2009年3月、大阪万博のパビリオン跡地に建設予定だった「国立産業技術史博物館」計画の中止が決定、展示予定だった産業機械2万3000点あまりのほとんどは破棄された。
この事実は全国的な注目を集めるに至らず、技術大国ニッポンを支えた歴史的な証は、ひっそりと姿を消している。しかし、その一部はWebサイト「幻の国立産業技術史博物館」で現在も見ることができる。
サイトを運営しているのは、週刊情報誌の編集をしている一人の男性。アーカイブ系サイト「探検コム」を核に、宮武外骨(みやたけ がいこつ)の著書をアーカイヴした「猥褻廃語辞彙」など複数のサイトを立ち上げており、そのほとんどが自身で調べ上げた情報ソースを基にしている。
普段ジャーナリストとして仕事をしながら、プライベートの時間を使って、10年以上も「そこでしか読めない大ネタ」を、さながら本業の週刊誌レベルで発信してきた。その目的はいったい何なのか?
実名を明かさない条件で取材に応じてもらったので、仮に管理人氏の呼称を「探検コム」氏としよう。顔の見えるインターネット 第93回は、そんな探検コム氏の狙いと価値観を探っていきたい。
探検コム
1998年6月スタートの情報サイト。画像をベースに、過去に歴史的な事象のトリビアなどを紹介しており、画像点数は3000を超える。「幻の国立産業技術史博物館」や「戦争資料館」、「猥褻廃語辞彙」などのサイトは、探検コムの別館という位置づけになっている。
(次ページに続く)

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