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業務を変えるkintoneユーザー事例 第7回

kintone hive nagoyaで聞いたゲオホールディングスのkintone活用

あるアルバイトの女子、全国の店舗を管理するkintoneアプリを作る

2017年05月15日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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4月14日に名古屋市内で開催された「kintone hive nagoya」では、中京圏の会社のkintone事例とノウハウが共有された。登壇したゲオホールディングスの大西智子氏は、Excel+メール添付からの脱却というkintone導入の黄金パターンで、全国の店舗情報を1つにまとめた事例を披露した。

アルバイト時代にkintoneと出会い、今や社内のkintoneを切り盛り

 ゲオホールディングスは、1800以上の店舗を国内で展開するメディアレンタル事業の大手。CD・DVDなどのレンタルを行なっている「ゲオ」を筆頭に、家具や家電、日用品、衣類などのリユースを手がける「セカンドストリート」、携帯電話の販売を手がける「GEOmobile」、アミューズメント施設の「ウェアハウス」などの事業をリアル店舗とオンラインで展開している。IT面ではAWSやAzure、kintoneなどパブリッククラウドへの利用を積極的に推進しており、DataSpider Servistaでデータ連携を行なっている。

 今回登壇した大西氏は2015年12月、ゲオホールディングスにアルバイトとして入社。特にプログラムのスキルがあったわけではなかったが、ここでkintoneに出会い、初めてアプリの作成を手がけることになる。しかし、その後スキルを身につけた大西氏は、kintoneの資格であるkintone universityのスペシャリスト・デベロッパー編まで修了。2016年12月に正社員としてゲオホールディングスに改めて入社し、現在は分析部 マスタ課で社内のkintone運用全般とアプリ作成を担当している。まさにkintoneとともに成長してきた2年間と言えるだろう。

ゲオホールディングス 分析部マスタ課の大西智子氏

 現在、大西氏が扱っているのは、ゲオのWebサイトであるゲオオンラインの店舗情報だ。大西氏が担当したのは、これらの店舗情報の登録や更新を自動化するkintoneアプリの開発。この背景にはどの会社でもあった、Excelとメール添付によるワークフローの課題があった。

Excelとメール添付というどこにでもあるフローに潜む課題感

 店舗情報には所在地や連絡先、営業時間、定休日、取り扱い商材などが含まれており、全国7つのエリアに分けて管理している。これまで、ゲオホールディングスの店舗情報は、まずエリアスタッフがExcelの申請書に記入を行ないメールに添付して本部スタッフに送信。受け取った本部スタッフは申請書を確認し、サーバーに登録し、一般公開されるという流れだった。

今までの店舗情報の扱い方

 申請書をメールに添付し、その内容をWebサイトに登録するというどの会社にもある手続き。なんら問題ないように思われるが、実際にはいくつかの課題があった。たとえば、エリアスタッフが送信した申請書の見落とし。「エリアスタッフが7名おりますが、1人で数百店舗を管理しております。そのため、1度に複数の申請書が来ることも多く、登録済みと未登録の申請書が一目でわからなかったので、本部スタッフも大変困っておりました」(大西さん)とのことだ。

 また、新しい申請書フォーマットが浸透するのに時間がかかったり、情報共有に時間がかかるといった課題もあった。「店舗情報はさまざまなスタッフが知りたい情報でもあります。ほかのスタッフから最新の店舗情報を求められた場合、本部スタッフは申請書を探し出して、送信する必要がありました」(大西さん)。複数のスタッフから対応を求められた場合は、本部スタッフの手間になっていた。

 こうした課題を解決するために作られたのが、kintoneの「出店・閉店・リニューアル申請書アプリ」になる。約半年前、ゲオホールディングスの情報システム部では、3つの課題をkintoneでどのように解決できるかを議論。まず申請書の見落としに関してはプロセス管理で整理可能。また、申請書のフォーマットの浸透に時間がかかるというのも、アプリの設定ですべてのレコードに反映できるので問題なし。情報共有に関しては、もちろんクラウドなので、さまざまなスタッフが適切な権限の元、いつでも、どこでも確認できる。

