知る人ぞ知る電子楽器「ウダー」。バンドネオンによく似た演奏フォームと、正弦波に近い音色は、見る人の気分を一気になごませる不思議な楽器だ。
この楽器を作ったのは、宇田道信さんという29歳の青年。大学時代にこのアイディアを思いつき、以後ウダーを作るために10年間過ごしてきたという。ただ、彼は自作楽器マニアでもなければシンセオタクでもない。純粋に自分の考えた楽器を形にしたくて、それに必要な技術と知識を身につけてしまった人だ。
ウダーの構造は独創的だ。タッチセンス式のインターフェイスで、円筒上には黒いロープがあり、これを両手の指で押さえて演奏する。円筒上に1本の長い弦が螺旋状に巻かれているイメージだ。1周が1オクターブの音域を持つので、回転方向の移動でオクターブ内の音程、左右の移動でオクターブの跳躍ができる。
ロープの下にはハンドメイドの感圧センサーが埋め込まれていて、押さえる強さで音量は変化し、和音も弾ける。押さえた点を常時追尾するので、グリッサンドしながら和音の平行移動なんていう芸当もできる。
宇田さんは去年の8月に会社を辞め「ウダデンシ」を名乗って活動を始めた。近い将来に発売される「学研大人の科学」付録にウダーが予定されていて、今はそのプロトタイプを開発中だ。
この不思議な楽器は、どうやって生まれたのだろう? 現存する世界でただ一人のウダー職人、宇田道信さんに聞いてみた。

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