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KDDIの事例でわかるオープンイノベーションでスタートアップ、大企業双方が事業価値を最大化するためには

CEATEC 2023特許庁スタートアップ支援班主催セッション「大企業とスタートアップがうまく連携するために意識すべきポイントとは?」

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

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 2023年10月18日、特許庁スタートアップ支援班はCEATEC 2023において、パネルディスカッション「大企業とスタートアップがうまく連携するために意識すべきポイントとは?」を開催した。パネリストとして、株式会社エイシング代表取締役CEOの出澤純一氏、出資先スタートアップへの知財支援を担当するKDDI株式会社総務本部シニアエキスパートの川名弘志氏、特許庁のモデル契約書策定メンバーらが参加し、オープンイノベーションにより得られる価値を最大化するためのポイントについて議論した。

CEATEC 2023会場内「Future Hub」ステージで行われたパネルディスカッション

 最初に、特許庁のオープンイノベーションに関する取り組みとして「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書(OIモデル契約書)」について、特許庁 総務部 企画調査課 知的財産活用企画調整官の清野千秋氏が紹介した。

特許庁 総務部 企画調査課 知的財産活用企画調整官 清野 千秋氏

「OIモデル契約書」は、大企業とスタートアップの連携における具体的な想定シーンを設定して、知財の観点から条項のポイントを解説したものだ。現在、新素材編、AI編、大学編があり、特許庁のオープンイノベーションポータルサイトで公開されている。また、オープンイノベーションの心がまえをまとめた「事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進のためのマナーブック」(2023年5月作成)もあわせて公開している。

 パネルディスカッションでは、この「マナーブック」でも紹介している「マナー4箇条」――(1)ビジョンとゴールのすりあわせは徹底しよう、(2)リスクヘッジではなくスピード重視で!、(3)「双方の事業価値の総和の最大化」を判断基準にしよう、(4)困ったときは「OIモデル契約書」にヒントあり――をテーマに議論を展開した。

 パネリストには、株式会社エイシング 代表取締役CEOの出澤純一氏、KDDI株式会社総務本部シニアエキスパート(知的財産戦略担当) で弁理士の川名弘志氏、日比谷パーク法律事務所 弁護士・弁理士・YouTuberの井上拓氏、特許庁 総務部 企画調査課 知的財産活用企画調整官の清野千秋氏。司会として、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT) 知財戦略部 主査の高田龍弥氏の5名が参加した。

その1:ビジョンとゴールのすりあわせを徹底する

 大企業とスタートアップの共創にはビジョンとゴールの設定は必須だが、双方の期待する成果やリターンには違いがあることが多く、そのすりあわせは意外と難しい。予算や資金面の期待値にもギャップがあり、スタートアップの資金調達の困難さも協業や事業推進の障害となる場合もある。

 川名氏は、KDDIにおける事業共創の進め方として、「2011年からスタートアップを支援していますが、すぐに事業共創とはなるケースが多くないよう思います。最初は、シナジーがありそうなスタートアップに対して人や資金、技術などを提供して、成長を支援しています。私も知財支援として入ると、スタートアップ側でできることとできないことがわかってきますので、お互いによく理解し合うと、無茶な要求をせず、現実的な落としどころが定まったゴールを目指すことができるように思います」と説明。

KDDI株式会社 総務本部 シニアエキスパート(知的財産戦略担当)、弁理士 川名 弘志氏

 井上氏は、「モデル契約書の作成は、もともとは公正取引委員会が下請けの搾取を調査していくなかで、オープンイノベーションで同様の問題が顕在化したのが始まりです。スタートアップを下請けとして扱わずに、きちんと対等に見ていれば問題は起こらない」と話す。

日比谷パーク法律事務所 弁護士・弁理士・YouTuber 井上 拓氏

 出澤氏はスタートアップの観点から、「まさに大企業とは意識のズレを感じます。対等に見てもらえるかどうかが大事。従来の受託契約では共創で発生した知財は大企業側の権利になっていましたが、我々のアイデアや技術から派生したものであれば、我々にも権利がある。その落としどころを探る必要があるとは思います」と補足した。

株式会社エイシング 代表取締役CEO 出澤 純一氏

 高田氏は「お金を出したんだから全部うちのもの、というジャイア二ズムはよくないですね。まったく逆の発想でスタートアップと協業しているKDDIでは、オープンイノベーションを多く活用している非通信(B to C)の事業領域の売上規模は10年で売上が10倍ほどへと大きく成長している。KDDIのスタンスのほうがスタートアップとの連携は成功につながる、と言えるのではないか」と意見を述べた。

 産学連携では大学との知財交渉でも似たような問題が起こっている。東京工業大学でのスタートアップ支援経験がある清野氏は、「大学にとって“知”は非常に重要なもの。簡単には企業に渡せないが、大学の先生方は社会実装したいという思いを強く持っています。基礎研究からは具体的な社会実装のイメージがつきにくく、価値付けが難しいところです」とすりあわせの難しさを語った。

独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT) 知財戦略部主査 高田 龍弥氏

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