このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

いよいよ始まる日本のIaaS-2010年版- 第6回

堅牢なネットワークやグローバル展開、SaaS連携も魅力

クラウドに本気の企業ならNTT Comの「Bizホスティング」

2010年10月05日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

NTTコミュニケーションズが手掛けるクラウドブランド「BizCITY」のなかで、IaaSにあたるのが「Bizホスティング」である。通信事業者ならではのネットワークやインフラの手堅さはもちろん、高いコストパフォーマンスやKVM採用も大きな売りとなっている。

ユーザーにあわせた3つのサービス

NTTコミュニケーションズ 販売促進部 〆野 和範氏、同担当課長 瀧澤 剛志氏、サービスディベロップメント部門 課長 松浦敦氏、経営企画部 サービス戦略担当 担当課長 成田 大助氏、ITマネジメントサービス事業部 サーバマネジメントサービス部 サーバサービス推進部門 担当課長 田村 尚子氏(左から)

 NTTコミュニケーションズの「BizCITY」は、インフラからアプリケーションに至るまでの幅広い「ICTアウトソーシング」、そしてさまざまな場所でICTリソースにアクセスできる「ユビキタスオフィス」という2つの要素によって構成されている。このうち、Bizホスティングは社内サーバーのアウトソーシングを謳うクラウド型のホスティングサービスで、システムや要件にあわせ、大きく「エンタープライズ」「グローバル」「ベーシック」の3つのサービスが用意されている。

 2007年12月に開始されたBizホスティング エンタープライズは、顧客のカスタマイズ案件に柔軟に対応できる専用設備型のサービスで、メールやWeb、コマースサイトだけではなく、基幹システムのフルアウトソーシングまで対応する。仮想化環境としてVMwareやHyper-V、Oracle VMまで対応し、24時間365日の電話受け付けも可能な保守体制を持つ。「18号報告書やSOX法の対応、既存システムとの連携など、お客様の要望に応えられるようなサービスに設計しています。構成自体がオーダーメイドですので、料金もそれにあわせて変動します」(ITマネジメントサービス事業部 サーバマネジメントサービス部 サーバサービス推進部門 担当課長 田村尚子氏)というサービス。リソースは専有するが、エンジニアは共有するため、コストを大きく下げることができるという。

Bizホスティングのエンタープライズ/グローバルの概要

 また、2009年10月に開始されたBizホスティング グローバルはエンタープライズと同じ専用設備型のサービスだが、名前のとおり多国籍企業を対象とする。欧州、北米、シンガポール、香港、日本など5箇所のグローバルデータセンターを用いており、運用管理も統一した仕様で提供される。仮想化環境としてはVMwareに対応し、「各拠点を一元管理する専用カスタマーポータルが標準で提供しています。欧米では、クラウドはこうしたポータルがあるのが当然と捉えられているようです」(サービスディベロップメント部門 課長 松浦敦氏)。グローバルで幅広く展開するNTTコミュニケーションズならではのサービスといえる。

 経営企画部 サービス戦略担当 担当課長 成田大助氏は、「まだまだ用語の定義はあいまいですが、しいていえばエンタープライズとグローバルがプライベートクラウド向けという位置づけです」とサービスの特徴についてこう語る。

低コスト、KVM採用のBizホスティング ベーシック

 そして2010年4月に始まったばかりのBizホスティング ベーシックは、低廉な価格を売りにする共用設備型の仮想サーバーホスティング。ユーザーの要件にあった仮想サーバーを月額利用できるというIaaSならではのサービスだが、一方でVPNなどの閉域網での接続も可能になっている。

低廉な価格を売りにするBizホスティング ベーシック

 Bizホスティング ベーシックの特徴的なのは、なんといっても仮想サーバーが1台月額7350円(1CPU/メモリ1GB/ストレージ100GB)という価格だ。NTTコミュニケーションズというと、大手通信事業者であるが故に「高品質だが、高価」というイメージもあるが、ネットワークのトラフィック課金がない点を考えると、Amazon EC2とも、他の事業者とも十分張り合える価格だ。「『クラウド=安い』『クラウド=コストが下がる』というイメージがありますので、われわれも品質だけを売りにするわけにはいきません。価格面でも十分ご満足いただけるサービスをつねづね考えています」(成田氏)という取り組みの結果だ。一方で、現状では従量課金制は用意していない。「トライアルを見た限り、固定定額で安くというニーズの方が多かったんです。従量課金より、予算が組みやすいということです」(販売促進部 〆野 和範氏)。

 もう1つ特徴的なのは、仮想化環境にLinuxカーネル標準の準仮想化機構「KVM(Kernel-based Virutal Machine)」を用いている点だ。他のIaaSのほとんどが高い実績を持つVMwareを採用している点を考えれば、これは相当チャレンジな選択といえる。これについては「Linux標準という安定性やパフォーマンスを考えて採用しました。オープンソースなので、コストにもきちんと跳ね返ってきます」(販売促進部 〆野 和範氏)という背景があったようだ。もちろん、半年くらいフィールドテストを続けて、ようやく採用に至ったモノで、ユーザーからもパフォーマンスなどの面で高い評価を得ているという。

 一方で、従量課金制がない点、サーバーの構築やスペック変更に7営業日かかる点、OSの選択肢が限られる点(現状はWindows 2003/2008/Redhat Enterprise Linux 5.4のみ対応)などは、Amazon EC2のようなサービスを求めるユーザーにとってはマイナスに映る。そういう意味でも、Bizホスティングは米国とは異なる思想で作られた「日本のクラウド」といえる。

(次ページ、強みはやはりネットワーク。SaaS連携も大きなメリット)


 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事