業務を変えるkintoneユーザー事例 第206回
秘訣は熱く暑苦しいkintone説明会 山口さんの右腕はこうして守られた
グッズまとった「kintoneのひと」作戦で社内浸透 3年で変わった声優事務所
2023年10月20日 09時00分更新
kintoneのユーザー事例を共有しあうイベント「kintone hive tokyo 2023」の6番手として、声優事務所プロダクション・エースの鹿野内春奈氏が登壇した。同氏のセッション「どうしようからはじまって3年間でめっちゃいろんなことが変わったはなし」のレポートを紹介する。
アナログな声優事務所はコミュニティのおかげで徐々にIT化
プロダクション・エースは、東京の恵比寿にある今年で15周年を迎える声優事務所。主な業務はタレントのマネジメントで、声優の養成所やナレーションを収録をするスタジオの運営など、音声に関わるさまざまな事業を手掛けている。そして登壇した鹿野内氏は事業部門で仕事をしながら、情シスも担当する。
従来の事務所は、「舞い散る紙の山」「乱れ飛ぶ鉛筆の削りカス」「飛び散る消しゴムカス」といったまさにアナログな状態だった。メールとExcel間でコピペを繰り返し、時には3つのExcelに同じデータをコピペすることもあり、データ入力に丸一日かかっていたという。そして、オンプレサーバーに入っているファイルは、どれが最新なのかわからない、と悲鳴をあげていた。そんな中、3年前に新型コロナウイルス対策のため、ITを見直すことになった。
こんな状況でテレワークができるわけがないと思ったものの、唯一の救いが2019年にサイボウズOfficeを導入していたことだった。情報共有の有用性を実感していたので、テレワークにも情報共有が必要だと考え、kintoneを導入することになった。
とは言え、kintoneも最初はただの箱。しかし、鹿野内氏はその後、獅子奮迅の活躍を見せる。紙ベースで管理していた台帳をシステム化、全員のデスクトップパソコンを全台ノートパソコンにリプレース、チャットツール&ウェブミーティングツールの導入などを次々と実現した。IT素人の鹿野内氏がここまでの結果を出せたのは、コーポレートエンジニアコミュニティ、通称「情シスslack」に出会ったからだ。
「全国の情シスさんが集まる大きなコミュニティです。このコミュニティには知恵や知識、なによりユーモアが溢れていました。驚いたのは、会社や年齢、キャリア関係なく助け合う場所だったことです。アイコンは知っているけれど、顔も名前も知らない皆さんの力をお借りして、社内のIT化は進んでいきました。それでもkintoneはまだまだ空っぽ。kintoneはどうしたらいいんだろうと思っていました」(鹿野内氏)
サイボウズデイズから火が付き請求書管理の仕組作りへ
そんな時、サイボウズデイズ2020の案内を見かけ、「kintoneが何かわかるかも」と参加してみた。同じ悩みを抱えていた好奇心旺盛な上司と、請求書作成でコピペのしすぎで右腕が腱鞘炎寸前だった山口さんも誘った。
多数のセッションに参加し、ブースを訪れた3人は「kintoneだったら課題に感じていることを解決できるかもしれない」と希望を持つようになった。くすぶっていたやる気に火が付いた鹿野内氏は、まず請求書管理の仕組作りに取り組んだ。
それまでは、紙台帳から売上伝票を起票し、金額が確定していないものは金額を確定し、Excelの売上台帳に入力。請求書発行のExcelに転記して、請求書と宛名ラベルを印刷、封入して発送するという長い工程を踏んでおり、丸7日間以上かかっていた。しかも請求書は毎月200枚程度処理しており、大きなボトルネックになっていた。
「Excelに無理をさせていたところをkintoneに置き換えました。CSVから直接kintoneにデータを読み込み、金額が確定していない案件については一覧にして担当者別にメールを送ります。そして、請求書の発行は「krewData」(グレープシティ)でデータを集計、「プリントクリエイター」(トヨクモ)でまとめてPDF出力しました。そのおかげで、丸1日程度で作業が終わるようになりました。そして何よりクリック数が激減し、山口さんの右腕が守られました」(鹿野内氏)
鹿野内氏と山口氏は喜んだのだものの、社内の反応はとても薄かった。総務経理部の中だけで業務改善しても、他の部署からは見えなかったためだ。そこで鹿野内氏はkintoneを広めるための作戦を実行する。

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