kintone hive nagoyaで聞いた珠玉の現場主導型ITの事例レポート
脱Excelを目指すエイチーム、「私にもできた!」の感動が業務を変えた
2017年04月20日 09時00分更新
4月14日、サイボウズは名古屋で初となる「kintone hive nagoya」を開催した。ユーザー事例で登壇したエイチームは、Excel・CSVのオンパレードだった業務の改善をkintoneで実現。同社の矢島卓氏が、現場部門が手を動かした事例の背景を赤裸々に語った。
初の名古屋開催となったkintone hiveであふれる本音とノウハウ
kintone hiveはサイボウズが主催するユーザーイベントで、ユーザーや開発者が自身の利用法やアイデアを共有するというコンセプトで行なわれている。2015年の開始以来、これまで東京、大阪、上海などで開催されてきたが、今回初めて名古屋と福岡でも開催。名古屋の会場も参加者でいっぱいとなった。
冒頭、登壇したkintoneプロダクトマネージャー 伊佐政隆氏は、ドラッグ&ドロップでアプリが作れる点、API経由で拡張できる点などをkintoneの特徴として説明。2017年3月時点のユーザーは6000を越え、作られたアプリの総数は34万にのぼる。「毎日毎日880以上のアプリができている計算になる」と伊佐氏はアピールした。

サイボウズ kintoneプロダクトマネージャー 伊佐政隆氏
「自身の利用法やアイデアを共有する」というコンセプトを実現すべく、kintone hiveでは20分程度のユーザー事例とkintone hackというLTを織り交ぜる形式でイベントが進行する。さまざまな切り口でセッションが展開されるため、IT部門や販売パートナーのみならず、現場部門や開発者も満足できるという趣向だ。今回も20分のユーザー事例×2本と5分のLT×2本を休憩を挟んで2セット行なうという形でイベントが進んだ。
複数の業務システムと氾濫するExcelが重荷だったエイチーム
ユーザー事例の紹介ということで登壇したのが、名古屋に本社を置くIT企業であるエイチームの矢島卓氏だ。矢島氏は、Excelだらけだった業務の改善をkintoneで実現した例を披露した。

エイチーム 管理部 アシスタントマネージャーの矢島卓氏
2000年に創業されたエイチーム(Ateam)は、エンタテインメントやライフスタイルサポート、ECなどの事業を手がけている。矢島氏が所属するエイチームの管理部は、事業部門とグループ5社の基幹系業務を担当しているが、事業規模が急速に拡大したことで、基幹系業務が急増。しかも、経理、総務、労務、人事、法務など異なる業務パッケージを利用しており、管理部門も職能単位のグループがそれぞれの業務パッケージを個別に運用していた。こうした課題に対し、管理部内で横断的に基幹系業務の効率化を進めることになったのが矢島氏の役割。「もともと私もプログラマーだったが、自分で作ってしまうと運用が回らなくなる。だから、基本的には自分が作ったら負けだと思っている」(矢島氏)。
マスターデータの不在も大きな課題だった。導入前のエイチームでは、異なる業務パッケージから生成されるExcelファイルが結果的にマスタデータの役割を果たしていた。安定・確立したマスターデータが存在していないため、複数のシステムに手作業でデータを登録する必要があり、これが大きな負担となっていたという。「業務システムは入れているけど、日常業務を穴埋めするためのツールは全部Excel。こういう会社は多いと思いますが、弊社もまさにそういう実態でした」と矢島氏は吐露する。こうした中、選択肢として挙がってきたのがkintoneだった。

kintoneに至るまでの3つの課題
kintoneをデータハブにしたバックエンドの業務改善
矢島氏が挙げたkintoneの魅力は、「信頼性の高いWebデータベースを低コストで利用できる」「APIが充実しているおり、データ連携で自動化がやりやすい」「洗練された画面とJavaScriptの拡張」の3つ。特にかゆいところに手が届くカスタマイズ性は導入の大きな背景だったという。
エイチームの管理部が手がけたkintoneによる業務改善は、大きくバックエンドとフロントエンドの2つに分けられる。
矢島氏が主導したバックエンドの業務改善では、kintoneをシステム連携のデータベースとして活用し、業務システムのデータ同期を実現した。ここでのポイントは、あくまでシンプルなデータベースとしてkintoneを利用すること。「アプリにはデータの加工やプロセス管理などの業務的な役割は持たせない。あくまで複数システムのデータハブとしての役割に徹してもらうことにした」(矢島氏)。
連携用のkintoneによって、自身をマスターデータとして他の業務システムに反映したり、業務システム側で更新が発生したら、kintoneを中継して他のシステムに反映させる仕組みを持たせ、データの同期が可能になる。
たとえば、新しいコードが発行される場合、今まではメールで担当者に通知し、担当者が自ら業務システムにエントリを行なっていたが、導入後はkintoneに新しいコードを入力すれば、自作のバッチを介して、各業務システムに自動的にデータがエントリされるようになった。また、最近サポートされたWebhook機能を用いることで、AWSのAPI GetewayとLambdaを経由してChatWorkに更新情報を流し、レコードの更新をユーザーに通知できるようにした。

バックエンドでの業務改善ではkintoneをシンプルなDBとして利用する

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