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KDDIの事例でわかるオープンイノベーションでスタートアップ、大企業双方が事業価値を最大化するためには

CEATEC 2023特許庁スタートアップ支援班主催セッション「大企業とスタートアップがうまく連携するために意識すべきポイントとは?」

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

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その4:困ったときは「OIモデル契約書」にヒントあり

 プロジェクトのスタート時は、お互いに前向きであるがゆえに役割分担があいまいで、終了時のことが考えられていないことが多い。後のトラブルを防ぐには、事前に両者の役割や責任範囲を定義し、プロジェクト終了時の取り決めをしておくことが肝心だ。

 井上氏は、契約時における役割分担の方法として、「役割分担は時点によって変わります。状況が進むと役割が変わってくるので、見直しをしていくことが大事。契約時点では一定期間後に見直すことを盛り込みます。ただ、大企業側は一括で資金提供し、1年おきに役割を見直す契約ではスタートアップに有利となるので、マイルストーンを敷き、一定の目標を達成したら役割を見直す、というやり方もあります」と紹介する。「モデル契約書(新素材編)」にもマイルストーンを敷く例が解説されているので参考にしていただきたい。

 出澤氏は「契約時に私たちが一番こだわるのは、瑕疵責任と第三者権利侵害です。当然、事前にお金をかけて調査はしますが、無限責任を負わされるのは恐ろしい。必ず保証額の上限を設定してもらうようにしています。政府のガイドラインで権利侵害に対する責任範囲について取り上げていただけるとありがたい」と提案した。

 川名氏は、「KDDIの場合、契約上はスタートアップが責任を負うことになっていても、実際は我々が調査しているケースが多くあります。スタートアップの商材やサービスもKDDIの顧客に対して売りますから、自分たちのサービスとして責任を持つように意識しています」と話す。

 出澤氏は、「欧州の自動車業界が策定したAutomotive SPICE規格にはスタートアップに対するガイドラインが盛り込まれています。PoC(概念実証)の費用や成果報酬額、権利の取り扱いが定められているので、交渉の負担がありません。日本も採り入れてほしい」と提案した。

 パネルディスカッションの最後にはパネリストが一言ずつ感想を述べた。

 清野氏「特許庁の立場では、特許の取得やモデル契約書の啓発が仕事ですが、皆さんとお話をして、まずは契約に至る前に両者で対等な関係を築くこと、そのためのマナーの重要性を強く実感しました」。

 出澤氏「スタートアップ側は看板がないので、一人の人間として体当たりするしかない。大手企業の方も看板を外して、一人の人間としてお互いにぶつかり合えたら信頼関係を築きやすいのでは、と思っています」。

 川名氏「スタートアップの方は社長を筆頭に、人生をかけてチャレンジしていることにリスペクトを持っています。そうしたスタートアップを後押しするのが大企業のミッションの一つであると思います。今後、大企業の力を上手く使ってスタートアップも日本経済もどんどん発展させていけるといい」。

 井上氏「企業は利益を追求する法人ですから、不合理に不利な条項を飲む必要はありません。他方で、スタートアップについて理解すると、以前に使っていた契約書からスタートアップとのオープンイノベーションで変えられる部分はあるはずです。相手を対等な相手と見たうえで、変えられるところは変える姿勢が大事です」。

 高田氏「スタートアップを全力で応援する。そのためには、KDDIさんなどの先進的な企業さんとも連携して、一緒に日本経済を盛り立てていこうと思います。本日はありがとうございました」。

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