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業務を変えるkintoneユーザー事例 第200回

檜垣造船が踏んだ「強制kintone」「共有kintone」のステップ

紙と鉛筆があれば船は造れる! そんな超アナログ企業をペーパーレス化

2023年09月22日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 「kintone hive matsuyama 2023」のラスト、5組目として登壇したのは、檜垣造船 経営管理部の吉井美佳氏、喜多椋平氏の2人。DX以前の問題が山積する、超アナログ企業だった檜垣造船。2人は同社のkintone導入前後の変化について講演した。

営業報告書はプリントアウトして11人の上司に回覧

 檜垣造船は日本最大の海事都市である愛媛県今治市に本社を置く、創業72年目の造船会社。主に近海貨物船を開発、建造している。社員数は108名。これまでにLNG貨物船、ケミカルタンカーなど700隻以上を建造している。

 吉井氏、喜多氏の2人とも、IT経験はゼロ。特に喜多氏は、はっきり「ITは嫌い」というほど苦手意識があった。

 今でこそDXを積極的に推進している同社だが、5年前に吉井氏が入社したころは、社内を紙が飛び交う「超アナログ企業」だった。「社内は書類やファイルがあふれかえる、昭和感満載の会社で、入社したときに非常に驚いた」(吉井氏)
 

檜垣造船 経営管理部の吉井美佳氏

 まずPCが社員全員に支給されておらず、一部の社員が個人的に使っているため、情報も共有されていなかった。さらに、そのPCに入っている情報を共有しようとしても、対応するツールもなかったという。

 そのころ営業部の仕事を総務課の立場で見ていた喜多氏も、当時の仕事の不便さを振り返る。「営業担当者は、商談の現場で紙にメモをとり、それを会社に戻ってからPCに打ち込む。それをプリントアウトして、11人の上司に回覧して押印してもらう。回覧後の文書はファイルに綴じて保管する。その行程に2週間もかかっていた」(喜多氏)

 吉井氏も、驚いたことがあった。当時の資材部では、Excelのプリントアウトを切り貼りして、FAXで取引先に送っていた。「なぜそんなことをしているの?」と吉井氏が担当者に聞いてみると、「このやり方が一番速い。変えるのは手間が増える」という答えだった。

「造船所の仕事は紙なしではできない。図面は紙だ。PCがなくても、紙と鉛筆があれば船は造れるんじゃ!」と喜多氏は言われたことがある。同社が抱えていた「紙文化」の根は、非常に深いものだった。

檜垣造船 経営管理部の喜多椋平氏

 この社内の状況に一石を投じようと活動を開始した社員がいた。当時東京事務所に在籍し、後に同社のDX担当取締役になる林由紀子氏である。スーパーゼネコンでの勤務経験があった林氏は、アナログから離れられない会社に異議を唱え、イントラネットの導入を会社に提案した。そこに、産休から復帰した吉井氏が合流し、2人でタッグを組んで説得を開始した。

 そんなとき転機が訪れる。同社では2018年に経営者が交代し、世代が一気に若返った。これにより、IT化が進められるかもしれないという期待が高まったのだ。

 このタイミングで何かをしなければいけないと思っていた林氏と吉井氏は、ちょうど、サイボウズのセミナーを受講してkintoneと出会う。「これはいい」という感触を得た吉井氏は、早速kintoneでイントラネットを構築することを企画した。「導入自体は非常に簡単にできることがわかっていた」と吉井氏は話す。

kintoneの導入で簡単にイントラネットは構築できたが、社内に浸透させることに苦労することに

業務で強制的にkintoneを使わせる仕掛けを作る

 だが、社内からはkintoneに対する不満が続出した。「なぜ今のままではいけないのか」「勝手に変えられても困る」「今でも業務はうまくいっている」などの声が、経営管理部に殺到した。

 そこで経営管理部では対策を立て、手順を踏んで理解を得ることに力を入れた。「2018年5月から導入を開始したが、全社展開には約1年間を要した。非常にアナログだった当社の状況に合わせて、丁寧に導入していった」(吉井氏)

 同時に、檜垣造船独自のkintoneマニュアルを作成して配布したり、ブラウザ設定の変更を1台ずつ進めていった。独自マニュアルは、なんと100冊以上も作成した。

 この頃ようやく、PCが社員1人1台に配布され、社内に無線LAN環境も整備された。ついに、社員全員がITを扱える環境が整いつつあった。

 ただ、環境が整っただけで、利用が活性化することはなかった。そこで経営管理部が次の手として実行したのが、「強制kintone」だ。たとえば稟議書はアプリで申請しなければ買えないようにする、有給休暇もアプリからだけを受け付けるようにするなど、kintoneを業務で使わざるを得ない状態にした。

「強制的にkintoneを使ってもらうことにしてから、最初は不便と言っていた人が、その便利さに気づくようになった。実際、どこでも作業ができて、進捗が目に見える。また検索も紙をめくらなくても簡単にできるようになり、格段に便利になっている。社員からは『もう、紙には戻れない』という声まで出てくるようになった」(吉井氏)

アプリを強制的に使わせることで、社員がその便利さに気づいていった

 ここで社内の変化をつかみ取った経営管理部では、手を緩めることなく、次の「共有kintone」を発動した。これは、部門間の情報共有が必要な業務のアプリ化だ。

 たとえば「式典予定表アプリ」は、船舶が完成時の「進水式」など、造船所特有の行事予定や参加者の名簿の管理に使用する。「起工式、進水式、引き渡し式など、式典は1ヵ月に2、3回のペースで実施される。参加いただくお客さまの名前や、スケジュールを一括で管理するアプリを作った。どの部署でも1つの情報にアクセスして確認できるようにした」(吉井氏)

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