言語以前の、言葉にならないメッセージを共有する。それが音楽の根源的な力だ。
ニコニコ動画でそれを感じられたのが、こんぺいとうPによる「ジャガボンゴ」と、それをめぐる作品群だ。ジャガボンゴはこれまで様々な人々にカバーされ、リミックスされつづけてきた。その異様な人気の理由はどこにあるのだろう?
ただし、ジャガボンゴは彼の作品の中では異色の部類に入る。大抵はアウトサイダー・アート(伝統や文脈を持たない芸術)のようなイラストと、ノイズまみれのチープな音源の組み合わせだ。そうしたこんぺいとうPの作品は、技術的にはどれも未完成で、正直言ってつたないものが多い。それでも多くのニコニコ動画の作家に愛される理由は何なのか。
言ってしまえば、彼は「表現の断片」をネットに投げ込んだだけだ。それが様々な人々に解釈され、また作家の側へ戻っていくというプロセスが、彼の周囲では確実に起きている。インターネット後に出てきた音楽の1つとして、それは非常に興味深いことだった。
こんぺいとうPは何かと謎の多い男性だが、今回、インタビューは快く受けてもらえた。ただし顔写真の撮影も年齢の公表も不可ということだったので、私の印象を記しておこう。知的で落ち着いた話し方をする人だが、年齢は私の想像より5歳は若かった。
そして今回はゲストとして、こんぺいとうPの大ファンであり、ジャガボンゴをカバーした鈴鳴家の鈴鳴おんさんもゲストとしてお呼びした(関連記事)。「いい大人」である彼のこんぺいとうラブっぷりは、傍で見ていて笑えるほどだったことも記しておきたい。

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