このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第63回

いま“もっとも評価されるべき”歌い手・花近

ボカロ「歌ってみた」がつなぐ、日本と中国の新たな才能

2011年07月02日 12時00分更新

文● 四本淑三

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

古川本舗 / Alice in wonderword

 古川本舗(関連記事)初のメジャー流通アルバム「Alice in wonderword」は、アレンジや録音のクオリティの高さと同時に、参加アーティストの豪華さでも話題を呼んだ。

 過去にボーカロイドを使って発表された楽曲のセルフカバーという体裁で、収録曲全12曲をすべて異なるボーカリストが担当している。中でも驚きだったのは、ニコニコ動画でもおなじみの歌い手に混じって、カヒミ・カリィと野宮真貴が参加し、古川本舗の代表曲である「ピアノ・レッスン」を歌っていることだろう。

 さらにマスタリングはGreen Dayやエリック・クラプトンなどの仕事で世界的に有名なテッド・ジェンセン(!)が担当し、“ニコ動発の音楽”と“メジャーシーン”という大きな枠を取り払ったところで制作された、極めて2011年的で画期的なアルバムだったと言える。

 しかし私個人は、中でも注目すべきトラックは、実は7曲目の「三月は夜の底」ではないかと思っている。このアルバムの中で唯一の新曲ということもあって新鮮に聴けただけでなく、落ち着いたトーンと柔らかい発声の心地良いボーカルが素晴らしい。

PVに出演しているのは写真集『HARDWARE GIRLS』のモデルとしても有名な Yun*chi。

 この曲を歌っているのは花近(かきん)という二十歳の女性で、現在アメリカに留学中の中国人大学生。英語詞である「三月は夜の底」は、彼女と古川本舗の共作としてクレジットされているが、それ以前は古川本舗の曲を「歌ってみた」でニコニコ動画に投稿している、日本文化の好きな普通の(とは言えないかもしれないが)外国人だった。

 一体彼女にはニコニコ動画の世界がどう見えているのだろう? 日本語はおぼつかないということだったが、Skypeでの取材を試みた。

※ 発言のニュアンスを残しているため、日本語がやや不自然に見える個所があります。ご了解ください(編註)

古川本舗 / Alice in wonderword

1. ピアノ・レッスン feat.カヒミ・カリィ
2. mugs feat.630
3. CRAWL feat.acane_madder
4. Good Morning EMMA Sympson feat.Madoka Ueno
5. envy. feat.星野菜名子 (from 優しくして♪)
6. グリグリメガネと月光蟲 feat.クワガタP
7. 三月は夜の底 feat.花近
8. ドアーズ feat.エルシ
9. スーパー・ノヴァ feat.ミキト
10. ムーンサイドへようこそ feat.ちびた
11. Alice feat. 拝郷メイコ
12. ピアノ・レッスン feat.野宮真貴 with BaguettesEnsemble

古川さんにはすごく会いたいです

―― 花近さんはアメリカのどの辺に住んでいますか?

花近 シカゴの辺りです。

―― 古川さんのアルバムはもうお聴きになりました?

花近 はい。発売される前に音声データをもらって、もう何度も聴きまくっています。

花近さん

――  この曲のレコーディングはどうされたんでしょうか?

花近 私の家の近くのスタジオでレコーディングしました。古川さんにスタジオについていろいろ教えてもらって、ネットで近くにあるスタジオを探して、エンジニアさんに連絡して、日程を決めて。大体エンジニアさんに任せていました。私にはスタジオに関する知識は、まったくないです。

―― そうして録音したファイルを日本に送ったということですね。じゃあ古川さんとは会っていないんですか?

花近 会ってないです。私は日本に行ったことないですから。

―― ああ、そうなんですか。じゃあ古川さんを見たことがないんですか。

花近 見たことがないです、残念ながら。

―― 知っていますか? 古川さんは身長が10メートルくらいあるんですよ。

花近 本当ですか? すごく会いたいです!

―― 口から火を吹きますし、空も飛びます。多分あなたが来いと言えば、アメリカまで飛んで行くことくらいはできると思いますね。

花近 うわーっ! じゃあ待っています!

―― はい。ところで、花近さんはどうして古川さんが好きなんですか?

花近 初めて古川さんの曲を聴いたのは「ピアノ・レッスン」でした。PVも音楽もすごく特別で、なんだか心に染み入る感じ。すべての歌詞は理解できなかったけど、編曲がすごく魅力的だと思います。胸に響くという気がするです。そのあとも、何曲か古川さんの曲を聴いて、好きだなあと思っていて。それでmu-choさんがリミックスされた「Good morning Emma Sympson」を歌わせていただきました。それを古川さんが宣伝してくれて、すごく嬉しくて。後で、本家のインストが「うp」されたとき、本家も歌わせていただきました。



―― アップロードのことを日本風に「うp」って言うんですね。

花近 ああ、そうそう。そうですね。ふふふ。

―― では古川マニアとして、今回のアルバムはどんな印象ですか?

花近 古川さんのメジャーデビューのアルバムで、古川さんはボーカロイドを使って曲を作っているんですけど、今回のアルバムは全部生歌で、人それぞれ別々の思いを込めて。自分だけが歌える感情を入れて、それがすごく特別だと思いました。

―― 自分がやった以外の曲で好きな曲はあります?

花近 全部。どれもすごく好きです。

―― なるほど、愚問でした。



(次ページに続く)

前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン