ニコニコ動画の「すんzりヴぇrP」という読み方が分かりづらい名前のボーカロイド作家(ボカロP)、sunzriverこと寺田太陽さんは、1972年生まれで京都在住のミュージシャンだ。ちなみにすんzりヴぇrは「サンズリバー」と読む※。その生い立ちは、普通ではない。
彼の父親は日本最古のライブハウスといわれる「拾得」※のオーナー、寺田TERRY氏。このライブハウスは京都の音楽シーンの中心的存在で、今なお多くのミュージシャンを輩出している。「音楽が生まれる現場が実家」という極めて特殊な環境で育った人なのだ。
彼は2002年に「sunzriver」名義で、自宅録音によるCDアルバム「ストーミーサンデー」をリリース。2008年にはボーカロイドを使いはじめ、ニコニコ動画への投稿を始めた。名義はボーカロイド使用曲が「すんzりヴぇr」、自身のボーカル曲が「sunzriver(act2)」だ。
ポップなメロディーラインと、不思議な言葉の調和は、彼独特のもの。一連のボーカロイドPの中にあっても、相当にユニークな存在だ。中でも比較的ストレートな構成の代表曲「逆さまレインボー」は、海外のリスナーの手によってYouTubeに転載され、すでに30万再生に迫ろうとしている。
今のところ、コメント欄を埋める言語に日本語は見当たらない。海外のリスナーに言葉を超えて何かが届いているのだと想像できる。
しかし、そんな彼はどうも「気難しい」人らしい。以前、取材をしたキャプテンミライさん※がボーカロイドに手を出したきっかけは、ニコニコ動画で彼の曲を発見したことだったという。ただ「彼は気難しいので、名前は書かないで」と釘を刺されていたのだ。
そんなこともあって長いこと取材をためらっていたのだが、今回ダメモトで申し込んだところ、意外なことにオーケーが出てしまった。しかし例によって我々には京都へ行く予算がない。よって、今回もSkypeでの取材となった。
※ すんzりヴぇr : カナ変換モードで「sunzriver」とタイプしてみると「すんzりヴぇr」に変換されるはずだ
※ 拾得 : 正式名称は「Coffee House 拾得」。創業は1973年
※ キャプテンミライ : 「キャプミラさん」の愛称で知られるボーカロイドP。本名は丹治まさみ。ボーカロイド以前は「アポジーズ」「知恵の輪」として、インディーロックシーンで活動していた。アポジーズのアルバムはUK.PROJECTから「ALLOVER OVERALL」(1998) 、「デビルポップ」(1999)の2枚がリリースされている
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