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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第18回

最底辺に住む「天才」 孤高のボカロP、山本ニューの正体は

2010年03月06日 12時00分更新

文● 四本淑三

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売られていない音源を自分で作ろうと

―― そんな家族に恵まれた飽きっぽい山本さんが、音楽を作るなんて面倒なことを思い立ったのはなぜですか?

山本 僕はNHKの「みんなのうた」が大好きなんです。その中でペンギン・カフェ・オーケストラのサイモン・ジェフスが作った「父さんのつくった歌」というのがあるんです。これはみんなのうた史上の最高傑作だと思います。ただ、聴きたくても音源が出てない。だったら子供の頃に聞いた記憶を頼りに、自分で作るしかないと。それで気づいたら、初音ミクも買っていました。



―― 聴き手としての強いニーズから音楽を作り始めたわけですね。

山本 そのために「Fruity Loops」(FL Studio)というDAWソフトを買ったんです。最初は使い方がよく分からなくて、オーディオデータを貼ることしか出来ない。それまではマッシュアップをアホのように作っていたんです。

Image from Amazon.co.jp
FL STUDIO 7 FRUITYLOOPS EDITION

―― 楽器をやったことは?

山本 ピアノを習ったことがあるくらいで「きらきら星」しか弾けません。

―― 音楽に興味を持ったのは?

山本 ビジー・フォー※3がカバーする「サウンド・オブ・サイレンス」を聴いてからですね。小学5年くらいの頃ですね。それでサイモンとガーファンクルを聴くようになったんですが。

※3 ビジー・フォー : グッチ裕三、モト冬樹、ウガンダらによるコミックバンド。

―― そこからどうやってオリジナルを作るようになりましたか?

山本 こういう言い方すると何なんですが、僕、天才なんですよ。

―― ええ、否定はしません。

山本 ミックスやアレンジの技術はひどいと思うんですが、歌詞や曲に関しては天才だと思います。だから説明できないんです。結果だけ出てくるんです。

トリックアート美術館で撮った写真

―― 分かりました。ではニコニコ動画で活動するようになったのは?

山本 こんな僕でも人気者になれるのかと思ったんです。現実生活はいろいろ厳しいので、チヤホヤされたいじゃないですか。どうもここで動画を上げるとチヤホヤされるらしいと。誰もチヤホヤしてくれませんでしたけど。

―― とはいえマニアックな聴き手からは評価高いですよ。詞や曲の提供も含めて、作品の数がハンパじゃないし。

山本 でも音楽はみんなパクリですけどね。ある有名なミュージシャンが言ったんですが「一ヵ所だけパクったら、ただのパクリだ。でも2ヵ所、3ヵ所と自分でも分からなくなるくらいパクれば、それは自分の音楽だ」と。


―― なるほど。

山本 いま僕が考えたんですけど。

―― あー、もしもし! そんなに嘘が好きですか?

山本 一聴してラブソングに聴こえるような曲に、凶悪な歌詞を忍ばせておいて「いいなぁ」と思わせて喜ぶとか。いしいひさいちの「地底人」って漫画があるじゃないですか。誰も気づかないところで、むなしく嫌がらせをするの。ああいうのが好きなんですね。

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