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ニコ動の歌姫・リツカが目指す「飾らない音楽の力」

2010年12月24日 12時00分更新

文● 広田稔

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 2010年は、ニコニコ動画の音楽シーンにおいて「歌ってみた」が飛躍した年だった。

 ……と断言するとちょっと誤解を招きそうだが、それにしても今年は歌い手の活動が目立つ。定期的に開催されているニコニコ動画の関連イベント「ニコニコ大会議」の出演者は歌い手が中心だ。歌い手で人気の「ぽこた」さん、「蛇足」さんはネット中継も予定されているミュージカル「ニコミュ」に出演する。

 男性の歌い手「Clear」さんは、9月に発売したメジャーデビューアルバムがオリコン週間チャートで9位を獲得した。ASCII.jpでも、「バルシェ」さんぽこたさん/Geroさんなど、歌い手のインタビューを掲載してきた。

リツカさん、ペンプロさん、あきさんが手掛けたファーストアルバム「Quee Quee」。名前の由来は「英語じゃなくて、フランス語の『Qui』(キー)とか『Que』(クー)とか使いたかったんでクークーにしました」(ペンプロさん)

 そんな背景を踏まえて、今回インタビューをするのは、「Quee Quee」(クークー)というユニット。

 メンバーは、主にニコ動で活動する女性の歌い手「リツカ」さん、ASCII.jpでもインタビューしたことがある作曲家の「PENGUINS PROJECT」(ペンプロ)さん、Pixivで活躍するイラストーターの「あき」さんという3人だ。

 リツカさんの魅力は、透き通った声質にある。ときに優しく、ときにかわいらしく。「深窓の令嬢」(って古い?)を連想させる上品な歌い方で、動画に「耳が幸せ」というタグが付けられることも多い。

 音階の正確さにも定評があり、急に高音に上がるフレーズでも無理に歌っているのではなく自然に声が出ている印象だ。代表作となる「【ニコニコ動画】炉心融解 歌ってみた 【リツカ】」は、2008年12月末に投稿して約2年間でダブルミリオンを叩き出した。

 そのリツカさんたちが、Quee Queeで目指していることは何か。冬コミ3日目(コミックマーケット79、12月31日)にファーストアルバムを出す直前というタイミングで3人にインタビューしてみたところ、令嬢的なイメージを(いい意味で)打ち砕く新事実がいくつも判明した。

アルバム「Quee Quee」を試聴する


実は歌ではなく、作曲家を目指していた

── まずリツカさん自身のことを教えてください。子供の頃から音楽に親しんできたんですか?

リツカ:いや、ピアノを2~3年ほど習っていたぐらいです。バンド経験もないですし、ずっと聴く側でしたね。


── 声楽もやっていなかった?

リツカ:そうですね。歌は大好きですが、習う時間もあまりなかったというか。音楽以外の部活に打ち込んでいたので、友だちとカラオケに行く程度でしたね。


── 声質から、何となく紅茶を嗜んでいそうな文科系のイメージを持っていたんですが……。でも、何もやってなくてあそこまで歌えるというのは、天性のモノですね。ニコ動に投稿するきっかけは?

リツカ: 見始めたのは2008年くらいです。そして「こういう世界があるのか」と思って2月に初めて「歌ってみた」を投稿しました。そのときは曲のミックスなども知らなかったので、ボイスレコーダーで録音してました。その次は国際会議とかで使われるような、アームが伸びてるマイクで収録という(笑)。

リツカさんのイメージ画像。「音楽は楽しくシビアに」がモットー

── 全然ボーカル収録用じゃない(笑)。

リツカ:そうやって録音した声を「RadioLine」という音楽編集ソフトに取り込んで、エコーをかけてアップしてました。


── 「炉心融解」の再生数が大変なことになってますよね。

リツカ:ちょうど年末の直前に投稿して、家族で旅行にいっていたんですよ。旅先のホテルでパソコンを開いてニコ動を見たら「何かヤバい」みたいな感じで。その前は再生数が、1000~2000ぐらいだったので、本当にありえない勢いで伸びていて驚きました。今となっては、私の手を離れたところで何かが起きたって感じで、よく分からないです。




── よく分からない状況になった後も、定期的に投稿されていますね。

リツカ:「炉心融解」を歌ったあたりから、ミックスをやられている方に声をかけてもらいました。ミックスをすることで、音がすごくよくなることに感動しましたね。あたかもCDに収録されるような音源になるのが、私の中で革命だったんです。「宅録でこのクオリティー、さすが日本の技術」と(笑)。ハンパないと思って、それから音質などにこだわり始めました。


── ミックスに出会ってから歌い方も変わりました?

リツカ:変わりましたね。感情の込め方とか……それまでは「音階至上主義」だったんですよ。「合ってればいい、合ってこそ歌」みたいな(笑)。音が合うことが快感で、細かいニュアンスよりは、ピアノを弾くように音の正確さに気をつかってました。

 あとは動画で「少し棒読みだねー」とか、「淡々としてるねー」といったコメントもらって、「自分がこう歌いたい」というイメージを膨らませていった感じです。

 元々、オリジナル曲を作りたかったから、自分から世界を広めてみようと思ったんです。ぜひ伝えたかったことなんですが、私は歌より作曲のほうが優先順位が高いんです。本当に進みたい道は、作曲家という。


── おおーっ。それは新事実。子供の頃から曲を作りたいというあこがれがあったという?

リツカ:そうですね。メロディーを考えるのは大好きです。でも、どうやれば曲の形になるのか、普通に生きてる(プロではない)人が作曲して意味はあるのかって考えてました。趣味で友達と楽しむことはできるけど、そこに一生懸命になって形になるのか分からなかったんです。だから私にとってやりやすかった歌から入ったという。

 もともと音楽が死ぬほど好きだったんです。だからある意味、ニコ動は音楽に入るきっかけをくれた不思議な存在というか。まさか、こうなるとは思ってなかったですね。



(次ページに続く)



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