2011年2月、1冊の電子書籍が話題を集めた。タイトルは「348人の女工さんに話を聞いてみました」。大正時代の警察が工場の従業員に労働環境を聞き取りしたレポートから女工の回答を集めて編集した本で、作者はブログ「コトリコ」を運営するコトリコ氏だ。
注目はその販促方法。販売するのは、電子書籍がダウンロードできるURLをプリントした「段ボール」だ。電子書籍マーケットではなく、低コストで参加できるAmazonの委託販売サービスを利用している。480円の値が付けられた段ボールには、販売予定の3月22日までに1000件近くの予約が集まったということだ。
※ 取材は東日本大震災発生以前に行なった。震災の影響を受け、販売時期は4月に延長されている(筆者註)
コトリコ氏は、この取り組みの目的に「個人が電子書籍販売で利益を得る」ことを掲げていたが、本来の目的は別のところにあるらしい。顔の見えるインターネット 第90回は、コトリコ氏の人生を掘り下げながら、その真意を探っていきたい。

この連載の記事
- 最終回 アンサイクロペディア“中の人”が語る、ユーモアの難しさ
- 第99回 マスコミが報じない“カルト”を記事に 「やや日刊カルト新聞」
- 第98回 「もし森ガールが森へ入ったら」アサイさんの超地道な努力
- 第97回 死刑は必要? 冷静に考えるためのWeb資料室「刑部」
- 第96回 NTT研究者が“錯覚”サイトにかける純粋な感情
- 第95回 ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ
- 第94回 諸君!革命的美人ブロガー安全ちゃんに刮目せよ!
- 第93回 探検コムの「広く浅く」が深すぎる!
- 第92回 金髪ギャル語でニュートリノ、Shoさまが熱い!
- 第91回 「計画断水」知ってる? ネットで日本の昭和を振り返る
- この連載の一覧へ