

コードアワード」は、モバイル広告大賞を継承する形で昨年よりリニューアルされた、デジタル・マーケティングやプロモーション施策の好例が表彰されるアワードです。多角的な成果が伴った施策に贈られる「イフェクティブ」、革新的な手法を用いた施策に贈られる「イノベーション」など、全5部門および、最も優れた作品であるグランプリ、そして一般投票で決まるパブリックベストが用意されています。今年は全123点の応募作品から、全13チームが選出されました。

※受賞作品詳細は、こちらからご覧ください。

今年のグランプリは「ヤフー トレンドコースター」が受賞。同社のリアルタイム検索によって収集されたデータの波形をもと生成されたコースを、ジェットコースターで楽しめるというもの。トレンドの動向が体感できるSNS連動型バーチャルジェットコースターです。

同アワードの審査員長を務めるPARTYの伊藤直樹氏は、「施策のあらゆるプロセスにイノベーションがあった」と総評しています。

コードアワード2015では贈賞式に加え、「ヤフー トレンドコースター」制作チームによるパネルディスカッション「データの可視化からデータの体験化への挑戦」と、審査員や受賞企業によるパネルディスカッション「グローバルで考える日本発デジタル広告」が用意されました。今回は、2つのパネルディスカッションをレポートします。

「少し先の未来」をつくる、ヤフーが挑んだデータの体験化

1つ目のセッションでは、グランプリ作品「ヤフー トレンドコースター」の制作チームから、ヤフーの那須岳志氏、博報堂ケトルの橋田和明氏、dot by dotの富永勇亮氏が登壇。施策と狙いを振り返りました。

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左から、ヤフー株式会社 那須氏、株式会社博報堂ケトル 橋田氏、  dot by dot inc. 富永氏

那須:ヤフーが目指す方向性は“ビッグデータカンパニー”です。そうである以上、データの未来を示す必要があるのではないかと考えています。そこで活用したのが、リアルタイム検索です。検索ワードについてSNS投稿にフォーカスしたもので、そのワードが今どれだけ話題になっているか、波線グラフで見ることができます。

橋田:このデータ、つまり話題性によって乱高下する波形は、まさにジェットコースターのコースそのものです。ネットから得たデータを“体感する”ことができるはずだと考えました。

富永:バーチャルアトラクションなら、波形と連動した動きが可能です。コースはリアルタイム検索から生成されるものなので、乗車前に利用者が検索したワードに話題性があるならスリリングに、なければ平坦になるんです。
この要素はテレビ番組に取り上げていただく際にも役立ちました。例えば、ブレーク前の若手芸人さんの名前だと平坦。ちょっとお寒いコースになるわけです。話題を広げる“つかみ”になりました。トレンドコースターはwebサービスなどと異なり、ハードが必要なアトラクションです。だから、直接体験できない人にいかにプロジェクトを伝えるかも重要でした。プロジェクトの伝播を考えると、非常に強みになったのではないかと思います。

橋田:単にアトラクションの動きでデータを体感できるだけでなく、乗る人が選ぶワードによって動きが変わる。トレンドセンスが問われるところも、データを活用したアトラクションの面白さなんですよね。

富永:データの波をより強く実感できるよう、ジェットコースターの役目をするシミュレーターは、国産よりも前後左右の動きが大きく、最大30度の角度がつくチェコ産のものを選んでいます。さらにヘッドマウンテンディスプレイに、動きと完全に連動したコースを映し出すことで視覚からの体感を提供できるようにしました。
もっとフィジカルで実感できる要素もプラスしたいと考え、工業用ダクトによる風、バラエティ番組でよく見られる炭酸ガスを、スプラッシュとして加えました。生成されたコースの中で最高速度が出る部分で風が、最も角度が付くときにスプラッシュが発生するようになっています。

那須:結果、データを活用した、新たな形が生み出せたのではないかと思います。ヤフーでは国内におけるネット検索を一般化させ、“普通化”させてきました。またニュース配信により、ユーザーがネットを通して出来事を知るという行為を“普通化”できたように、今回の施策も、そのきっかけになれればと。

橋田:昨年、このアワードで「ベスト・ユーズ・オブ・メディア」をいただいた「さわれる検索」も同じチームで臨みました。実はこのプロジェクトはまだ進行していて、3D教材として活用できないかと取り組んでいます。つまり、このまま教育の未来を変える可能性を秘めている。ヤフーさんとの取り組みは、まさに「いずれ普通になっていくんじゃないか?」という、きっかけづくりなんです。

那須:これまでヤフーがしてきたことは、ちょっと先の未来を“普通化”することだと考えます。SFチックではなく、日常の延長線上にあるような未来です。収集したデータを分析し、可視化するところまでは、すでに珍しいことではなくなりました。
今回はさらに一歩踏み出して、“データの可視化からデータの体験化”に挑みました。どこか、無機質で冷たいイメージのあるデータを触れたり、感情を乗せたりできるものにしたわけです。これからも“普通の未来探し”を続けていけたらと思います。

