四本淑三の「ミュージック・ギークス！」 第18回

最底辺に住む「天才」 孤高のボカロＰ、山本ニューの正体は

ちゃんとした歌、ちゃんとした演奏で、自分の曲が聴きたい

――　それじゃ山本さんはどうしますか？　もうボーカロイドはやらないんですか？

山本　気が向いたときにですね。好きなときに面白いものを作って面白がれるのが、ニコニコ動画のいいところだと思うし。

――　そういえばプロになりたいと思ったことは？

山本　自分は偽物だと分かるんですよ。本気じゃないというか。プロになったら、嫌がらせもできないじゃないですか。約束も守らなきゃならないし。ただ自分がフェイクであることを自覚していて、それについては誇りを持っています。それでゲリラ的にヤリたい。

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ポール・サイモン・ソングブック(紙ジャケット仕様)

――　その姿勢で音楽を作る目的はなんですか？

山本　ポール・サイモンが売れない頃に作った「ポール・サイモン・ソングブック」^※7というアルバムがあって。僕も「山本ニューソングブック」というのを作りたいなと。

――　それはどういう意味ですか？

山本　他の人の歌、他の人の演奏で、ちゃんとした自分の曲のを聴きたいんです。

――　なるほど。ニコ動に放流しておくと夢がかないそうですね。

山本　そうですね。徐々に集まってきています。でも僕がやっているのはアーティストごっこというか、翻訳家まがいのようなことです。でもゴッコというからには無茶をしたい。無茶をして怒られたいんです。ただし、高い機材を揃えたりとかお金を使ってマスタリングしたりとか、そういうことには興味がありません。僕は天才ですけど、努力する人には勝てないですからね。

^{※7 ポール・サイモン・ソングブック : 1965年に発売されたポール・サイモンの1stソロアルバム。サイモン&ガーファンクルのデビュー後、ポール・サイモンが単独でイギリスに渡り制作された。このアルバムではギター1本の弾き語りだったが、収録曲の多くの曲は後のアルバムで再演されている。2004年にCDで再発されるまで廃盤状態だった。山本ニュー氏はニコニコ動画上に投稿したみずからの曲がカバー（再演）されるような、オリジナルとなる「山本ニューソングブック」を作りたいというわけ}

（では最後に、「山本ニュー氏が選ぶ必聴のアルバム10枚」をお楽しみください）