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メリットはマルチクラウドとオートスケールだけじゃない!

さわって納得!RightScaleでサーバー管理が大きく変わる

2012年03月29日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●IDCフロンティア

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3月23日、IDCフロンティアのクラウドサービスにおいて「RightScale Cloud Management Platform」(以下、RightScale Platform)の利用が可能になった。システム管理を大きく変えるRightScaleのメリットを、実際に触りながらレビューしていこう。

クラウドを統合管理するRightScaleのインパクト

 RightScale Platformは、大量のサーバーを効率的に管理するために作られたクラウド統合管理ツールで、米RightScaleから従量課金型サービスとして提供されている。Amazon Web ServiceやRackspaceをはじめ、韓国のKT、インドのタタ・コミュニケーションズなど、グローバルでさまざまなクラウドをサポートしているほか、CloudStackやEucalyptusなどのクラウド基盤に対応したプライベートクラウドの管理にも対応する。これら複数のクラウドをAPI経由で統合管理できるのが、RightScale Platformの最大のメリットとなる。

 また、負荷ピークに合わせてサーバーを自動拡張・縮退させるオートスケールや、同一構成のサーバーを迅速に立ち上げることができるServerTemplateも大きな特徴だ。これらの機能により、インフラの構築や運用の工数を大幅に簡素化し、ITエンジニアの業務サイクルをより生産性の高いものに変えることができる。

RightScaleによるインフラ設計の効率化

 2011年11月、Yahoo! JAPANグループのデータセンター事業者として知られるIDCフロンティアが日本のデータセンター事業者として初めて、このRightScale Platformによるクラウド管理に対応すると発表した。そして、2月にはβテスト開始にまでこぎつけ、いよいよ3月23日から本格サービスがスタートすることになった。4月にはRightScale Platformとクラウドサービスをパッケージ化し、一定範囲の利用なら定額になる料金体系を提供。円建て決済や日本語サポートも提供される予定だ。

 こうしたIDCフロンティアのクラウド戦略やRightScaleの概要については、以下の記事もあわせてご一読いただきたい。

15分で3ティアが作れるServerTemplateの威力

 さて、クラウド統合管理ツールの決定版と喧伝されるRightScale Platformだが、実際のメリットは使ってみないとわからない。また、IDCフロンティアのクラウドとどのように連携するかも興味深いところだ。そこで、今回はIDCフロンティア ビジネス推進本部 新基盤開発部の金井崇氏にデモンストレーションを行なってもらった。

IDCフロンティア ビジネス推進本部 新基盤開発部 金井崇氏

 連携はまずオンラインでRightScaleのアカウントを作成し、IDCフロンティアのクラウドを関連づけるという作業を行なう。具体的には、IDCフロンティアのセルフポータルからアカウントやAPIキーなどを取得し、RightScaleのアカウントの設定で登録すればよい。

IDCフロンティアでのアカウント取得RightScaleの「Clouds」タブでIDCフロンティアを追加
IDCフロンティアのアカウントやAPIキーなどを登録

 登録以降、RightScaleでのサーバー管理がスタートし、後述するリッチな構築・運用管理機能が利用できる。ただし、グローバルIPアドレスの追加、スタティックNATの変更、ロードバランサーのルールなどの操作はRightScaleからは行なえない。これらの設定はIDCフロンティアのセルフサービスのポータルから行なう必要がある。これは、RightScaleがCloudStackのこれらの機能に対応していないためである。

 最初にチェックしたいのが、RightScale Platformの代名詞ともいえるServerTemplateである。通常、サーバーを構築する際は一般的にLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)環境を構成し、TomcatやRailsなどのアプリケーションを組み込む必要がある。

 ServerTemplateは、用途別にカスタマイズする前のOSイメージやアプリケーション、さらには設定情報までを1つのテンプレートとして定義し、同一構成のサーバーやシステムを迅速に立ち上げるための機能だ。ServerTemplateの実体は、仮想マシン上で設定などの操作を行なうRightScriptと呼ばれるスクリプトの固まりなので、これらを詳細にカスタマイズすることも可能だ。料理でいえば材料だけではなく、その配合まで明記されたレシピといえる。

IDCフロンティアが作成したMySQL用ServerTemplateServerTemplateの実体は仮想マシン上での設定を行なうスクリプト

 金井氏は「RightScale Platformでは、Webアプリケーションの標準構成であるWebサーバー、アプリケーションサーバー、DBサーバーという3ティア(階層)を意識してテンプレートが作られています。弊社もIDCフロンティアのサービスを用いたテンプレートや操作手順などを記載したドキュメントもイチから作成しました」と述べており、迅速にシステムの構築が行なえる。さらに作成したServerTemplateは自社のサービスで転用することはもちろん、RightScaleのマーケットプレイスで販売することもできる。

IDCフロンティアが設計した3ティアのシステム

 これらのServerTemplateをベースにサーバーを組み合わせ、複数のサーバーにリクエストを振り分けるロードバランサーなどを加えることで、簡単にシステムが構築できる。「典型的な3ティアの構成であれば、15分くらいで構築できます」(金井氏)とのこと。

運用管理ノウハウまでテンプレートに埋め込める

 さらにServerTemplateのすごいところは、監視項目や設定まで盛り込めるという点だ。つまり、システムインテグレーターや管理者が培ってきた運用ノウハウをテンプレートとして流用できるわけだ。RightScale Platformは監視機能が充実しており、「各アプリケーションサーバーの動作状況やサーバーのCPU・メモリの利用率、Apacheのリクエスト数など数多くの監視項目がデフォルトで用意されています」とのこと。これをチェックボックスで選択して、ServerTemplateに盛り込んでおけば、仮想マシンの起動時から監視がスタートすることになる。

