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安価なHyper-V貸しでSaaS事業者のスモールスタートを応援

クラウドなのに中身が見える!IDCフロンティアの「NOAH」

2009年09月08日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ヤフーグループ傘下でデータセンター事業を展開するIDCフロンティアは、「NOAHプラットフォームサービス」という新型ホスティングサービスを展開している。米国とは異なる日本版クラウドを標榜するサービスの概要と魅力について、担当者に聞いてみた。

ソフトバンクグループで
データセンター事業をメインに

NOAHプラットフォームサービスに関して伺った株式会社IDCフロンティアビジネス開発本部 サービス開発部 部長 大屋誠氏(左)、サービス開発部 企画グループ 野間和知氏(右)

 まずはIDCフロンティアの会社概要を整理しておこう。IDCという名前の通り、同社は1986年に設立された通信事業者である国際デジタル通信(IDC)に端を発する。その後、大手通信事業者であるケーブル&ワイヤレスの買収に伴い、ケーブル&ワイヤレスIDCに社名を変更。ピーエスアイネット、東京インターネット、エクソダス コミュニケーションズなどのISPやデータセンター事業者との合併を経て、2005年にソフトバンク傘下に入る。その後、通信事業を日本テレコムIDCとして分割し、ソフトバンクIDCとしてデータセンター事業に専念。2009年2月からヤフーグループに入り、IDCフロンティアに社名を変更した。現在は同じくヤフーグループのファーストサーバがホスティング事業を手がけるのに対して、IDCフロンティアはデータセンターをメインに、ハウジングやよりインフラに近いビジネスを行なっている。

 同社の事業の中心になるデータセンターは、関東に7カ所、大阪に1カ所、北九州に1カ所ある。特に北九州の「アジアン・フロンティア」は、熱循環や空調効率の最適化を実現しつつ、需要に応じて500ラック規模単位での建築できるモジュラ構造を採用した先進的なもの。こうした国内最大級のインフラを元に展開しているのが、今回紹介する日本版クラウドサービス「NOAHプラットフォームサービス」である。

構成技術が見える!NOAHの特徴

 NOAHはNo Other Application &Hardwareの略で、「所有から利用」を意識したIDCフロンティアのクラウド系サービスのブランドとなっている。昨年、ネオジャパンのdesknet'sを中心にした中小企業向けのSaaSが先行して開始し、今年の6月にSaaSに取り組むプロバイダ向けとしてNOAHプラットフォームサービスをスタートさせた。

 NOAHプラットフォームサービスは、流行の言い方をすればSaaS事業を行うためのインフラを貸し出すPaaS(Platform as a Service)である。ただ、先行するグーグルやAmazonのEC2などの米国版クラウドが雲のように中身を覆い隠すのに対して、NOAHプラットフォームサービスは技術要素が明確になっている。「NOAHはNEC製のサーバやストレージを採用したインフラ上に構築されており、プラットフォームとしてマイクロソフトのHyper-V環境が用意されており、オプションでWindows Server 2003/2008やMicrosoft SQL Server 2005/2008などを利用できます。ユーザーさんには、必要なリソースに応じてCPUやメモリディスクなど異なる18種類の仮想マシンから最適なタイプを選んでもらいます」(IDCフロンティア サービス開発部企画グループ 野間和知氏)ということで、きわめて明確だ。日本版クラウドならではの特徴として、データセンターも国内にあるのでレスポンスが高く、もちろんサポートも日本語で行なわれる。

 基本サービスを見ると、CPUは1個から4個まで、メモリは最大16GBまで選べる。ディスク容量も40GBから用意されており、利用状況に合わせてリソースを変更できるきわめて拡張性の優れたサービスであることがわかる。軽量なWebサーバであれば、1CPUで、1GB単位のメモリを選択し、トラフィックが増えてきたらCPUやメモリを増やしていけばよい。一方で、ヘビーなDBサーバであれば、4CPUで16GBメモリの構成を選択する。アプリケーションやOSが物理サーバに結合せず、成長に合わせて柔軟に変えられるのが大きなメリットだ。その他、電子証明書やウイルス・スパム対策、DNS管理など幅広いオプションもあり、必要に応じて選択できる。

事業の規模にあわせられる拡張性の高さが大きな売り

 また、同等スペックで比較した場合、他社に比べてかなり安価なのも特徴。前述した1CPU、1GBのメモリの場合、ネットワークやファイアウォールも込んで、月額料金は2万5300円(9月末まではプランPetitを1万8000円で提供)で済み、しかも1ヶ月単位で利用できる。さらに、あらかじめサーバやネットワークが冗長化されているので、システムの可用性が高さのも大きな売り。物理サーバがダウンしても、冗長構成された別のサーバに素早くマイグレーションされる。もちろん、root/administrator権限が渡されるので、共用サーバと異なり、サービスの設定やアプリケーションのインストール、開発なども自由に行なえる。

 IDCフロンティア サービス開発部長の大屋誠氏は「冗長構成をとっているけど、安価というのが売りです。SaaSやASPの事業者様も、初期投資を抑えてシステムを構築し、サービスとともに増強できます」とサービスのメリットをこう語る。また、マイクロソフト+NECという日本市場でなじみ深い構成で提供しているため、中小企業にもとっつきやすいという特徴もある。

 今後は協業という形で、NOAHプラットフォーム上で提供されるSaaSも強化していく予定。先行する米国型クラウドに対して、ユーザーに親しみやすいマイクロソフト製品でクラウド環境を構築したNOAHプラットフォームサービスがどこまで受け入れられるか、注目していきたいところだ。

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