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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第136回

バイクレビュー

大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!

2021年08月07日 15時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) 編集●ASCII

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東京都内をぐるっと試乗
街乗りでもパワーを持てあます感じはナシ

CB1000R

 大型二輪の免許を取得したばかりの私。乗ったことがある大型バイクは教習車であるNC750のみで、大型二輪で公道を走るのは初めての体験。ということで、ここから先は「普段、250ccの普通二輪を乗っている者が、大型二輪に乗るとどう感じるのか」という観点で話を進めさせていただきます。ちなみに乗っているモデルがCBR250RRということからお察しの通り、筆者は1万1000回転までキッチリ回すタイプです。それでは試乗の様子を、ありのままレポートしながら話を進めたいと思います。

 私は試乗前に事前勉強は一切しません。というのも、最初のインプレッションを大事にしたいから。ですのでCB1000Rについて知っていることは、排気量1000ccの4発エンジンを搭載したネイキッドモデルで、スマホ連携ができるバイクということのみ。あと、見た目のイメージからして、教習車のお友達という程度の認識です。教習車はアクセルを捻っても、それほど加速しませんし、普段乗っているCBR250RRとてたかがしれています。過去に乗った普通二輪のモデルも、アクセルを回してナンボの世界。バイクとはアクセルを回す乗り物というのが筆者の考え。

 車両は青山のHondaでお借りしました。地下駐車場でエンジンを始動させたところ、その音の大きさと低音の太さに驚き。その音はまさに王者の咆哮で、普段乗っているCBR250RRとはまるで違います。しかもアイドリング回転数が1000回転程度と、自動車並に低いことにも驚愕。走行モードがSTANDARDであることを確認してから、クラッチをつないで地上階へと向かいます。この地下駐車場のスロープは急峻で、しかもグルグル回るタイプ。「ここでエンストしたら地獄だなぁ」と思いながら登坂しているのですが、そこをアイドリング状態の1速で登ってしまうのだから驚き。「大型バイクのトルクは太い」ことは教習車で理解していたのですが、それにしてもアイドリング状態で登ってしまうとは……。自動車でも、アイドリング状態で登ったクルマはないと思います。

青山一丁目駅すぐにある本田技研工業本社ビルを出てすぐに青山一丁目の交差点がある

4車線あり、右左折それぞれ専用レーンが設けられている

すぐにオレンジの車線。またいでしまったらアウトだ

 車両出口は外苑東通りに面しており、必ず左折しなければなりません。しかも青山一丁目の交差点が近いので、オレンジラインがすぐ近くにあります。時折白バイがいますので、うっかりオレンジカットは絶対に避けなければなりません。4車線あるうち、最も左側は渋谷方面。中央2レーンは信濃町方面、最右レーンが赤坂方面になります。車両をお借りした時は、いつも新宿方面へ行くので、中央レーンへ。クルマと違い、スッと合流できるのがバイクのよいところ。

青山一丁目の交差点。派出所側から交差点をみた様子

青山一丁目から信濃町方面へ向かう

 青山一丁目の交差点を直進しようと信号待ち。レッドシグナルがグリーンに変わり、普段通りにアクセルを捻った瞬間、身体が置いていかれそうなほど、鋭い加速でCB1000Rが発進。いきなり異次元モード突入で、その加速力はNISSAN GT-R NISMOでローンチ・コントロールを入れてスタートしたとき以上! あっという間に青山一丁目交差点前派出所を通過。借りた車両で 速度違反した、という事案は絶対に許されません。すぐにアクセルを戻してブレーキで減速。「抜いちまったヨ───アクセル」と、某漫画の平本さんのようにカッコよく言いたいのですが、現実は冷や汗ダラダラで足はガクガク。なんだコレは!?

S字コーナーの凸型舗装

右手に赤坂御所を見ながら緩やかな右コーナーへ

 アクセルをほんの少しだけひねって、2速、3速へとシフトアップ。クイックシフター搭載なので、アクセルを入れてないとシフトアップできません。回転数は1500回転程度。CBR250RRならアイドリングの回転で、この回転数で3速に入れたらエンスト間違いナシ。こんな低回転で走ったことなんて、今までありません。そのままS字コーナーへ侵入。このS字は路面に凸型の舗装がされており、サスペンションの様子を感じることができます。サスはかなり柔らかめでショックは穏やか。「なるほど、これは路面の起伏をよく吸収するタイプの足なのか」と理解します。なによりタイヤが、いかにもミシュランという剛性と柔らかさの両立と安心感が得られる質の高さにホッとします。車重は213kgと普通二輪に乗る身にとって重さを感じるのですが、重心が低いためか、積極的に姿勢変化ができそう。

