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第1回 長崎編

キノコ屋からイノベーション

雲仙のキノコ工場で「日本の元気」を見つけた!

2009年10月19日 00時00分更新

文● Web Professional編集部

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 雲仙きのこ本舗・愛野工場(長崎県雲仙市)の屋上には、約6000万円かけた太陽光発電装置が設置されている。「東京発の便がちょうど上空を通る。飛行機からソーラーパネルが見えたら、目立つでしょ」とは雲仙きのこ本舗の楠田喜熊社長。

 もちろん、目立つだけが目的ではない。「キノコを作るということは、冷やすということなんです。ソーラーパネルを屋根に載せると、そこで太陽光の熱を奪ってくれますから、熱が遮断される。熱が遮断されれば工場全体の冷却コストが抑えられる。さらに発電までできるわけですから、キノコ屋にとってソーラーパネルは一石二鳥なんです」

雲仙きのこ本舗 培地からなめこを収穫しているところ

 とはいえ、ソーラーパネルで発電するのは効率が悪いので、今後は水を温めることに使う。「発電よりもお湯を沸かす方がずっと熱交換の効率が高いのです。ハウス栽培では重油を使って温めるけど、ソーラーパネルで沸かしたお湯を使って、ハウスを暖めることにした」という。確かに工場の隣にには立派なハウスが建てられている。「今はマンゴーを育てているんだけど、マンゴーは実がなるまでの3年間暖め続けないといけない。今後は地球温暖化で作りやすくなるから、マンゴーなのかトマトなのかパイナップルなのかわからないけど、全工場にハウスを建てますよ」と話す。地球温暖化まで利用して野菜や果物作りとは、さすがである。


ソーラーパネルもマンゴーも、目的は外から人を呼ぶこと

楠田喜熊社長
雲仙きのこ本舗の楠田喜熊社長

 「やる気、根気、アイデアでキノコ屋からイノベーション。YouTubeのような新しいことをどんどん取り入れて、お客様を飽きさせない仕組みを作りたい」のが楠田社長の発想の源だ。雲仙きのこ本舗のある島原半島は、県下最大の農業地帯。しかし、高齢化が進んでおり、若者が後を継ぐには地域に活力がないといけない。「島原半島は農業後継者が多い方とはいえ、農家の所得を増やさないことには後を継いでくれる人の未来が描けない。そこで、イベントをやって都会から人を呼んできたり、情報を発信して外の人に地域のことを知ってもらうことが重要」と考えているのだ。

「南島原市にはもう40回やっている生きエビで鯛を釣る『加津佐鯛釣り大会』がある。雲仙きのこ本舗でも『きのこ祭り』というイベントをやって、外から人が来るようにしている」というから、地域おこしの想いは本物だ。

「祭りをやって、外から人が来ると、ゴミが増えて困ると言う人もいる。でも、ゴミは節度の問題で、地域を活性化することとは別の話だと言ってるんです。すでに民泊できる農家を11戸まで増やしました。1軒で5人くらい泊まれるので、小さな小学校であれば一学年全員が泊まれる」という。楠田社長は観光協会や農業法人協会など、地域のさまざまな役職に就く「地元の名士」でもあり、スローフードや地産地消といった最近の流行を取り入れながら、地域の活性化に尽力しているという。

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