UTMやロードバランサー搭載やIPv6対応など盛りだくさん
多機能IaaS「Feel6. VDC ENTERPRISE-FARM」の魅力
2010年10月01日 06時00分更新
フリービットの「Feel6. VDC ENTERPRISE-FARM」は、子会社のフリービットクラウド(旧メディアエクスチェンジ)と共同で提供するIaaSである。IPv6対応やUTM(Unified Thereat Management)を標準搭載といった特徴を持つサービスの概要を、フリービット Feel6.営業部 シニアマネージャー 益子純一氏に聞いてみた。
多彩な選択肢を提供するサービス体系
Feel6. VDC ENTERPRISE-FARMは、旧称MeX VDC ENTERPRISE-FARMと呼ばれていたサービス。8月末に行なわれたMeXからFeel6.へのブランド変更により、名称もそれに合わせて変更されたモノだ。MeX VDCのサービス発表は2010年の3月で、VDC(Virtual Data Center)という名前のとおり、サーバーやストレージだけではなく、ネットワークも含めたデータセンターインフラを月額料金で扱えるといういわゆるIaaSに分類されるサービスである。「仮想化技術によって、インフラのコストと運用の手間を大幅に軽減することが可能です」(益子氏)。
サービスは「Feel6. VDC ENTERPRISE-FARM Pro」と「Feel6. VDC ENTERPRISE-FARM Standard」に分けられ、多彩な選択肢を用意している。
2010年3月に発表されたFeel6. VDC ENTERPRISE-FARM Proは自由度の高いIaaSで、利用したいスペックにカスタマイズした仮想マシン、ネットワーク帯域、オプションなどを選択し、これに利用する分のIPアドレス数に応じた基本利用料を加えると毎月の利用料が割り出される。サーバーはCPUが1~4、メモリが1~8GB、HDDが100~800GBまで選択でき、OSもWindowsやRed Hat Enterprise LinuxやSuSE Enterprise Serverのほか、Solaris x86、FreeBSD、Debianなど幅広く選べる。また、ネットワークは従量課金/固定料金で選択するタイプ。プライベートセグメントを7つまで作成できるので、複雑なネットワーク構成のシステムでもサービスに載せられる。さらにロードバランサーもL4での振り分けは標準搭載されており、L7での振り分けがオプションになる。初期費用は5万円で、いったん契約が完了すれば、サーバー構築は平均10分で完了する。
ユニークなのはファイアウォールやアンチウイルス、IPS、アンチスパムなどの機能を持つUTMを標準搭載している点。フォーティネットのUTMをVDOMという機能でユーザー単位に分割して使っているので、ユーザーごとに異なるセキュリティポリシーを設定できる。セキュリティに関しては、オプションサービスというところが多いので、ここは大きな売りだ。
2010年の5月に追加されたFeel6. VDC ENTERPRISE-FARM Standardはサーバー構成を6種類に絞り、UTMやVLANを省き、基本機能に特化したもの。ネットワークも1Gbpsの回線を共用することになる。その代わり、初期費用は無料、価格も1CPU/メモリ512MB/HDD 50GBで月額5980円にまで落とした。Proへの移行も容易に行なえる。
サービス内容を総括すると、やはり多機能というキーワードにまとめられる。サーバーだけではなく、ネットワークやセキュリティまで含めて、さまざまなオプションが提供されているのは、ユーザーにとってうれしい。
今後は独自の仮想化基盤採用も進める
こうしたFeel6. VDC ENTERPRISE-FARMの仮想化環境は、ニフティクラウドと同じくVMware vSphereをベースに構築している。HAクラスタのサーバー構成を取っているため、「1台構成のサーバーをうちのサービスに移行していただければ、そのまま可用性が上がります」(益子氏)という。ネットワーク機器やロードバランサー、ファイアウォールなどもすべて冗長化されているほか、インフラ基盤も堅牢な国内データセンターを採用している。SLAも99.9%を保証しており、バックボーンも70Gbpsという国内最大級を誇る。
管理ツールから必要に応じてサーバーの処理能力を強化したり、必要に応じてサーバーのクローンを複製するといった作業も管理ツールから容易に行なえる。「弊社独自で管理コンソールを開発しており、信号機アイコンで稼働状態をチェックできるほか、仮想マシンのクローン作成等も容易に行なえます」(益子氏)。接続に関しても、SSL-VPNやIPsecなどを利用できる。
サービス自体はフリービットクラウドとフリービットで共同で提供されているが、この流れも自然だ。「フリービットクラウドはインターネット黎明期からIXとデータセンターを運営していますし、フリービットはネットワークやアプリケーションなどISPの裏方の事業がメインでした。この両者の延長上としてFeel6. VDC ENTERPRISE-FARMのようなクラウドサービスがあります」とのこと。両者のいいとこ取りをサービス化したのが、Feel6. VDC ENTERPRISE-FARMというわけだ。
ユーザーはゲームやSNSなどのアプリケーションを運営する事業者やWeb制作会社、SaaS事業者などが多い。「やはり調達期間を短くしたい、コストを抑えたいというニーズが高いです」(益子氏)とのこと。他社に比べて、月額基本料金がかかる点、日額の従量課金サービスが用意されていない点などを考えると、インスタントな用途で利用するには向いていないようだ。
今後IaaSのビジネスは価格競争に入る公算が高く、標準的なソフトウェアやデータセンターを使っている限り、差別化やコストダウンが厳しくなる。この点を考慮し、同社ではVMwareではない独自の仮想化基盤「SiLK VM」を導入していく予定。また、フリービットのコアコンピタンスであるIPv6に関しては、すでに標準対応を行っており、SiLK VMにも搭載される見込みだ。

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