「住宅都市整理公団」の「総裁」こと大山顕氏は、建造物マニアの間で有名な存在だ。
自身のサイトで盟友・長野氏とともに団地を鑑賞するフィールドワークを展開する傍ら、@niftyのエンタメ系情報サイト「デイリーポータル Z」(以下、DPZ)では、陸上にあるテトラポットや、デパートで裸のままにされたマネキンなどに注目し、読者に新しい価値観を提供し続けている。
風変わりな趣味に、エキセントリックな人物像を思い描きがちだが、実像の大山氏はいたって理性的だ。「身の回りにある面白いモノの『入り口』を紹介することだけに興味がある」と語り、そのアプローチの手段は確かに「オタク的」ではなかった。顔が見えるインターネット第13回は、高島平団地を歩きながら、そんな大山氏の思考回路を探ってみた。
住宅都市整理公団
2000年からスタートした、団地ブームの始祖といわれるウェブサイト。カタログ風の体裁で全国の団地を紹介しているが、そのコメントの関係なさっぷりが好評を博している。同サイトからDVD「団地マニア」(エイベックス・マーケティング)が発売されたほか、2008年には2冊の団地関連本を発行する予定。姉妹サイト「日本ジャンクション公団」も始めた。
団地に物語を読み取るな!
── 団地に興味を持ったのはいつ頃ですか?
大山 11年前ですね。決まった構図やコントラストで淡々と形だけを追う撮り方で団地を撮影したら面白いと思い、同じ研究室だった長野と意気投合して始めました。工場写真で世界的に有名なベッヒャー夫妻の作品を参考に、薄曇りの日に通路側を正面にして撮るというのを原則にしています。
── どうしてもベランダ側しか撮影できないときは、残念そうなコメントを残していますよね。
大山 ベランダ側を撮すと洗濯物が見えてしまうので嫌なんですよ。僕は団地の形にしか興味がないので、生活感や団地にまつわる物語などは読者に感じさせたくないんです。
団地はもともと色々な家族の物語を背負っているので、写真を見た人はすぐに団地の歴史やそこに住む人々の思いといった「団地物語」を読み取ってしまう。そういう方向ではなく、団地の形だけを見てもらうために、カタログ写真のように撮っているわけです。
レーダーチャートに意味はない
── 生活感に興味がないといいつつも、団地を評価するレーダーチャートに「荒廃度」がありますね。
大山 あれは適当です。サイトを作るときにカタログふうに見えるデザインにしかったから、ああいうものを載せただけで、何の意味もないんです。大体、基準も「DANCHI」のアルファベットから取っただけですから。Dならダンディ、Cならコーヒーか、とか。
── 女性的だって評されている団地のダンディ度が高かったりしますもんね(笑)。
大山 もう適当ですからね。たまに「ダンディって感じよく分かります!」って読者もいますが、不思議だなあと思います。僕も分からないのに(笑)。
(次ページに続く)
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