HMV渋谷店の閉鎖に代表される、大手リテーラーチェーンの規模縮小が進む中で、小規模ながら、なぜか立派に営業を続けているCDショップがある。
サブカルの聖地、東京の中野ブロードウェイの3Fにある「メカノ」がそうだ。インディーズの委託販売から中古CDの買取りまでを行なう、ごく小さな店舗だ。しかし平沢進関連の聖地として全国的な知名度があり、80年代からのテクノやニューウェイブに強いお店としてマニア筋にも名が通っている。
このメカノを一人で切り盛りする中野泰博さんは、かつてディスクユニオン渋谷2号店の店長を務めていた人物。ターゲットの絞り込みや、経営規模の設定など、それまで大型店舗で培ってきたノウハウがこのお店にはつまっている。
今時必要とされているCDショップのあり方とは何なのか。その一例として中野店長のお話を伺ってみたい。
J-POPは消耗品、買い取りで売り切ることは考えない
―― 音楽業界はすっかり斜陽で、CDもさっぱり売れていないんですけど、このお店、どうしてやれているんですか?
中野 僕は毎日売れているところを見ているので、CDが売れていないという実感がないんですよね。
―― このご時世で不思議ですよね。
中野 不思議でしょうねえ。実はこの店、Perfumeがないんですよ。
―― ほー。そらまたなんで?
中野 あれは消耗品のJ-POPだから。新譜で買取りしても、3ヵ月もすればブックオフに並んで、すぐ100円になっちゃう。それを、個人の店で、買取りでやるのは無理なんですよね。
―― 在庫を持った途端、価値が目減りしていくと?
中野 そうですね。それやってたら、今ごろうちは潰れています。
―― じゃあ逆に、そこそこ売れないものだけをそろえていると?
中野 インディーズの基本ですけど、売れると解散するか、(質が)落ちるんですよ。でも売れないバンドは、尺度がお金じゃないんで、赤字でもやるんです。すると3年後~4年後でも、売れたりするんですよ。
―― ある意味、クラシックにも近いところがありますよね。
中野 アーカイブ的なところはあるでしょうね。あとは、私が独りでやっているから、ってところもあるんですよ。これでバイトを使って会社組織にしていたら、このジャンルでは無理ですね。上限があるので。
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