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いよいよ始まる日本のIaaS-2010年版- 第12回

VPSの実績を持つNTTPCコミュニケーションズのパブリッククラウド

本場米国のクラウドをカスタマイズしたWebARENA CLOUD9

2010年12月20日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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NTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)が10月に提供開始したパブリッククラウドサービスが「WebARENA CLOUD9」である。長らくホスティング/データセンターを展開してきた実績がいろいろな形で活かされたサービスになっている。

VPSらしいサービスからクラウドへ

 2010年10月に発表されたWebARENA CLOUD9は、NTTPCと米国のVerio社(以下、米Verio)で共同開発されたパブリッククラウドサービスだ。米VerioはNTTPCと同じNTTコミュニケーションズのグループ内のホスティング会社。米国Verio社がクラウドプラットフォームの開発・運用・保守を担当し、NTTPCがカスタマイズしたゲストOSおよび日本語対応コントロールパネルの開発、そして、日本国内の販売と運用サポートを行なっている。

 サービスは、1コア共有CPU、1GBメモリ、50GBのHDDという基本スペックとした仮想サーバーを4800円/月(税込・クレジットカード支払い)でユーザーに提供するもの。最大4コア共有CPU、16GBメモリ、1TBのHDDまでオンデマンドでリソースを拡張することが可能だ。仮想サーバーが高負荷となった場合やリソース不足になった場合に、別のホストに移行するマイグレーションやホストの障害時に自動的に別のホストへ移行させるフェイルオーバーなどの機能を実現している。クレジットカード決済であれば、最短3分で開通するというスピーディさも大きな売りとなっている。

NTTPCコミュニケーションズ データセンタ事業部 サービス開発部 ホスティングサービス担当 主査 安松香世氏

 もともと同社は2005年から仮想専用サーバーを月額単位で提供するVPSを展開しており、今回のWebARENA CLOUD9の導入に関しても「VPSとどう差別化するか」、「そもそもクラウドとはなにか?」といった議論を社内で経てきたという。サービス開発を担当したNTTPCの安松香世氏は「(リソースが自動的に増減する)エラスティックな部分や時間単位の課金などがクラウドらしい部分だろうと考えました。現状はまだVPSに近いサービスですが、将来的にはこうした特徴を盛り込んでいくというロードマップになっています」と、サービスの全体像についてこう語る。

WebARENA CLOUD9のロードマップ(同社Webサイトより抜粋)

 そのため、今は固定課金のみだが、2011年の春以降に使用状況に応じて自動的にリソースを追加するオートスケールアップを実装するのにともなって従量課金を導入する予定。また、複数サーバーでのロードバランシング、サーバー自体を増設するオートスケールアウトも2011年秋以降に導入されることになっている。「Webでサービスを展開していると、やはり時期柄トラフィックの増減がありますので、これに対応するための仕組みはいくつか用意しています」(データセンタ事業部 技術開発部 サーバプラットフォーム担当 主査 萩原正浩氏)。

NTTPCコミュニケーションズ データセンタ事業部 技術開発部 サーバプラットフォーム担当 主査 萩原正浩氏

苦労した日本向けへのカスタマイズ

 仮想化環境は非公開だが、VPSなどで幅広い実績を持つソフトウェアを用いており、ユーザーが利用できるOSとしてはCentOSをサポートしている。「単に仮想化環境をそのままユーザーに対して提供しているわけではなく、仮想化環境自体はプライベート側に設置し、グローバルとの境界にNATをかけて通信させています。この外部と内部の間にポートマッピング機能を持っており、お客様が公開するポートを任意に設定できます」(データセンタ事業部 技術開発部サーバプラットフォーム担当 寺田亜紀氏)。米Verioのプラットフォームを採用しつつ、データセンターは信頼性の高い国内データセンターを用いている。

NTTPCコミュニケーションズ データセンタ事業部 技術開発部サーバプラットフォーム担当 寺田亜紀氏

 米国仕様のVerioのサービスをローカライズするのは、言語だけではなく、日米で感覚が異なる部分もあったため、苦労したという。「サービスの役割分担に関しては、米Verioがプラットフォーム、NTTPCがカスタマイズしたゲストOSのイメージとコントロールパネルなどを開発したのですが、日米ほぼ同時で作業を進めたので労力がかかりました」(寺田氏)。また、VPSの仮想マシンのイメージに関しても、「米国ではユーザー側に任せるということで、カスタマイズしないで提供しているのですが、弊社はVPSでの経験もあるので、なるべくセキュアなイメージを構築するようにしました」(萩原氏)という。

 顧客としては、Webの制作会社やSIerなどWebビジネスを行なっている事業者を想定している。3分で導入できるという手軽さもあり、利用期間を限定したインスタントな使い方もできる。「Webサーバーの運用って、今までは高いお金はかけられないけど、ギリギリの運用は避けたいというジレンマがあったと思うんです。こういう悩みを持っている方にとってCLOUD9の登場は朗報だと思います」(寺田氏)という。果たして「とても幸福で」を意味する「On Cloud Nine」のとおり、WebARENA CLOUD9がWebビジネス事業者を救う救世主になれるか? 今後のロードマップに注目したいところだ。

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