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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第14回

音楽に新しい憧れを 初音ミク・古川Pが語る

2010年01月23日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ボーマスにはお客さんを見に行く

――今はメジャーもいろんな選択肢のひとつですからね。

古川P 僕がバンドをやっていたころとの決定的な違いは、メジャーが憧れの場じゃなくなってるということじゃないですかね。なんでメジャーって嫌われるんだろう? 昔はメジャーデビューってお祝い事だったような気がするんですが……。

――そうなった理由は何だと思いますか?

古川P メジャーと個人でやっていることの差が見えにくくなってるからじゃないですかね。明らかにメジャーでしかやれないこともあるのに、個人でやっていることのほうが面白く聞こえる。その差はなんなのかを明確に打ち出せていないのがまず問題ですよね。個人でやっていることと変わらないなら、わざわざ自分の曲預けたくないってなりますよね。「メジャーにしかやれないこと」をもっとはっきり打ち出してくれたらまた憧れられるような気もします。

――古川さんは作品をどのルートで売ってるんですか?

古川P ボーマスですね。今はほとんど通販もやってないです。

※ ボーカロイド専門イベント「THE VOC@LOiD M@STER」会場の様子。CDや同人誌、ボーカロイド関係のコスプレなども

――それを選んだのはなぜですか?

古川P 結構卑屈なので動画のコメントや再生数を気にしてるんですが、それを100%真に受けてないところがあるんです。10万再生っても、10万人が見たわけじゃない。もしかしたら1人が10万回リロードしたんじゃねえかとか。

――ははは。それはさすがにないと思いますけど。

古川P そう考えるのってリアルタイムでお客さんの姿が見えないからだと思うんですよ。でもボーマスとかのイベント行くと、いるんですよお客さんが。列とか作って。それで初めて実感したんです。いたのか、いてくれたのかお前らと。それを見たいっていうのが理由ですね。



▲10万再生を超えて「ボーカロイド殿堂入り」のタグがついた「Alice」

――それは買いに来る人も同じですよ。古川Pが見たいわけで。でもライブハウスとは全然勝手が違うでしょ?

古川P 違いますね。でも、まあ、もっと若くてモテたいというのが本当にあれば、なにか物足りないとは思うかも知れないけど、この歳になればそんなの関係ないですからね。コスプレやってる脇腹をこんだけタダで見られて、しかもCDを買いに来てくれるってウハウハじゃんって。

――脇腹でウハウハ……。

古川P というのは冗談ですが、まじめな話をすると、バンドやってたときの評価って4人でやってたことの評価なんです。ボーカルの声がいいからとか、メンバーの誰かの顔がいいからとかそういう人もいるわけで、自分の制作に対する評価じゃないかもしれない。でも、ボカロは基本的に僕一人なわけだから、評価も基本的には僕に来るんですよね。一介のサラリーマンに「ファンです!」って会いにきてくれるわけです。なら少々寝る時間削ってもやったるわい、という気持ちになりますね。

 

――コスプレのようなオタク文化に抵抗はなかった?

古川P まったくないですね。僕は兄貴がいるんですけど、これがまたエリートなオタクで、ガンダムから入り、アイドル声優を抜けてモーニング娘。にたどり着くという華麗なクラスチェンジをした人で。そういう人が身近にいたからって言うのもあるんでしょうけど。僕もアニメよく見ますし。

――いまだに初音ミクというと、音楽を普通にやってる人たちは鼻にもかけないわけですが。

古川P キャラクターに抵抗があったとしても、それはもったいないですよね。新しい技術を面白がらずに、新しいものは作れないと思ってます。発展途上の技術がどんどん成長していくのを近くで見られるなんてなかなかないと思うんですけどね。

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