権田原の交差点へ向かう直線

権田原の交差点。ここを右折する

 そのまま権田原の交差点へ。車線は2車線から一気に4車線へと増えます。新宿へ行くなら、直進して四谷三丁目を左折なのですが、借りた直後は車両チェックも兼ねて、いつも少しだけ遠回りをします。最右車線へ移動し、四谷方面のレーンへ。なぜ四谷へ向かうのかというと、赤坂御用地の北側に沿った都道には、赤坂オー・ルージュ(私が勝手に命名)があるから。

 オー・ルージュとは、ベルギーにあるスパ・フランコルシャンサーキットの名物コーナーの名前。厳密に言えば、下りながらの左コーナー(2コーナー)がオー・ルージュで、その後の登りながらのS字(3コーナーと4コーナー)をラディオンと呼ぶのですが、一般的にはこの複合コーナーをオー・ルージュと呼びます。縦横方向にGがかかり、さらにドライバーシートからの風景が壁に挑むように見えることから「現在世界中に存在するサーキットの中で、最も度胸が試されるコーナーのひとつ」と言われています。ちなみにオー・ルージュの名は、コーナー下に流れる川の名前から。なんでも、川の水が鉄分により赤く見えることから、フランス語で「赤き水」という意味のオー・ルージュと名付けられたそうです。

安鎮坂の標識

 赤坂オー・ルージュの正式名は安鎮坂。付近に安鎮(安珍)大権現の小社があったため、その名前が付けられました。ですが安鎮とは名ばかりの事故の名所で、有名なところでは過去に大物芸能人がバイクで走行中、坂下で自損事故を起こし重傷を負いました。また、赤坂御所という場所柄、警察官の姿も多く、管轄の赤坂警察署の重点取締ポイントにも指定されている場所。景気よくコーナーに挑んだクルマが、その先でキップを切られていた、という光景を時折目にします。

赤坂オー・ルージュ。右手に赤坂御所を望む

左手には神社庁がある

 CB1000Rは、赤坂オー・ルージュへ続く栃ノ木の並木道を走行。心地よい排気音を響かせながら、都内でも稀な、静かなたたずまいの直線道を走ります。すると、神社庁のあたりから路面が赤色に。オー・ルージュは赤い川ですから、こちらは赤い道のルート・ルージュといったところ。ですが路面がクセモノで、雨が降ると滑りやすくなります。

ややきつい下り坂を右に傾けながらダウンヒル

赤坂御所の門前

門前で2車線に増える。ここはキープレフトで左車線

 下り坂を、バイクを少し右に傾けながら侵入。バイクに重量があり低重心ですから安心して下り坂に挑めます。コーナーは次第にきつく、坂も急になっていきますので、リアブレーキで速度を調整。そして赤坂御所の正門で一気にキツい左コーナー。肩から曲がるように切り返します。車線が2車線に増えるので、右側の車線に行きたいのですが、ここはキープレフトで左側の車線を選択。というのも、上り坂の先にちょっとしたトラップがあるから。交差点なので赤信号なら止まります。フロント2ローターのブレーキは制動力抜群でタッチもシッカリ。

交差点の先は上り坂へ

 あとは緩やかな左に弧を描く急な上り坂を駆け上がります。CB1000Rの太いトルクは、不用意に回転数を上げなくてもグイっと加速。CBR250RRだと結構回していきますので、この違いを肌身を持って体感。

坂の頂上付近

迎賓館

迎賓館を過ぎてすぐに3車線に

 坂の頂上付近にあるのは、左側に学習院の中等部、右手に迎賓館。ここで2車線は3車線になるのですが、右側の車線のままだと、右折専用レーンに入ってしまいます。景気よく右車線を走っていたクルマが、ノーウインカーで左車線に変更したところ、合図不履行違反として笛を吹かれた現場を見たことがあります。ですのでキープレフトがベストというのが私の考え。ちなみにこの付近で路駐をすると、ドライバーが乗っていても、すぐにキップを切られてしまいますので注意しましょう。

四谷見附の交差点は5車線

四谷見附の交差点。斜向いに見えるのはJR四ツ谷駅

 そのまま直進すると四谷の交差点。左に曲がれば新宿へ、直進すれば飯田橋、右に曲がれば皇居へ向かいます。以上が、私がHondaから車両を借りた際に必ず通る最初のテストコースになります。

