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AI、UIUX、ソフトウェア――スタートアップのビジネスアイデアを守るには?

「ビジネスモデルも特許になる スタートアップの知財戦略がわかる公開Q&A by IP BASE in 新潟」レポート

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

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 2023年12月11日、特許庁スタートアップ支援班は新潟県後援のもと、「ビジネスモデルも特許になる スタートアップの知財戦略がわかる公開Q&A by IP BASE in 新潟」を新潟市の「NINNO3」にて開催した。イベントではビジネスモデル特許をテーマに弁理士法人IPX 代表弁理士CEO 押谷 昌宗氏が講演。また、新潟県で起業したスタートアップ3社の知財に関する疑問や自社の知財戦略について知財専門家が答える公開知財相談Q&Aを実施した。

 イベント冒頭では特許庁スタートアップ支援班の青柳 直希氏が登壇し、特許庁のスタートアップ支援施策として、「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」、スタートアップ向け知財コミュニティ「IP BASE」、「ベンチャーキャピタルへの知財専門家派遣プログラム(VC-IPAS)」、スーパー早期審査、手数料の減免制度を紹介した。

特許庁 総務部企画調査課 スタートアップ支援班の青柳 直希氏

ビジネスモデル特許を活用したスタートアップの知財戦略

 押谷 昌宗氏による講演「ビジネスモデル特許を活用したスタートアップの知財活動」では、ITスタートアップの特許訴訟やビジネスモデル/UI特許の活用事例を挙げながら、スタートアップが具体的に取り組むべき知財活動の優先順位をステージごとに解説した。

1. スタートアップ同士のトラブル事例

 まず、スタートアップ同士の特許トラブルの事例を挙げながら、スタートアップの特許の必要性を説明。2004年には米Yahoo!と米Google、2012年は米YahooとFacebook、2016年はfreeeとマネーフォワードの特許訴訟が起こっている。最終的に勝訴したとしても裁判費用がかかるうえ、ステークホルダーからの印象も悪くなる。トラブルを防ぐために、早い段階から特許で武装しておくことが望ましい。

 特許権は技術的なアイデアを保護するための権利だ。特許の登録要件は、「新規性」と「進歩性」の2つ。この要件を満たせば、あらゆるものが保護対象になる。珍しいものでは、煮豚の押し寿司(現在は権利消滅)、ロバート秋山氏のTシャツ芸の小道具も特許に登録されていると紹介した。

弁理士法人IPX 代表弁理士CEO 押谷 昌宗氏

2. ビジネスモデル特許/UI特許とは何か?

 ビジネスモデル特許とは、多くの場合コンピューターとソフトウェア特許の一例で、システムを使ってビジネスモデルを実現するものを呼ぶ。押谷氏はビジネスモデル特許の要件として、「ビジネスモデルを実現するための仕組み」、「コンピューター、ソフトウェアにより実現する場合、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具現化されていること」と定義している。

 ビジネスモデル特許には、Amazonの1-Click特許、スマホ証券のOne Tap BUYのアプリを使った取引方法に関する特許、いきなり!ステーキの注文から提供までのオペレーションに関する特許などがあり、新規性さえあれば、特許権取得のハードルはそれほど高くはなさそうだ。

 次にUI特許については、押谷氏は、(1)データに基づいて画面が「動的に」変化する、(2)何らかの「機能」を実現する、(3)新規な表現である、と定義する。UI特許の例には、Apple社のSlide to Unlock(アンロック画像上でジェスチャを行うことによる機器のアンロッキング)を紹介した。

 ビジネスモデル特許を取得するメリットは、ビジネスモデルが新規であれば、それを実現するためのシステムを権利化することで、実質的にビジネスモデル自体を押さえられることにある。また、共同研究や開発時に優位になる、投資家や上場審査関係者へのアピールになる、といった効果が得られる。

 UI特許には、他社が模倣したらすぐに発見できる(顕現性が高い)、顧客に刺さるUXを保護できる、デザインに注力していることをアピールできる、というメリットがある。ただし、設計変更による回避が容易で権利範囲が狭いのがデメリットだ。

3. スタートアップの知財活動のポイント

  スタートアップの知財活動は、リスクを許容し、少ないリソースを効率的に配分するのがポイントだ。優先順位が高いのは、(1)商標と特許の権利化、(2)他社の権利を侵害しないようにするための知財クリアランス、(3)知財取得のアピールと社内の知財勉強会の3つ。

 フェーズごとの対応事項として、シード期は、商標とドメイン名の検討、職務発明規定の整備、弁理士探し。アーリー期は、コア特許の取得、主要ライバルに絞ったクリアランス調査、社内の知財教育と特許取得のアピール。ミドル期は、周辺特許や海外特許の出願、共同開発などでの契約、弁理士との情報共有。レイタ―期は、ガバナンス整備、競合を意識した出願、知財責任者の採用――を提案した。

 社内の活動体制として、担当者や管轄部門の設置など下地の構築、知財担当とCXO間で方針と目的の共有、予算の確保、社内勉強会や社内SNSを活用した知財リテラシーの底上げ、ガバナンスの構築の4つについて説明した。

 最後にスタートアップの知財活動の心構えとして、「不確定性を受容する。アジャイルに回してトライアンドエラーを繰り返すこと。そして、よい専門家を早く見つけること」とまとめた。

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