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中小製造業の課題解決へ 省エネから自動化技術、知財を活用

地域交流フォーラム2024「工作機械」

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

 2024年2月22日、千葉県産業振興センター東葛テクノプラザ主催、中小機構 関東本部 東大柏ベンチャープラザ共催で、地域交流フォーラム2024「工作機械」が柏市の東葛テクノプラザにて開催された。地域交流フォーラムは、産業技術の振興や新産業の創出と発展に向けて、千葉県内のベンチャー企業や中小企業、大学、研究機関等との交流を目的に毎年開催されている。2023年度は工作機械がテーマ、業界の最新動向と取り組み事例を紹介する講演会イベントとなった。特許庁スタートアップ支援班も参加し、スタートアップ、ベンチャー向けに知財セッションを実施した。

工作機械の業界動向と2024年の受注見通し

 最初の講演は、一般社団法人日本工作機械工業会調査企画部長 田中一彦氏が登壇し、工作機械業界動向と2024年の受注予測について解説した。

一般社団法人日本工作機械工業会調査企画部長 田中一彦氏

 2020年~2023年までの工作機械受注は、コロナの影響で一時落ち込んだものの、ペントアップ需要や半導体関連、EV関連需要により回復し、2022年に中盤にはピークを迎えた。以降は中国経済の不安感などから徐々に減速し、2023年の受注総額は1兆4865億円と3年ぶりに1兆5000億円割れとなっている。2024年は、金融引き締めや貿易の低迷などから世界の経済成長率は小幅に留まると予想される。日本では、後半から半導体関連需要、EC関連需要が再び発現するほか、欧米市場の金利引き下げに伴うユーザーの活発化、内需の政策効果から増勢を取り戻すことが期待され、2024年の工作機器受注見通しは1兆5000円と予測した。

 また日本の工作機械産業の位置付けとして、米国企業は航空宇宙分野、ドイツは自動車と電子機器、中国と韓国、台湾は一般部品と、特定分野に集中しているのに対して、日本は高精度加工から一般部品まで幅広く網羅しているのが強みとしている。懸念事項としては、米中摩擦の影響による世界市場の分断、中国企業のハイエンド機分野への参入などを挙げた。

製造業の課題に取り組むオークマの省エネと自動化技術

 続いて、オークマ株式会社 執行役員技術本部副本部長 栗山和俊氏の講演では、製造業の課題として、環境負荷低減と人手不足の2つを取り上げ、課題解決に向けた同社の取り組みを紹介した。

 まず、環境負荷低減に向けた取り組みとして、機械が自律的に高精度を安定維持する知能化技術「サーモンフレンドリーコンセプト」と、新世代省エネルギーシステム「ECO Suite Plus」を紹介。サーモンフレンドリーコンセプトは、工場内の環境温度や機械の稼働や加工によって発生する熱に応じて動作を制御し、加工精度に影響しないようにする技術。ECO Suite Plusは、工作機械の安定状態を判断して、非切削時など冷却が不要なときは冷却装置を自動停止することで、高精度を保ちつつ、消費電力を削減できる。また、二酸化炭素排出量の可視化、分析も可能だ。

 同社では、このサーモンフレンドリーコンセプトとECO Suite Plusを搭載した製品を「Green Smart Machine」として、5軸制御マシニングセンタ「MU-Vシリーズ」や、1サドルCNC旋盤「LB3000 EXⅢ」、立体マシニングセンタ「mB₋VⅡシリーズ」などをラインアップしている。

 次に、人手不足の解消に向けた取り組みとして、自動化ロボットシステム「AROMROID」、ロボット加工セル「SmartTwinCELL」、移動式協働ロボット「OMR20」を紹介。いずれもティーチングが容易で機械オペレーターが簡単に操作できるのが特徴。短期間で導入でき、中小規模の製造業でも自動化を実現可能だ。

オークマ株式会社 執行役員技術本部副本部長 栗山和俊氏

知財を活用して事業を拡大するための特許庁による知財戦略策定支援施策

 後半の知財セミナーには、特許庁スタートアップ支援班長 関口英樹氏が登壇し、知財の役割、特許庁による知財戦略策定支援施策、知財権を活用して事業を拡大するためには? の3つのテーマについて講演した。

特許庁スタートアップ支援班長 関口英樹氏

 まず、知財の役割として、事業の差別化や模倣を防止する「独占」、投資家や銀行からの融資につながる「信用」、オープンイノベーションのツールとして活用する「連携」の3つについて説明。事例として、株式会社One Tap BUYが特許により強固な参入障壁を形成し、資金調達に成功した事例と、過去の起業で知財を取らなかったことで後発企業にシェアを奪われた失敗例を紹介した。

 また、特許の落とし穴として、大学発スタートアップが、在学中に取得した特許が市場を考慮したものではなかったがゆえに、起業後に競合に迂回されてしまうケースや、事業内容が権利取得時からピボットした結果、権利範囲から外れてしまっているケースもあることにも触れた。セッションの最後には、知財権を活用して事業を拡大するための、オープンイノベーションや共同研究開発における契約交渉のポイントとして、「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書(OIモデル契約書)」活用を提案した。OIモデル契約書は、知財等から生み出される事業価値の総和を最大化することを目指す契約交渉のノウハウを解説している。IP BASEでは、OIモデル契約書のほか、知財デューデリジェンスの手引書など、スタートアップとの協業を考える事業会社向けの情報も公開していると説明した。

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