サーバーの監視項目は多岐に及んでおり、アラートを挙げられる

 これらの監視設定はオートスケールや障害対応などと連携させることが可能だ。つまり、一定のしきい値を超えたときにアラートを挙げたり、オートスケールでサーバーを拡張・縮退するといったことが可能になる。「オートスケールを動作させる場合は、最小と最大のインスタンス数を指定した『アレイ』という単位を作ります。このアレイと監視を組み合わせ、たとえば一定のリクエスト数やCPU能力を超えた場合に、サーバーを拡張するといったことが自動化できるのです」(金井氏)。

オートスケールのアレイ設定(最小-最大)

 また、障害対応も同様。金井氏は、2つのDBサーバーがあり、片方のDBサーバーで障害が起こり、マスターとスレーブを切り替えるというデモを披露してくれた。「DBサーバーの切り替えなんて滅多にやらないので、まず手順書を探すのに時間がかかります。しかも障害から復旧させるため、焦って作業をやりますので、コマンドをミスします」(金井氏)ということで、障害時にもかかわらず、さらに泥沼にはまってしまうことも多い。

 これに対して、RightScale Platformでは、ステータスの確認、レプリケーションを開始するためのログの取得、権限の設定変更、ダイナミックDNSでのサーバーの書き換えなどの切り替えの手順をすべてスクリプトとして登録できる。こうしたランブック(運用手順書)の自動化により、操作ミスは劇的に削減され、スキルのないオペレーターでも確実な運用管理が行なえる。「運用コストでIT予算の8割をかけるのはやはりもったいないです。こうした自動化により、運用管理がシンプルになり、生産性が効率化すれば、こうしたコストを削減できます」(金井氏)という。

バージョン管理とマルチクラウド

 そして、もう1つ運用管理において大きなインパクトとなるのは、ServerTemplateをバージョン管理することで、いわゆる変更管理が可能になる点だ。「2つのバージョンを比較して、どの部分が変更されたかなどをハイライト表示できます。差分を比較することで、障害対応など継続的に改善していくことが可能になります」(金井氏)という。

スクリプトの変更履歴が色分け表示される

 ServerTemplateは、IDCフロンティアのものや汎用性の高いRightScale御謹製のもの、あるいはマーケットプレイスでも多数公開されており、用途に合わせて利用すればよい。しかし、ServeTemplate自体をイチから設計するのは、やはり手間がかかるという。インストールするOSやアプリケーションを決め、設定や変数値を登録。これに監視項目やロードバランサー等を組み合わせつつ、オートスケールや障害対応を設定していく必要がある。

 金井氏は、「最初の設計フェーズは頭を使います。私も納得できるシステムを作るまで、1ヶ月かかりました。ただ、1回作ってしまえば、それを使い回せばよいので、効果がすごく大きいです」と語る。また、IDCフロンティアのServerTemplateはbashで作られているが、「RightScale製のテンプレートはRubyベースのChefで用いられているため、編集するのはやや敷居が高いです。まずは弊社のテンプレートを試してもらい、マルチクラウドなどより野心的なシステムを試す場合はRightScaleのテンプレートにチャレンジしてもらいたいです」(金井氏)という。

RightScale製のServerTemplateはRubyベースのChefで記述されている

 さらにRightScale Platformは、複数のクラウドを使い分ける「マルチクラウド」に対応するのが大きな特徴だ。冒頭に説明したとおり、RightScale Platformではグローバルでさまざまなクラウドをサポートしており、これらを一元的に管理できる。「たとえばIDCフロンティアのクラウドで構築したシステムのバックアップを、オンラインストレージであるAmazon S3に置くといった処理が可能になります」(金井氏)とのことで、設定メニューから他社のクラウドを簡単に追加し、1つのシステムとして利用できる。

クラウドを活用した新しいビジネスに最適

 ここまでRightScale Platformを見てきたが、いかがだっただろうか? RightScaleというと、オートスケールやマルチクラウドといった特徴がよく取り上げられるが、やはりServerTemplateを使った運用管理の自動化が一番のメリットだと思われる。今まで高価なシステム管理ツールで搭載されていなかった高度な自動化機能をクラウド上で月額課金で利用できるのが、RightScale Platformの大きなメリットといえる。

 こうしたRightScale Platformを活用することでもっとも大きなメリットを得られるのは、やはり数多くのサーバーを管理するサービスプロバイダーやインターネット事業者であろう。クラウドのメリットを理解するこうした事業者がクラウド導入の次のステップとして、RightScaleによる運用管理の省力化、マルチクラウドやオートスケールの活用を行なっていくというのが、導入パターンとして一番ふさわしいだろう。

 しかし、ユーザーの裾野を拡げるという意味では、クラウドビジネスを拡大したいシステムインテグレーターが大きなターゲットになる。現在、システムインテグレーションの業界では、オンプレミスでのシステム構築やIT機器販売の市場が縮小し、コモディティ化されたITサービスをユーザーに最適化した形で提供するというビジネス形態に変容しつつある。こうした新しいビジネスを支えるためのインフラとして、RightScale+IDCフロンティアは最強だ。システムインテグレーターの飯のタネともいえるシステム設計や構築、運用ノウハウなどをServerTemplateに盛り込むことで、コスト削減やオペレーションの自動化が図れる。さらにマルチクラウドやオートスケール、プライベートクラウドとの連携などの付加価値を提供することで、従量課金型の新たなビジネスを開拓できるわけだ。

 さまざまなメリットを持ちながら、今まで敷居の高かったRightScaleだが、IDCフロンティアがサポートしたことにより、俄然クラウドサービスの有力候補に躍り出た。その実力を堪能するためには、さっそく同社サイトで試用するのがお勧めだ。また、セミナーも随時行なっているので、興味があるユーザーは参加するとよいだろう。

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