リットーミュージック社「サウンド&レコーディング・マガジン」(以下、サンレコ)の音楽データ配信企画「Premium Studio Live Vol.1」として、大友良英と高田漣のライブレコーディングファイルが、音楽配信サイト「OTOTOY」から配信される。データ形式はDirect Stream Digital(DSD)だ。
その試聴会が9月16日に丸の内の三菱電線試聴室で行なわれた。オリジナルな音源をDSDの高音質で配信しようという、オンラインレーベルのひとつの方向性を示すものとして興味深い試みだと思う。
サンレコでは、以前にも清水靖晃+渋谷慶一郎の「FELT」という作品をDSDで発表しているが、今回はDSDでリリースすることを前提に企画されたスタジオライブの第一回目ということらしい。
大友良英はジャズギタリストにして、日本を代表するノイズミュージックの大御所。高田漣はペダル・スチールやバンジョーなどのマルチな弦楽器プレイヤーだ。この二人の演奏を、観客を入れた東京・一口坂スタジオのスタジオ1でライブレコーディング、つまり一発録音で収めたのが今回の作品「BOW」(OTOTOYで見る)だった。
ノイズ、サイン波も美しく収録した1枚に
サンレコ・國崎晋編集長によると「昔で言えばダイレクトカッティングのような手法。やり直しの効かない方法で録ることで、ミュージシャンの潜在能力を最大限に引き出すことが出来る」というのが、このレコーディングの狙いだった。
録音からも演奏のテンションが伺い知れる。ギターのフィードバックサウンドなどは、あたかもギターアンプがそこで鳴っているかのような印象を受けた。しかも他の楽器が発する微細なノイズもつぶれてはいないというのが、DSDのダイナミックレンジの高さを感じさせてくれる。
ノイズミュージックとDSDという組み合わせは一見意外な感じもする。だが、複雑な成分で成り立っているノイズを忠実に再現するのは、DSDでなければならなかった。
今まで「PCMでノイズを録るのは避けていた」と録音媒体での発表をためらっていた大友さんが「ここまで綺麗に録れたのは初めて」とDSDの音質に感嘆したらしい。つまりDSDがなければ、この作品は成立しなかったわけだ。
ちなみに作品タイトルのBOWというのは、電磁誘導で金属弦のサスティンを得る装置 E-BOW から取ったもの。ジャケットに写っている黒い物体がそれだ。大友さんが参加しているカヒミ・カリィの新作「It's Here」でも聴ける、幽玄なフィードバックサウンドを得ているのもこれだ。
大友良英+高田漣「BOW」
1.街の灯 / 2.It's Been A Long, Long Time / 3.教訓1 / 4.At The Airport / 5.BOW
1.「BOW」DSD+mp3 Ver.(※1.15GB)
2.「BOW」HQD(24bit/48kHzのWAV) Ver.(※617MB)
価格:1000円(OTOTOY 配信ページ)
