データセンターに本当に行かなくていいんです!
D&Dでシステムが組めるKDDIクラウドサーバサービス
2010年10月25日 09時00分更新
「KDDIクラウドサーバサービス」は、ドラッグ&ドロップでインフラを設計できるという強烈な特徴を持っている。また、サーバーやストレージ貸しにとどまらず、OSや開発環境なども提供するというPaaSであることもユニークな点。KDDIソリューション商品企画本部 ソリューション商品企画部 商品企画3G 課長補佐 柳 亮弥氏にサービス概要を聞いた。
KDDIグループのクラウド戦略を俯瞰する
KDDIのクラウド戦略は、大きくSaaSとIaaSの分野に分けられる。SaaSに関しては、他社との協業によってアプリケーションをユーザーに提供する「KDDI Business Port」が用意されている。これはアプリケーションベンダーに回線やインフラを提供し、CRMやグループウェアをSaaS型で提供するもので、現在15社と協業している。また、マイクロソフトとも協業しており、「KDDI Business Outlook」という名称でExchangeのサービスをケータイで使えるというサービスを提供している。
そして、今回紹介する「KDDIクラウドサーバサービス」は、サーバーやストレージ、ネットワークなどITインフラを提供するサービスで、2009年の6月にスタート。子会社であるKDDIウェブコミュニケーションズの各種VPS・ホスティングサービスとともにインフラのアウトソーシングを担っている。
物理サーバーを専有。PaaS型のサービス提供
「もともとターゲットは、1ラックでサーバー10台程度のシステムを自社で抱えるのは大変と考えるユーザーを想定していました。こうしたユーザーに対して、単なるハウジングではなく、月額30万程度でハードウェアも、ネットワークも、場所も含めて提供したいというイメージです」と、柳氏はサービスの発端についてこう説明する。サービス開始の発表以降に問い合わせをかけてきたユーザー属性は、SIerやIT系の企業、システム子会社などが半分、残りが大企業の部門単位といった感じだったという。ここからヒアリングされた内容は前述したサービスの特徴に直結している。
クラウドといえば「グローバル展開、そして仮想サーバーで安価なコスト」というイメージがあるが、柳氏によるとユーザーニーズは大きく違ったという。「まず聞かれるのが、国内にデータセンターがあるかどうか。次に多い問い合わせが、物理サーバーが専有できるかだったんです」とのこと。
これに対して、KDDIクラウドサーバサービスでは「TELEHOUSE」という国内データセンターにサーバー等を設置している。データセンターの回線、ネットワーク機器、サーバなどの機器はすべて冗長化されており、高い信頼性を実現。セキュリティ認定のISMSを取得しているほか、ラックとの提携でセキュリティ監視を行なっている。そして、仮想サーバーではなく、物理サーバーをユーザーが専有する利用形態となっている。専有型の物理サーバーを用いたプライベートクラウドをKDDI側で運用するサービスというわけだ。
サービスはインフラ、ハードウェア、OSまでを提供する仮想DCタイプ、そしてシステム構築まで行なう仮想SYSタイプの2つに分けられる。「仮想DCタイプはシステムの構築や運用は自前でやりますというユーザー向け。仮想SYSタイプは自分では構築や運用をしないユーザーに対して、われわれのSEがヒアリングさせていただき、アウトソーシングしていただくといった用途向けです。カスタマイズされたSaaSといったイメージです」(柳氏)という。仮想SYSタイプは通常のシステムインテグレーションと同じだが、個別見積もりではなく、メニュー化されているのがポイントだ。
課金体系に従量制がないのも、ユーザーニーズを汲みあげた結果だという。柳氏は「料金が固定でないと、予算取りしにくいといわれます。インターネット接続料も含まれていますし、変動要素の少ないサービスです」と語る。
部品をドラッグ&ドロップで組み合わせる
ハードウェア貸しにとどまらないのも、KDDIクラウドサーバサービスの大きな特徴。「OSだけではなく、Apacheも部品として用意していますので、IaaSだけではなく、PaaS(Platform as a Service)と位置づけています」(柳氏)。たとえば、Web関連はApacheやTOMCATのほか、複数のWebサーバーを束ねることも可能なサービスも用意されている。その他、ロードバランサーやデータベース、ゲートウェイ、NAS、バックアップ、モニタリングなど異なる複数のさまざまなパーツが用意されている。
そして一番特徴的なのは、Webブラウザ上からこれら各パーツをドラッグ&ドロップで組み合わせ、システムを構成できるところ。Visioのようなシステム構成図を書くようにして、パーツを配置し、線でつなげば、リアルのシステムを作れるというのはかなり強力な個性といえる。この仕組みは、3tera(現CA)のAppLogicというクラウド管理プラットフォームをカスタマイズして実現しており、ハイパーバイザーもVMwareやXen、Hyper-Vではないオリジナルのもの。そのため、現状対応OSはCentOSのみに限られる。
もちろん、導入しているリソースの範囲内であれば、リソースの足し引きは細かく行なえるほか、同じ構成のシステムをすぐにコピーできる。たとえばオンラインゲームサイトを新たにもう1つ立ち上げたい場合は、そのままコピーして同じモノを作り、細かくカスタマイズしていけばよい。同じ画面から直接サーバーのアイコンをクリックすると、直接サーバーの管理画面にログインすることも可能。「他の仮想化ソフトやサービスでは、細かい設定や調整はデータセンターの現場で行なう必要がありますが、KDDIクラウドサービスでは、本当にデータセンターに行かなくても済みます」と柳氏は述べる。
KDDIクラウドサーバサービスの導入により、ITリソースの調達費、運用コストなどの削減が図られるほか、高い可用性や信頼性の確保、スピーディな環境構築、セキュリティ強化などさまざまなメリットが得られるという。とはいえ、VMwareのプラットフォームで、安価に利用できるといった他社のIaaSとやや方向性が異なる。当然、現在のシステムをそのままクラウドに移行できるか? 管理ツールの使い勝手はどうか? などの懸念もあるだろう。これに対しては、サービスを2週間試用することが可能になっている。
初出時、柳氏のお名前を謝って記載しておりました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2010年10月25日)

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