イノベーションを起こすには「自ら挑む姿勢」が重要

続いてのパネルディスカッションでは、「グッド・キャンペーン」を受賞したニュージーランド航空の広報部長を務める矢我崎陽子氏、「ベスト・イフェクティブ」を受賞したベリグリから代表取締役の達中靖之氏審査員を務めた佐藤カズー氏が登壇。モデレーターで審査員長の伊藤直樹氏と共に「グローバルで考える日本発デジタル広告」をテーマに、意見が交わされました。

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左から、PARTY 伊藤氏、株式会社TBWA HAKUHODO 佐藤氏、株式会社ベリグリ 達中氏、ニュージーランド航空 矢我崎氏

伊藤:まず「ニュージーランド専用休暇申請書」という、斬新な施策をされたニュージーランド航空さんですが、実は会社自体が、非常にイノベーティブなんですよね。

矢我崎:象徴的なのが機内安全ビデオです。2009年に「Nothing to Hide」と題して、クルー全員が裸にボディペインティングで登場するビデオを公開して以来、毎年、ユニークな映像を制作しています。ですが、今回は日本オリジナルの施策だったため、「休暇が取りにくい」という点が外国人の上司に理解されませんでした。しかし「休暇が取れないから旅行に行けない」という発想の面白さに確信があったので、頑張って説得しました。

伊藤:結果、受け入れられた。そこに、会社に綿々と受け継がれてきた哲学のようなものを感じます。一方、ベリグリの達中さんはディーゼル出身です。ディーゼルと言えば、ものすごく挑戦的な広告で、世界を席巻するブランドですね。現在でも影響を受けている部分はあるのでしょうか?

達中:僕の考える理想のプロモーションは、デザイナーやモデルではなく、まずプロダクトが前に立つこと。これを最もクリエイティブに表現しているのがディーゼルなんです。

佐藤:お2人ともチャレンジャーなんですよね。私は会社からイノベーティブなものを引き出す立場ですが、大事なのは自ら挑む姿勢だと思っています。例えば、アップル社のリー・クロウというクリエイティブディレクター。彼はプレゼンをするアイデアがなくとも毎週水曜に1時間、ジョブズとミーティングをしていたそうです。すると会社からのブリーフを待たずとも、どんどん提案ができる。発注されたものを受けるのではなく、自発的な提案をすることで、本当の意味でのパートナー関係が築けていくのだと思います。

鍵は世界基準で考えつつ、日本でも必ず機能すること

伊藤グローバル展開にチャレンジすることを前提に制作されたという、ベリグリさんの「TRUE LOVE TESTER」ですが、これは本当に海外でバズりましたね。

達中:実施した2014年が、会社設立10周年だったんです。この節目を新たな展開、海外進出に注力していく、キックオフの年にしようと考えました。しかし、今すぐ、自分たちが臨むような展開をするのは難しい。ならばネットによってマーケットがワンワールドになりつつある中、自分たちの色をしっかり表現できたプロダクトを世界に発信して、興味を持ってくれた人を引き込む流れも、面白いのではないかと。

伊藤:話題となるプロダクトをつくって、世界に進出する。その設定が、そもそもの勝因とさえ思えてきますね。しかもプロダクトに重きを置くという点が、「プロダクトを前面に出す」というディーゼルから受け継ぐ哲学と一致する。やはりお2人の根底に息づくフィロソフィーを感じます。ニュージーランド航空さんは海外から日本へ、ベリグリさんは日本から海外へと、正反対の立場なんですよね。

矢我崎:私のように一支社の人間としては、日本発信によって世界に嵐を巻き起こすことができるのは、うらやましい限りです。けれど日本支社の面白い施策が海外の同僚に評価され、逆輸入されて世界的なキャンペーンになる可能性もあると、今回感じました。そう思えたからには世界を巻き込むくらいの勢いで、やっていきたいと思います。

達中:今回の施策をして正直に感じたことは、どの国でも日本と同じプロモーション展開をしたい、ということです。けれど、日本にインサイトした施策を行うニュージーランド航空さんのお話を聞いて、ヒントを得た気がします。というのも、僕らのブランドは「セクシー」がキーワードです。でも、日本人のセクシーと中国人のセクシーは微妙に違う。それぞれの地域のセクシーを、僕らなりの解釈で表現することがリアルなんじゃないかと。

佐藤:どんな立場や方向性であっても、ビジネスを動かすのは、やっぱりアイデアと質なんです。ネットのおかげで質のいいアイデアさえあれば、今年のカンヌで評価された「アイス バケット チャレンジ」のように、一瞬で国境を越えられる。そうなった今、何ごとも世界基準で考えることが重要だと考えます。けれど、同時に絶対に日本でワークする必要もあります。針の穴を通すような作業ですが、そこにデジタル広告の未来があるのではないでしょうか。

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