デザインが完成してしまったのではないか:
アップルからジョニー・アイブが退職する理由はiPad Proを見るとわかりそうだ
2019年07月03日 16時30分更新
●コンピュータとスマートフォンで、やることはもうない?
現在の技術的な要件、すなわち、外装のアルミニウムやガラス、ディスプレイ技術、プロセッサやセンサー、モデムを含むコンピュータの内部の構造、そしてタッチ操作をする人間の手のサイズなどを考えると、iPad Proに与えるべきデザインとして、これ以上シンプルなものがなくなった。
同じことが、MacBookシリーズやiMac、Mac mini、Apple TVなどのデバイスにも言えるようになっているのではないでしょうか。これをいうと毎年の楽しみがなくなってしまうかもしれませんが、直近ではiPhoneについても、iPhone Xで同様の状態に達してしまった可能性があります。
あとは内部のテクノロジーを追求しながら性能や薄さなどに変化があるかもしれません。しかしアップルがいつも目指してきた「そのデバイスにとっての正しい形」に行き着いたとなれば、それを変えることはしない、と考えることもまた自然なことです。
コンピュータやスマートフォンなどの多くのデバイスで、そうした域に達してしまった。あとはいま出来上がったデザインを維持しながら、テクノロジーの変化を受容していくフェイズに入った。だとすれば、アイブ氏がそのデザインについて取り組んだり、出来上がった製品について語ることも、もはやなくなっているのではないか。
そんな判断が、アイブ氏、そしてアップルの双方にあったのではないか、と筆者は予測してしまいました。しかし、テクノロジーと我々人類の接点はつねに変化しており、コンピュータとスマートフォンのデザインが完了したからといって、まだ終わりではありません。
これからのアップルのデザインについて、何が起きるのでしょうか。次以降の原稿に、譲ることにしたいと思います。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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