問題点のまとめ

検索やルックアップを活用し、とことん入力を省力化

 ゲオと沖縄のクラウドインテグレーターであるレキサスが共同開発した出店・閉店・リニューアル申請書アプリでは、まずアプリから申請書に情報を入力すると、本部スタッフによる確認の後、サーバーに登録が行なわれる。サーバーに登録された店舗情報はアプレッソのDataSpider Servistaを介して、kintoneの店舗マスタに反映され、他のスタッフも参照できるようになる。申請書からサーバーへの登録、情報の参照まで1つのサークルを描くようになっているのが大きな特徴だ。

kintoneによって改善された店舗情報の流れ

 アプリの使い勝手にも配慮されている。たとえば(Hiveでも配布された)検索プラグインを活用することで、店舗名で検索して指定の申請書を呼び出せるようになっている。今まで申請書はエリアスタッフが管理しており、ファイルサーバーにエリアごとのフォルダを作って保存していた。そのため、「申請書を探すのに、まずはフォルダを探し、その後に最新のモノを探さなければならず、とても時間がかかっておりました」(大西さん)という。しかし、検索を導入することで申請書をすぐに探すことが可能になったという。

 また、ルックアップを活用することで、コードを入力すると、それに紐付く名称が自動的に入力されるようになっている。さらにメールを使わないので、宛先の入力不要で、ワンクリックで送信可能。申請を受けた本部スタッフも自分が対応しなければならないレコードが一目でわかるようになり、スムースに作業にとりかかれるようになったという。

ルックアップの活用で簡単入力

 アプリの導入後、スタッフに話を聞いたところ、「各店舗の進捗状況が確認しやすくなった」「メールを追う必要がなくなり作業時間が短縮できた」「遠方とのスタッフとのやりとりがしやすくなった」といった声が上がり、好評を博しているという。作業時間もエリアスタッフで10分、本部スタッフで20分の削減。月に換算するとエリアスタッフで200分、本部スタッフで400分の削減となり、まさにkintoneの交通広告で謳っているとおり、業務時間の短縮を実現している。

kintoneによって業務時間の短縮できたんじゃない?

kintoneアプリで一連の作業を自動化を推進

 現在では出店・閉店・リニューアル申請書アプリの店舗情報を活かせるよう、物件管理や店舗設備のkintoneアプリも新たに作成。本部スタッフが申請された店舗情報を登録するとともに、物件管理や店舗設備の情報も更新されるようになっている。ただ、現状はサーバーへの登録作業だけは本部スタッフが手動で行なっているので、今後はこの作業を自動化していきたいとのこと。大西さんは、「今回、kintoneで全国の店舗情報が1つにまとめられたのが、一番大きな点でございます。これによって、各スタッフが自分の見たいときに最新の店舗情報を見られるようになりました」とまとめる。

 現在、ゲオでのkintoneユーザー数は300まで膨らみ、アプリ数も100個を超えてきたという。物腰柔らかな大西氏のところには数多くの要望が寄せられているとのことだが、大西氏は「要望が出るのはユーザーさんがkintoneをきちんと使ってくれていて、こうしてほしいという思いがあるから出てくるものです。みなさんが求めてくれることがうれしいです」と語る。プログラマーとはほど遠い経歴だったが、プラグインやCybozu Developer NetworksのTIPSを活用し、日々使い勝手の改善に務めているという。

「もともとプログラマーだったんですか?」というサイボウズの伊佐政隆氏の質問にも丁寧に答える大西氏

 セッションを通し、柔らかい口調で、ゆっくり丁寧に事例を説明してきた大西氏。「kintoneのよさが徐々に弊社の中にも伝わっている状態ですので、今後はもっとアプリ数を増やして、さらにスタッフの業務改善を進めていきたいと思います」と抱負を語り、壇上を降りた。

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