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ドローンやIBS患者向けアプリなど、高校生、大学生起業家が事業アイデアを発表

IoT H/W BIZ DAY 2023「学生起業家 事業アイデアピッチコンテスト in CEATEC」レポート

連載
IoT H/W BIZ DAY 2023

(写真左から)司会のASCIISTARTUP ガチ鈴木、
コメンテーターを務めた株式会社InnoProviZation代表取締役CEO 残間光太郎氏、
N高等学校 2年生 中井結菜氏、
株式会社AirFilmsJAPAN 代表取締役 鈴茂佑太氏(N高等学校 2年生)、
情報経営イノベーション専門職大学 水島徳昭氏、
お茶の水女子大学 山下梨佐氏、
コメンテーターを務めたF Ventures代表パートナー 両角将太氏

 2023年10月17日から20日まで、幕張メッセにて「CEATEC 2023」が開催された。ASCII STARTUPは、同会場内にて、先端テクノロジー関連事業者のビジネスカンファレンスイベント「IoT H/W BIZ DAY 2023」をコラボ実施。スタートアップ21社の展示と、次世代向けステージ「Future Hub」で3つのセッションを展開した。

 本記事では、20日に実施したセッション「学生起業家 事業アイデアピッチコンテスト in CEATEC」の模様をお伝えする。このセッションでは、事業アイデアを持っていたり、すでに起業していたりする、高校生と大学生の4名がピッチを披露した。

日本のドローン市場を開拓する、鈴茂佑太氏

株式会社AirFilmsJAPAN 代表取締役 鈴茂佑太氏(N高等学校 2年生)

 ドローンを知っているものの、具体的な楽しみ方や活用方法がわからない人は多い。また、防災や観光、農業など、すでにドローンの活用が進められている分野においても、その安全性に警戒感を抱いている人が多いという。

 AirFilmsJAPANは、人と人とのつながりを通じてドローンを身近なものにし、ドローンの魅力を広めていくというビジョンを掲げている。具体的には、ドローンの撮影体験をギフトとして贈れるサービスを考案した。

 このビジネスモデルを成立させるための課題は、認知獲得と技術者の確保、システムの構築だという。今後は事業資金や実績づくりに向けて、イベントの撮影やプロモーションムービーの制作をしながら、SNSを活用して、消費者と技術者にサービスの認知を広げていく。

 代表の鈴茂佑太氏はN高等学校の2年生だ。小学3年生のときにドローンで撮影された映像に感動して以来、空撮を続けているという。鈴茂氏は「最終的には、ドローン業務のマッチングプラットフォームをつくり、ビジネスをシステム化していきたい」と語った。

IBS患者に寄り添うアプリ「IBSmile」を開発、中井結菜氏

N高等学校 2年生 中井結菜氏

 N高等学校 2年生の中井結菜氏は、IBS患者に寄り添うアプリ「IBSmile」の開発に取り組んでいる。IBS(過敏性腸症候群)は、自律神経の乱れやストレスが原因の疾患だ。腸に異常がないにもかかわらず、慢性的な下痢や便秘、腹痛に悩まされる。日本人の10人に1人がIBS患者という調査がある一方、その確実な治療方法はまだないという。

「IBSmile」はIBS患者同士で、交流や情報交換ができるアプリだ。匿名の投稿が可能で、悩みを打ち明けやすい場所をつくる。マネタイズ施策は、アプリ内広告と研究機関へのデータ提供を想定している。また、マーケティング戦略としてSNSの活用も視野に入れている。

「IBSmile」の強みは、中井氏自身が元IBS患者であるため、患者目線のサービス開発ができることだ。中井氏は元重度の患者で、中学生時代につらい経験をしたという。また、IBSの悩みを一人で抱え込んでしまい、不登校になってしまった過去も持つ。

 中井氏はアプリ開発に際して、IBS患者にヒアリング。その経験も踏まえ「IBSが原因で学校を中退してしまった人もいた。IBSを知らない人も多く、IBS患者が生活しにくい社会だと感じる。IBS患者が生きやすい、心から笑える世界を実現していきたい」と語った。

ヘンプ(麻)由来のオリジナルプロテインを開発、水島徳昭氏

情報経営イノベーション専門職大学 水島徳昭氏

 2050年、人口増加を背景に、世界的なタンパク質不足が発生するといわれている。また、日々の食事の中で、添加物やアレルギー成分が気になる人も多いだろう。そこで水島徳昭氏はヘンプに注目した。ヘンプは向精神性成分をほとんど含まない合法なアサ科の植物だ。昨今、環境にやさしく活用の幅が広い素材として注目を集めているという。

 ヘンプの特徴として、成長過程で大量のCO2を吸収することや少量の水や農薬で育つこと、短期間で収穫可能なことなどが挙げられる。活用事例も豊富だ。アパレルや建築資材、バイオ燃料、紙、動物の飼料など、さまざまな分野で使われている。

 水島氏は、環境にやさしいヘンプを活用した自社オリジナルプロテインを開発中だ。9つの必須アミノ酸が含まれており栄養価が高く、大豆や乳製品にアレルギーを持つ人でも摂取できるという。またタンパク質に加え、乳酸菌やオリゴ糖、マルチビタミンなどを配合することで、機能性を高めている。

 世界のヘンプフード市場規模は拡大フェーズにあり、2022年から2023年の成長率は12.75%を記録。また、国内のタンパク質補給食品マーケットも成長を続けており、同社のオリジナルプロテインもこうした市場の成長に合わせて拡大していく展望だ。水島氏は商品を通じてエシカルな消費文化を広げていきたいと考えているとのことで、年明けにはクラウドファンディングを活用して、商品の先行販売を行う予定だ

家事参加のハードルを下げる「0蔵庫」を開発、山下梨佐氏

お茶の水女子大学 山下梨佐氏

 お茶の水女子大学の山下梨佐氏は、共働き世帯の増加に伴って兼業主婦の割合が増加しているにもかかわらず、女性の家事負担が重いままであることに疑問を抱いたという。そしてその原因の一つが、食事の準備における「名もなき家事」だと考えた。食事の準備というと料理だけをイメージしがちだが、実際はそうではない。

 たとえば、買い出しのためにメモをすることや、冷蔵庫にある食材から作れる料理を考えること、冷蔵庫にまだあることを忘れて追加で購入してしまった食材を腐らせないように工夫することなど、料理する以前に、名前もない作業がいくつもある。これらは主婦の脳内で完結していることが多く、家事が属人化する原因になっている。

 山下氏は、名もなき家事を可視化する料理サポートアプリ「0蔵庫」を開発している。アプリではまず、冷蔵庫にある食材で作れる料理が表示される。料理を選択すると、不足している食材が自動で買い物リストに追加される。また、冷蔵庫内の食材一覧が表示され、賞味期限が近い食材をアプリで把握できるという。

「0蔵庫」の特徴は、視覚的にわかりやすいアプリ画面で、料理ビギナーが家事に参加するハードルを下げることだ。これにより家事をしない人の家事参加を促進し、誰もが主婦になる時代の実現を目指すという。山下氏は「事業やビジョンに共感してくれる企業と連携して、アプリ開発を進めていきたい」と語った。

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