 ここまで走ってみて感じたのは、車重はあるものの、走り始めると「取り回しが……」ということはないということ。そして圧倒的なパワー。誤って信号ダッシュをした時は結構回してしまいましたが、その後は2000回転程度しか上げておらず、アクセルをちょっと回しては、すぐに戻すの繰り返し。ギアも3速までしか使っておらず、明らかにCBR250RRとは隔絶たる世界。4発エンジンは振動が少なく、実にモーターフィーリング。単気筒や2気筒は長時間乗ると手がしびれて……ということがあったりもしますが、そういったことはなさそう。一方発熱は凄く、停止中は汗が噴き出してきます。右足で地面に着くと、エキゾーストパイプが近いためか、ふくらはぎに熱を感じます。右足はブレーキペダル、着地は左足が鉄則です。

CB1000R

 何となく軽自動車に乗った後、大排気量車に乗るとアクセルペダルをあまり踏まないで走ってしまう違和感にも似ているのですが、いっぽうで「そうやって走る事を、このバイクは求めているの?」という疑問も沸いたり。

 バイクそのものに全体的に精密感や重厚感があり、高級品に触れているという感触にニンマリ。バイクも100万円を超えると、こういう質感が得られるのかと感動しきりです。クイックシフターもCBR250RRがカチッと入るのに対して、柔らかでありながら、シッカリ節度感のあるフィール。重量感と安定感、そしてカチッとした質感が、どこかBMWのクルマに似ているな、と乗りながら思った次第です。

CB1000Rのリア

 目的地に着いたところで駐輪作業。200kg超えのバイクは、慣れていないこともありますが、かなり体にこたえます。一休みして頂いたカタログをチェック。そこでCBR1000Rが145馬力のモンスターであること、そしてストリートファイター系のバイクらしいということを知り、「とんでもない化け物を借りてしまった」事に気づく大型二輪初心者。確かに最初は怖かったですが、乗ってしまえば何てことは……。

 その後、だんだんとコツをつかんできました。のんびり走らせることもできるのですが、味わいを楽しむというより、どうやら前傾姿勢で走ると面白い模様。味わいを求める向きには、CB1000Rは違うかもしれません。ですがストリートで戦うなら(誰と?)明らかにこちら。

ビッグトルクを伝えるリアタイヤ

 当然ながら高速道路も走行。CBR250RRで100km/h巡行をすると、6速8000回転キープとなり、色々と大変なのですが、こちらは6速4000回転でド安定。クルマも小排気量と大排気量で差がありますが、バイクだと、その差はより歴然といったところ。ただカウルがないので、空気の壁を全身で受け止めることになります。折角なので、合流などで思いっきり引っ張ってみることに。エンジンモードをSPORTにセットし、前傾姿勢で身構えながら2速でアクセルを思いっきり捻ると145馬力が炸裂! 官能的な排気音と共に怒涛の加速は、今までのスポーツカーでは味わったことのない世界で刺激的。Hondaが2025年で国内での四輪用エンジン生産を終了する報道があり、VTECなどに心をときめかせた身としては寂しい想いをしていたのですが、我々には2輪があると思った次第。そしてCB1000Rがあれば、四輪のスポーツカーはイラナイとさえ思えてくるから不思議。

 とはいえ、二輪も2035年でガソリンエンジン搭載車の国内販売は禁止になる方向。あと10年ちょっとで、この刺激的な乗り物を手に入れることができなくなるというわけです。ですので、アラフォーの私としては、年齢的に「ガソリンエンジン搭載のバイクを、販売規制前に購入し生涯大切に使いたい」と考えたりも。CB1000Rを手に入れ、郊外のワインディングで安全とマナーを守りながらライディングスキルを磨くチョイ悪オヤジ。いいかもしれません。

 こうして大排気量バイクに触れた私。ではCBR250RRが霞んでしまったのかというと、それはなく。CBR250RRは「どこまでも躊躇せずアクセルを思い切り回せる楽しさ」があり、一方のCB1000Rは「どこまでもアクセルを回せないもどかしさ」を感じました。つまりCB1000Rを購入したとしても、CBR250RRは手放せないなぁと。バイク乗りの方によっては、趣味の大型バイクの他に、普段乗り用としての原付2種の2台持ちをされている方がいらっしゃるとか。凄くわかります。原付2種なら、ファミリー特約で保険料が安くなりますしね。このように、バイクの世界は「大は小を兼ねない」のですね。

ウイングマーク

 純ガソリンエンジン搭載バイクの発売禁止の日が近づいているのは事実。アラフォーという年齢を考えると「ガソリンエンジンでアガリのバイクを」という気持ちにもなります。CB1000Rは、自分にとって、その候補になりうる1台でした。

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